表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華星に捧ぐ  作者: 潜水艦7号
38/70

由来

「ま、とりあえずは『ゆっくり』してってくれ」


ドーベルがコクピットに案内する。そう。あの、悲劇があったコクピットだ。此処に来ると思い出さないワケに行かない。


「キャプテンは・・・残念でした」


「そうだな・・・。だが、俺達に後ろを懐かしんでる余裕は無いからね。前を向かないとさ。そうそう、火星ではまたしても大活躍だったって?聞いたよ、ついにあのグリーンを倒したらしいじゃないか。火星プロジェクトもこれで大きく前進するよ」


ドーベルがクラウドの背中をポンと叩く。


「いやまぁ・・・実際に倒したのは僕じゃないんで。姉さんが追い込んで、シバさんが止めを刺しました」


「シバかぁ。相変わらず大したヤツだよ。何しろジャンケン以外に弱点の無いヤツだからな」

そう言って、ドーベルが笑う。


「え、あの・・・・」

クラウドが意外そうな顔をする。


「ドーベルさんはシバさんが『ジャンケンに弱い』って言うのを知ってるんですか?」

それは、シバが人に知られるのを最も嫌う情報のはずだ。


「ああ。というか、俺らの同期なら誰でも知ってる有名な話だからな」

ククク、と笑いながら肩を上下させるドーベルは、何だかとても楽しそうだ。


「何か・・・あったんですか?」

恐る々、クラウドが尋ねる。


「『バース・ネーム』だよ。フェニックスに入ると最初にバースネームを決めるじゃないか。クラウド君も知ってると思うが、人気のある『カッコイイ名前』は取り合いになるだろ?」


そう言えば、クラウドの時も『サンダー』や『レインボゥ』は取り合いだった。


「俺達の時は『イヌ科の動物』だったんだが・・・俺の『ドーベル』とか『ウルフ』なんて言うのは取り合いでさ。それで例によってジャンケンに弱いシバと、それから死んじまったジャッカルとが最後に残される形になってね」


ジャッカルは、グリーンに襲われて死んだクルーだ。


「そん時に残っていた『カッコイイ名前』ってのが『ジャッカル』くらいだったから、二人で取り合いになってさ。それで口論になったんだ。

そしたらシバが思わず『テメーにジャッカルなんてカッコイイ名前は勿体ねぇ!柴犬で充分だ!』ってタンカ切っちまったもんだから・・・」


あちゃー・・・とクラウドが頭を抱える。

「で・・・挙句にジャンケンに負けたんですね?自爆じゃないですか・・・・て、アレ?・・じゃぁシバさんの『シバ』って言うのは、柴犬の・・・?」


「ああそうだ。何だ、今頃気がついたのか?まぁ、ヤツは柴犬ってガラじゃないからイメージに合わないがね。シバは負け惜しみで『貸しにしといてやる!』とかイキってたけどな」


「・・・シバさんは負けず嫌いですからねぇ・・・・」


よくよく思い返してみたら、クラウドがバースネームを決めたという話をシバにした時に『サムい名前がどーの』とか言っていたが、それは自分の名前に対するコンプレックスがあったせいなのかも知れなかった。


「仕方ねーよ。ジャンケンで負けたからな。しっかし、どうしてああも弱いんだ?ジャンケンごときに」

ドーベルが頭を撚る。


「それはまぁ・・・職業病?みたいなものですから。どうしても五縄流の『体捌き』が出てしまうんだと思います」


「え?何かあるの?」

身体を乗り出してきたドーベルの顔は興味津々と言わんばかりだ。


「え・・・ええ。中国拳法だと『一本拳』みたいな指の出し方があるみたいなんですが、そういうのは五縄流には無いんです。基本『グー』か『パー』ですから」


「ははぁ・・・『チョキ』が出せないのか!」

ポンと、ドーベルが手を叩く。


「でしょうね。シバさんは『極めて』るので、逆に切り替えが出来ないんだと思います。それと・・・相手が高速で手を出して来た時、五縄流では拳の速度が早い『突き』と『掌底』は『グー』で躱し、指が動く『つかみ』の動作に対しては『手を広げて』相手の手首を掴むのが定石なんです」


ハハハ!とドーベルが笑い転げる。

「つまりアレか?グーとパーには『グー』で応戦し、チョキには『パー』で応戦するワケか!そりゃ絶対に勝てんわっ!」


「まぁ・・・そんなトコロだと思います」


「ところで、クラウド君の時はどうなの?『クラウド(雲)』というバースネームは自分から?」

ドーベルが尋ねる。


「はい・・・僕の時は『気象現象』でしたから。僕もタイフーンとかサンダーみたいな名前が良かったんですけど、そういうのは競争相手が多くて避けたんです」


「へー?・・・・え?待てよ」

ドーベルは何かに思い当たったようだ。


「もしかしてアレか?シバがジャンケンに弱い原因が『それ』だとするなら、クラウド君も・・・」


「えっ!いや・・・その・・ははは・・・僕はシバさんほど極めては無いので・・・」


笑って誤魔化そうとするクラウドにドーベルが提案を持ち掛ける。

「よし決めた!今晩の当直を掛けてジャンケン勝負だ!」


「勘弁してくださいよーぉ」

笑い声が響くコクピットの外では、次々と貨物の搬入が続いていた。



第四話でシバが「俺ぁ、コイツに『貸し』があった」と言うセリフがあります。

それが今回出てきたバースネームに関する逸話です。

予定では地上でシーガルに説明させるつもりだったんですが、タイミングが無くて。何しろヘタすると死者(ジャッカル)を冒涜しかねないので、シバの近くでは迂闊にネタに出来なかったのです。

・・・やっと今回、回収出来ました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ