Ride:少女が見た風景 2
「ハ・・ハハ、、 その何だ。 望みのモノは見れたか?」
軽率な声が、私の頭に木霊する。
それは、呆然と立ち尽くす私に、運転手が掛けた言葉だった。
苦笑いを浮かべた表情が、酷く憎らしい。
「外のライトアップに騙されたな。
屋敷の中は真っ暗。 これだけ探し回って誰もいないんじゃ・・・
君には悪いけど、、 ここは空き家だ」
ふ・・ フフフ。
言われなくても分ってるよ、、、 そんな事。
クッ! 堪えていたものが、目から溢れ出る。
最悪だ。
今日だけで、この男に何回泣かされた? 本当に、最低な男。
大粒の涙が零れ落ち、力が入らず足元から崩れ落ちた。
最悪だよ。 私の人生。
恨みも、待ちわびた再開も、、 全部、全部無くなっちゃった。
そう、ここには誰もいない。 何もない。
私のパパも。 憎き誰かさんも。
私が死んで、誰かを憎んで、誰かからパパを助けたかった筈なのに・・・ 全部無くなっちゃった。
私の知るパパへの手がかりが、ぷっつりと途切れていた。
「うっ」 悲しさのあまり、声が漏れる。
漏れた音だけ惨めな気持ちが膨れ上がった。
それでも、大泣きせずに済んでいるのは、
まだ心の中で燻っている何かを感じているからだ。
それに、ここで大泣きしてしまったら、
この世界で一人ぼっちである事を認めてしまうような気がするから・・・
「あーの、、 まだ、お時間掛かりそうですか?」
わざと、、 だろうか?
まるで私の憎しみを煽っているかのように思える、男の行動。
勿論、私の我慢は限界だった。
「いい加減にして! 貴方には関係ないでしょ!!」
思わず声を張り上げる。
これ以上、部外者であるあの男に、私の心を踏み荒らされるのはごめんだった。
「お願い。 そっとしておいて・・・」
心の整理がつかない状態で、今言える最大の抵抗。
それなのに、、、
彼は、、 難なく踏みにじった。
「無理!
俺は、、 キレちまったよ。
言っとくけどな、これは俺の問題だ!!」
・・・部外者が 何を 言っているの ???
「君は俺だ。 君を食べてから全て俺の物だ。
俺はお前の全てを抱えて運んでる。
だから、ここからは俺の仕事だ!」
彼が何を言ってるのか分からない。
でも、有無を言わせない男の怒りには、確かに私の感情が含まれている様な気がする。
だから、願った。、
「おねがい、、 助けて!」
フッ! 男は小さく笑い、叫んだ。
「ああ、任せとけ!!」
その声は、昔何処かで聞いた、暖かい声に似ていた。
信じる事の出来る声だった。
男が鼻を動かす。
屋敷に満ちた匂いを嗅いで、何かを感じ取っている様だ。
「ここには、匂いが満ちている。
それも、えらく年季が入った匂いだ。
これならいける。
逃がさねーよ、お父さん。
Ride:Werewolf!」
男の声が私の体を駆け抜ける。
変貌は一瞬。
私の意識を取り残し、そこに立っていたのは、毛むくじゃらの大男だった。




