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タクの運ちゃんの不思議な冒険  作者: ジロジロ
1/6

少女が見た風景 1

タクの運ちゃんを初めて数年が過ぎたある日の午後。

俺事、安積運やすづみはこぶは長距離の仕事を終えて、車内で休息をとっていた。

食事とトイレを済ませ、仮眠をとる一連の作業。

ベストなコンディションで次の仕事に臨む事を名目に行う、いつもの作業である。


慣れとは怖い物だ。

人が持つべき欲求、それが作業に変わったのは何時の事だったろうか・・・

いや、愚痴を言いたかったわけではない。


寧ろ、俺は今を楽しんでいる。

客を乗せて運ぶ。それだけの仕事が天職に思える。


天職に思えるだけの力を俺は有していたたし、

天職と思えるだけの不思議を、この仕事は抱えていた。


そう、不思議がそこにはあった。

俺が求めていたモノが・・・そこにはあった。



―――コンコン!

不意に訪れる、車外からの合図。

薄れた意識を覚醒させ、新たなお客様を窺いみる。


そこには可愛らしいお客様が一人、車窓からこちらを覗き込んでいた。

白いワンピースの少女。

この場に一人でいる事が不思議に思える程、幼いなりをしていた。



突然、ひりつくような乾きが俺の喉を襲う。


少女がこちらに笑みを向け、乗車を希望している。


気付かぬうちに頬を汗が伝っていた。 握るハンドルが汗で湿る。



コンコン!

こちらの様子がおかしいと踏んだのか、少女が今一度合図を送ってきた。


それに、俺は・・・


ガタ!

後部座席の扉が開く。 勿論、俺の意志で。


車体が微かに揺れ、少女が乗車した事を感じ取る。

そして、いつものコミュニケーションを実行した。


「うちは他より高いですよ!」


後部座席に向かい声だけを送る。返事は・・・無し。


「行先は―――」

「お家! お家に帰るの!!」


可愛らしい声が車内に響いた。

ただし、その声音からは強い意志を感じ取れる。

目的ははっきりしている様だ。


しばらく間を置き、後部座席の扉を閉める。

そして、バックミラーを覗き、俺は戸惑った。


可愛らしい声とは不釣り合いな瞳がこちらを睨みつけている。

その瞳には、燃え上がる様な怨嗟の炎が渦巻いていた。




ああ、わかっている。

あれが人ではない事を・・・俺は理解している。

でも、それでも・・・


俺はミラー越しに少女へと微笑む、そして車を走らせた。



乗せて運ぶだけの簡単なお仕事。

乗せて運び、客が望む風景を見せる、そんなお仕事。

それが俺の天職だから。


例え、客が人間でなくても。

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