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華星に捧ぐ  作者: 潜水艦7号
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殉職

「姉さんっ!早くっ」


クラウドが無線に向かって叫ぶ。

その背後には、すでに数頭の小型恐竜らしき陰が見える。


「分かってるってぇ!」


シーガルを載せたキャリアも、猛スピードで霊廟目掛けて飛び込んでくる。続いて、他の方面に展開していた施設班や防災対応班達を乗せた車両も姿を見せ始めた。


「クラウドっ!仲間達を援護するよっ!」

霊廟に到着したシーガルのVF-Xがキャリアから飛び降りる。


「遠距離と大型の敵は任せたっ!アタシはアンタが撃ち漏らした恐竜を直接ブっ叩くっ!」


「分かったよ、姉さん!」

クラウドは照準器を睨み、トリガーに指を掛ける。


「慎重に行けよ、クラウド。焦ってムダ弾を浪費すんじゃねーぞ?!」

ベルが発破を掛ける。


「はいっ!」


ドゥ・・・ドゥ・・・!

なるべく恐竜が密集している付近を狙ってキャノン砲を発射する。


ギャオッ・・・!


直撃を受けた恐竜たちがその場に転げ回る。だが、その姿を見てもなお、他の恐竜たちは進撃を止めようとはしなかった。


「くっ・・・キリが無い・・・」


機重に積まれたキャノン砲の弾はそれほど大量ではない。数の勝負になれば、圧倒的不利は目に見えている。弾を節約して使うにも限界があるのだ。


ふと、クラウドの脳裏に残酷なシミュレーションが浮かんだ。

そう、『何処で見切りをつけるのか』だ。


さっきの無線を聞く限り、全員の救助はもはや望むべくもない。

すでに何人かは恐竜の餌食になっていると見ていい。となれば、このまま撃ち続けて最後の一人まで仲間を待ち続ける事は出来ない。何処かで見切りをつけて霊廟に閉じこもる必要がある。


『それ』を何処で見切るのか・・・

クラウドの焦りを感じ取ったのか、ベルが前座席から声を掛ける。


「クラウド、余計な事を考えんでいい。お前は撃つ事に専念しろ。後の事は・・・操縦者である、オレが決める!」


「・・・お願いします」

クラウドはそう返すのが精一杯だった。


それは、どう考えて行動したとしても後から非難を浴びる選択でしかなかった。

誰かが間に合わなければ『どうして待てなかった』と言われるし、何時までも頑張って恐竜に突入されれば『どうして閉めなかった』と言われる。どちらにしても人命を犠牲にする選択なのだ。


ほうほうの体で、次々と仲間達が霊廟にやって来る。追ってくる恐竜は、クラウドや先着した防災対応班の機重が何とか防いでいた。


「まだかよ・・・チクショウ・・・まだ来ないのかよ・・・」

シーガルは苛ついていた。


そう、シバが戻っていないのだ。


「あっ!」

その時、クラウドが大声で叫んだ。

遙か先に、シバの乗る130tの機影が見えたのだ。


「くそぉ!遅いぞぉ!シバぁっ!」

シーガルが怒鳴る。


やっと来たか、という安堵感も無くは無いが・・・何しろ状況が悪すぎた。




施設班長・ゴリラの乗るキャリアはシバの130tと共に霊廟を目指していた。

130tは速力こそ、さほど早くは無いのだが持ち前のパワーで足元に群がる恐竜たちを蹴散らす事が出来る。そのため、単独行動するよりも130tの『下』に潜り込む形で進んだ方が都合が良かったのだ。


だが、それも相手の数が少なければという前提での話だ。

少しづつ、少しづつ、時間の経過と共に数を増やし、群がりながら襲いかかってくる恐竜の圧倒的数の前にキャリアも130tも、ついにはその進行を食い止められてしまった。


「ええいっ!これじゃぁ前に進めんわ!」

ゴリラ班長がいくらアクセルを踏んでも、タイヤは空転するばかりで前には進まなかった。

もはや、前方の強化ガラスの前には猛り狂った眼をギラギラと光らせる恐竜の顔しか見えない。


ビシッ・・!


強化ガラスにヒビが入る音がする。


「ぐっ・・・」

思わず息を呑むゴリラ班長に、シバから無線が入る。


「そっちは大丈夫かっ!ここは何とか耐えろっ!凌ぎ切れっ!霊廟は・・・もう、目の前に見えているぞっ!」

130tのコクピットに、ゴリラの無線が入る。


「・・・・そうか、そこからは霊廟が見えるのか。もう・・・ワシのところからは何も見えん・・・。窓ガラスが一面、ヒビだらけでな・・・」


無線からはガン!ガン!とキャリアの外装を激しく叩く音が聞こえてくる。


「しっかりしろっ!ゴリアぁ!」

シバが大声でゴリラ班長を励ますが、その応答に力は入っていなかった。


「なぁ・・・シバ・・・・ワシの弟子達は・・・どうだ?皆んな、霊廟に入れたかなぁ・・・そこからなら見えるかい?なぁ、シバ・・・」


「あぁ?!テメーんとこの部下かよ?ああ!入ったよ、間違いなく皆んな霊廟に収容出来た!オレの部下が援護しているっ!」


「そうか・・・なら、良かった。有難うよ、安心したぜ・・・」

ゴリラ班長の手はすでにステアリングを離れ、彼の膝の上で力なく組まれていた。


「柄にもなく諦めてんじゃねぇぞ!この土建屋がぁ!」

シバの怒号がキャリアの操縦席に響く。


バリ・・・バリバリ・・・!


ついに、キャリアの窓ガラスが砕かれ始めた。鋭い爪が、顔を覗かせる。


「ふん・・・!別に『諦めた』とか・・・そんなじゃねーよ。例え、この状況で無理矢理に突破を図ったとしてもよ・・・この数の恐竜を従えて『行く』ってぇのかよ・・・?んな事ぁしたら、ワシの大事な弟子達が生命の危険に晒されるだろうが!それだけは・・・出来んっ!それだけは・・・!」


ボボンッ!

シバの無線に突如として大きな音が入る。何かの爆発音だ。


下を見ると、モウモウと白煙が上がる中、キャリアが炎に包まれていた。燃料のメタンに引火したのだろう。

或いは、ゴリラ班長が意図的にそうしたのか。


「くそが・・・!」

シバは、唇を噛み締めた。








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