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華星に捧ぐ  作者: 潜水艦7号
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開戦

「来るぞっ!総員、戦闘用意っ!」

シバの指令が防災対応班、各クルーの無線に入る。


「・・・来たか・・」

戦闘用機重に乗るクルー達の背中に汗が滲む。


「いいか、相手は必ずスピード勝負を挑んでくる!1対1で敵うと思うな!」


シバの指示が続く。自分自身が先頭を切るのではない分、指示は細かくならざるを得ない。


「グリーンはシーガルに任せろ!他の班員は1頭を3機で囲め。イチバン小さい2m級だけはベルとハンガーの2機で対応だっ!いいか、無理して倒そうと焦るんじゃぁない。

下手に機関砲を撃ちまくると同士討ちになるぞ!とにかく『削る』ことに注力しろ!ボディブローみたいに、着実に相手の体力を奪うんだ。相手が弱ってきてからが、本当の勝負だと思え!」


こうした対恐竜戦のノウハウは、歴代の防災対応班によって構築され、代々受け継がれてきたものだ。

シバ達は先達たちから、こうした『コツ』を伝えられてきたのだ。今回はその、いわば『総決算』と言っても過言ではない。


グリーン達が、基地の構内に飛び込んで来る。

同時に、グリーンは『咥えていた』チャイムを放り出す。もう、人質に用事はなかった。


ギャャァァァァァ!

決戦の狼煙を上げるグリーンの咆哮が、基地の大空に轟く。


「戦闘、開始っぃぃぃ!」

シバの指令とともに、各機重が一斉にグリーン達を取り囲む陣形をとる。


「クラウド君、今だ!撃って!」

ガゼルの指示でクラウドが機重の二連砲を発射する。


ズドゥ!ズドゥ!


間髪を入れず、2発の短い発射音が響く。だが、その方向はグリーンの方を向いているワケではなかった。

万が一『外した』時に基地に被害が出るからだ。飽くまで『こちらから攻撃するぞ』という意思表示が出来れば良いのだ。それで、グリーンの意識をVF-Xに誘導出来る。


果たして、クラウド達の懸念はそのまま的中した。グリーンは二連砲の発射の寸前に、こちらへ向き直ったのだ。もしも照準をグリーンに合わせていたら、確実に避けられていただろう。


「・・・っ!何という反射神経なんだ・・・!」

クラウドは背中に寒気を覚えた。


この一発で、グリーンは完全にこちらをターゲットとして認識したようだ。その両眼はしっかりと、クラウド達のトラックを見据えている。その鋭い眼光には威圧、尊厳、自信が満ち溢れている。

それはこの200年間、火星(ここ)で『絶対君主』として君臨し続けてきた帝王の威厳なのだ。グリーンは何も恐れてはいない。そして、何も侮ってはいなかった。彼に有るのは、目の前の相手に全力をブツけて勝つ事のみなのだ。


「おらぁぁぁっ!テメーの相手は・・・・この、アタシだぁぁぁぁっ!」

怒号一閃、シーガルが荷台から飛び出す。


クラウドはこの時初めて、(シーガル)とVF-Xの本気を見た。その速力は、自分が乗っているトラックを遥かに凌駕していた。


「・・・! 何という速さなんだ・・・」

クラウドは思わず舌を巻いた。なるほど。あれほどの戦闘力が無ければ、グリーンの相手など務まりっこ無いのだ。


同時に、すかさずシバから無線が入る。

「クラウド!聞こえるか?!お前とカゼルはチャイムの救出に入れ!」


「・・・はいっ!」


どちらにしろ、今のクラウドではこの戦闘に割って入るだけの力は無い。正直なところ、悔しい気持ちはあるものの妥当な選択であると言えた。


シーガルがグリーンと対峙している姿を横目に、クラウドは瀕死の重傷を負っているチャイムを地面からすくい上げ、そのままトラックで基地建物に向かった。


「よーし、急げっ!こっちだ!」

救護班の男達がグルグルと手を回して呼んでいる。


二人とチャイムを乗せたトラックが、そのままシャッターの中へと飛び込んだ。


「OKだ!すぐにシャッターを閉めろ!」

防災対応班の控えクルーが銃器を構えて警戒する中、シャッターが閉じられていく。


「ストレッチャーだ!早く!緊急用鎮静剤の投与を!止血を急げっ」


ザッカーにクラウドが使った『アレ』だ。この薬は一時的に人間を仮死状態にする効果がある。それによって血液が必要以上に流出しないようにするのだ。


周囲が慌ただしく応急処置をする中、そこにひとりの老人が現れた。


「・・・どれどれ、怪我人は何処じゃ?」


「先生っ、すぐに手術室へ!緊急オペですっ」

救護班のスタッフが老人を急かす。


「分かっとるって。つーか、此処で構わん。血液パックを『そいつ』に繋げ。この場で手術に入るでな・・・」


「・・・え?」


スタッフが唖然とする中、老人は手際よく、手術に取り掛かり始めた。


「タオルくれ。血液が漏れ過ぎて切傷箇所が見えんわ。ああ、それと照明が弱いで、投光器をな・・・お前ら何しとる、早よせんと患者が死ぬぞ?」


「・・あっ!ハイ」

その声に我に返ったスタッフ達がタオルを老人に渡す。


なるほど・・・この人が『クーロン先生』か。

クラウドは地球で医療スタッフに聞いた話を思い出した。


とっくに定年を過ぎているが、請われて残っていると。

なるほど豪胆というか。確かに『1分1秒を争う状況』であれば、手術室に向かっている時間の方が遥かに惜しい。雑菌による感染よりも『間に合わない』というリスクの方が大きいのだ。


クラウドはふと、『野戦病院』という言葉を思い出した。


やっと、クーロン先生を登場させる事が出来ました。

この人には後に重要な役回りを用意しているので、なるべく早く出したかったのですが・・・

この後も、チョイチョイと出て来る予定です。

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