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華星に捧ぐ  作者: 潜水艦7号
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疑惑

クラウドの防災対応班は、有事対応科という部門に属している。有事対応科は防災対応班の他に医療班とセキュリティ班の3つによって構成されていた。


これらの任務範囲は地上のみならず、火星軌道上に浮かぶサテライトもその範囲だ。そのため、有事に備えて数人のクルーが交代でサテライトに入る事になっている。


クラウドはこの日、その『順番』でサテライトに来ていたのだ。

有事以外において、サテライトでの業務は主に機器の点検になる。そのため、施設班との共同作業も少なくない。今回、そのパートナーはサンダーだった。


「やれやれ・・・こっちは終わったぞ?そっちはどうだ、クラウド?」

サンダーが顔を上げる。


「うん、終わったよ。バッテリーも交換したし・・・今日はとりあえずキリにしようか」

クラウドは立ち上がって、作業用のナイフや工具を服のポケットに仕舞った。


ふと、窓の外に眼をやると、火星が大きく見えていた。


「・・・キレイだよね、こうして見るとさ。少し緑が濃いけども、地球って言われても不思議が無いくらいだ」


サンダーも横にやってくる。

「そうだなぁ。これが昔は一面の荒野だったなんて、言われても信じられんよ。凄いもんだな、人類の力ってヤツは」


感慨深けなサンダーの傍らで、クラウドが時計に目をやった。

「あっ・・・!もうこんな時間だよ。どうも、『上』に居ると時間の感覚が薄くなるからな・・・」


クラウドがサンダーを促して居住区に戻ろうとした時だった。


「・・・ん?」

クラウドの眼が、窓の外に見える広大な宇宙空間に向いて止まった。


「あ?どうした、クラウド」

サンダーもそっちの方を向く。


「いや・・・ほら、何か『あの辺り』、何か光ってない?昨日も此処で仕事をしてたけど・・・あんな光は見なかった気がするんだ」


「そうか?・・・・」

暫く考えたあと、サンダーがポンと手を打った。


「アレじゃねぇか?輸送艦。そろそろ、次の便が来る頃だろう?それが見えてんじゃね?」


「ああ・・・そうか、なるほどね」

言われてみれば、確かに方角はその通りだ。


するとそこに、クラウドのヘッドセットにアカツキから連絡が入った。


"ハロー、クラウド。ドーベルからパーソナル通信が入ってます。業務中なら、そのように回答しておきますが?"


「え?!ドーベルさんから?大丈夫、仕事は終わったので、繋いでください」


"了解しました。少し待ってください"


すぐに、ドーベルからの通信が繋がった。

「おう・・・!ドーベルだ・・・元気に・・・してるか?」


電波状態が良くないのか、通信は珍しく、やや途切れ途切れだ。


「はいっ!今はサテライトに居ます。今回の便はドーベルさんですか?此処からも微かに光が見えてますよ。サテライトに来たら会えますね?楽しみにしてます!」


「そうか・・・なら、後でな・・・」

通信はそれだけで切れた。


「うん・・・?何だろう?」


「どうした?」

首を傾げるクラウドに、サンダーが尋ねる。


「何かあったのか?」


「いや・・・『何も無かった』んだ」


「へ?何も無いんなら、いいじゃん?何か気になるのか?」

サンダーには良く分かって居なかったようだ。


「サンダーはドーベルさんを良く知らないだろうけど、大した用事もなく連絡をするような人じゃないんだ。変だな・・・」


尚も訝しがるクラウドの背中を、サンダーがポンと叩く。

「お前、気にしすぎなんじゃねーの?そりゃま、色々とあったから神経質になんのも分からんじゃねーけど?」


「うん・・・なら、良いんだけど」

やはり、クラウドは何かが気になるようだ。何か・・・かつて、聞いた話に繋がるような・・・?


「ダメだ、思い出せないや」


ふっーと息をつくクラウドの腹を、サンダーが肘で突つく。


「んな事よりさ!ホラ、折角サテライトに来てんだからよ・・・」

ニヤニヤと笑うサンダーの『お目当て』は明白だった。


「またぁ・・・レインボゥは忙しくて通信室に掛かりっきりって知ってるだろう?邪魔したらダメだよ」

呆れたようにクラウドが諭すと、サンダーがチッチッと指を振って見せた。


「と、思うだろ?それがな、オレ様は『発見』したんだ。『彼女』が仕事してるかどうか、確かめる方法があるんだよ!いいかい?こうするんだ」


そう言って、サンダーはヘッドセットでアカツキを呼び出した。

「おい、アカツキ。レインボゥちゃんが何処に居るか、知ってるかな?チョット用事があるんだけどさ」


すると、アカツキがニベもなく返答する。


"レインボゥは今、職務外です。職務外の事は個人情報に類するので、お答えすることができません"


「・・・ホラ!今、アカツキが『職務外』って言ったぞ!つまり仕事は終わってるんだよっ、チャーンス!」


意外に、とクラウドは妙なところで感心する。

そういうヘンな所で彼は頭が回るものだな、と。なるほど、アカツキの回答は間違っていない。だが、それゆえに相手に対して情報を与えてしまうこともあるのだ。

そういう意味ではアカツキも『頭が回らない』というか『天然』と言えなくも無いだろう。或いは機械としての限界というか。


「さーて、自室かなー?コミュニティ区かなー?待っててねー!」

サンダーはウキウキしながら、作業エリアを後にする。


居住区までは、観測や通信などの設備が並ぶ狭いエリアを通ることになる。

そこを急ぎ足で通り抜けようとした時、クラウドの眼が不意に止まった。何かが動いたように見えたのだ。


ん・・・?こんな時間に誰かいるのか?

クラウドが足を止めて、サンダーの服を引っ張る。


「ちょっと待って、そこに誰か居たみたい」


「あ?誰か残業でもしてんじゃねーの?そんなことより・・・」

そこまで言いかけたところで、サンダーの眼が前方に釘付けになった。


機械の間から出てきたのはレインボゥだったのだ。


「あっ!こんなところに!」

嬉しそうにサンダーが大声を出す。


「どうしたの?こんな時間に、こんなところで?」


クラウドの問いかけに、レインボゥが恥ずかしそうに笑う。

「うん・・・仕事がまだ残ってて。ゴメンね、今はまだバタバタしているの。あ、そうそう!少し遅くなるけど、終わったら皆んなでお茶でもしない?色々とお話もしたいし」


「勿論だよーっ!レインボゥちゃん!」


手放しで喜ぶサンダーを、クラウドが手で制する。


「いや・・・『話』は此処で聞くよ。今、此処でね・・・」






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