表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タクの運ちゃんの不思議な冒険  作者: ジロジロ
5/6

Ride:少女が見た風景 1

「君は、送り狼という言葉を知っているかい?」


「狼が送る??」


「そう、狼が女の子を親切に送って、途中で食べちゃうんだ。 

 パパは教えてくれなかったのかい? 男の人がみんな狼だって」


「パパも・・・ 狼なの?」


「うん、、 どうだろ。 でも、狼もお腹を空かせたら、、子供を食べちゃうかもね・・・」


「パパが、、私を?」


そんな事を考えたら、目から涙があふれていた。

とても悲しく、辛い気持ちが膨れ上がっていく。

体が震え、何を頼りに存在しているのか分からなくなってくる。


「ああ、すまない・・・

 そんな顔をしないでくれ、これは可能性の話だ。

 パパは悪くない。


 悪いのは、俺だ」


私に親切に話しかけて来る男は、その瞳に獰猛な光を宿し、こちらを見据えている。

そして、




「君はとても、美味しかった。



 そう、俺が狼だ」




その言葉がトリガーとなって、全身に痛みの記憶が蘇る。

言葉も出せず、体を抱えて蹲った。



「どうだい? 意識がハッキリとしてきたかい?」



ハッキリどころか。。。 朦朧としている。

あまりの痛みに視界がぼやけ始めていた。


もう、何が、、、 なんだか、、、







ハァ!

気付けば目の前に姿見が備え付けてあった。



そこに映るのは私の姿。

血色のいい顔をした私の姿。


思わず手を胸に当ててみる。



―――!? 

トクッ トクッ トクッ。

あり得ない鼓動の音が聞こえてきた。


おかしいな・・・

私は死んでいて、幽霊で・・・


それに口に咥えている歯ブラシはなんだろう? 状況が呑み込めない。



辺りを見渡すと、そこは公衆トイレの洗面所。

その近くに備えてけてあった姿見の前だった。


この場所には見覚えがある。

ここは近所にある公園・・・ そして、その男子トイレ・・・

何故、私が、、 こんな所に、、、




「どうだい? 俺の乗り心地は?」


内から響いてくる声に気付く。

それはあの男の声。



「なかなかの乗り心地だろ? 再現には自信があるんだ」



脳裏に直接投影される男のドヤ顔。

しかし、反応が無い私にかける言葉を失ったのか、困った顔を浮かべた。

口下手なのか圧倒的に情報量が少ない。


そんな風に感じていると、男は思い出したかの様に口を開いた。



「歯ブラシは俺のを貸してあげたから、後で返してね。

 お食事の後だから、ケアはしっかりしないと」



あの男がそんな事を宣う。 私を食べた男が・・・

怒りと言う感情を通り越して、本当に何が何だか分からない。

頭が真っ白になっていくような感覚を覚える。


ん? あれ? でも、今なんて・・・ 

確か、男の、、 歯ブラシ???





―――パン!

「俺の歯ブラシーーーーーーー!!」 男の絶叫が頭の中に響き渡る。

気付いた時には歯ブラシを床に叩きつけていた。 そして、、、



「何て事してくれたのよ!!!! わ、、私の。。。 お口が・・・」



ヒステリックな絶叫。

身体がプルプルと痙攣を始め、震えだした腕が止まらない。

もう、この場に居たくなかった。


凝縮された感情が押し寄せてくる。

その先に待っているものは、、、 勿論、涙だった。


「私のお口・・・ 汚されちゃった。

 運転手さんのバカーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」


私は走り出していた。

公園を一目散に駆け抜けて帰路に着く。


久しぶりの帰り道。

久しぶりの帰宅なのに、、、 私の頭の中は、あの男の事で一杯になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ