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タクの運ちゃんの不思議な冒険  作者: ジロジロ
2/6

少女が見た風景 2

車を走らせ十数分、車内にはやり辛い空気が漂っていた。


「そこ! そこ右!!」

「ちょっと! なによあの車!! 横入りじゃない!!」

「おーそーいー! 速く走って! あの車、追い抜いて!!」

「あ、そこ左」


・・・さっきからこの調子である。


少女から感じていた恐怖は消え失せ、何とも言えない感情が俺を支配している

そこには、生意気な少女に振り回され、困り果てた運転手の姿があった。


何してんだろ・・・ 俺。


少女が目的地について語ったのは「お家」という情報だけである。

場所については、教える気が無いのか、語ろうとはしなかった。

俺もコミュニケーションを怠った訳ではなく、何度かミラー越しに尋ねたのだが、聞き出せないでいる。

家に帰るという主目的は変わらない様だが、車窓から覗く郊外の風景や街の喧騒に中てられて、心変わりしている様にも感じ取れた。



突然、指示がパタリと止む。

不思議に思った俺は速度を落とし、路肩で車を停車させた。


意を決し、後部座席を覗き込む。

と、そこには少女が一点を凝視して固まっている姿があった。

その瞳には何か諦めてしまっていたモノに向ける、憧れの様な眼差しを感じ取れる。


視線の先には、一組の男女の姿があった。

いや、語弊があるか・・・ そこには男と少女が手をつなぐ、親子の姿があった。


・・・何だろうか、このモヤモヤする感情は、あまり気分のいいものでは無い。

仲睦まじく、談笑を楽しみながら歩くその姿は、底辺職の男として嫉妬を禁じ得なかった。

男が娘に向ける無償の愛を、離れた車内からでも感じ取る事が出来る・・・


ああ、これは私怨である。

俺は少女の事も忘れ、遠ざかる親子の姿を暫しの間、睨みつけていた。



「クス」 その微笑で、思わず我に返る。


少女が、笑っていた。

彼女が見せた恨みの炎にも驚いたものだが、今見ている笑顔は違う意味で俺を釘付けにしている。


可愛い・・・ 可愛かったのである。

思わず胸が高鳴っていた。


言っとくけど、俺はロリコンじゃねーからな。




「行先、、、 変えるか!!」

唐突に、俺はそんな声を張り上げていた。

少女の可愛さに中てられて?

・・・よくわからんが、そういう事なのかもしれない。


少女が困惑した顔を、こちらに向けている。

しかし、顔色が変わるのに時間は掛からなかった。

怒りを滲ませ、反論を向けようと、、、 と、そこで言葉を遮った。


「遊園地! 行ってみないか?」


その言葉に、怒りが消え、何を言ってるのか理解できていないという顔をする少女。

それは少女にとって不意を突いた提案だったのかもしれない。


「なんだ? 遊園地は嫌いか? なら、、そうだな、別の・・・」

「遊園地!! 絶対、遊園地!!」


今度は俺が不意を突かれる。

真剣みを帯びた表情が俺に向けられていた。

そこに異論をはさませない、強い意思を感じる。



勿論、俺に異論はなかった。


何というか・・・ すごくちょろい少女である。



ホント、何やってんだろ・・・ 俺。


これじゃまるで、少女を振り回す誘拐犯である・・・

生意気な少女に振り回され、困り果てた運転手の姿は、もうそこに無かった。

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