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「…………ここは?何処だ?」
そこには何もない真っ白な空間が広がっていた。
何があった?
答えは分からない………
えっ~と…………思い出した!!僕は高校、生徒会室に4人で居たはずだ。そうだ…………
「桜姉ちゃん、桃、流、居ないのか?」
もう1度辺りを見渡すが誰も居ない。ただ真っ白な空間が広がっているだけだ。
ここに居るのは僕だけか?
いや、そう言えば先に居なくなったのは、その3人だったか………確か、そうだ。僕が気が付いた時には3人が居なかったはずだ。一瞬だったが間違いはないはずだ。
「桜姉ちゃん~」
返事は無い…………
「桃~」
返事は無い…………
「流~」
返事は無い…………
3人どころか本当何も無い…………夢か?
いや、違う。起きている………指先にも細かい感覚が有るし間違い無いだろう。
『おや?まだ残って居ったのか?早くそれぞれの国へ………』
人の声?
「誰だ!?」
人の声に反応して振り返る。
そこには、およそ人とは思え無い者がいた。
『もう、ワシの事が分からぬのか?うむ!?………お主は何者じゃ?ここにはどうやって来た?』
こいつ話せるのか?しかも日本語で?やっぱり夢………もしかして、昨日読んでたラノベの影響か?
一瞬、本当に夢かと思ったが、どうやら違うようだな。
それに、目の前のアイツが「どうやって来た?」って聞いてきたと言う事は、少なくとも元居た場所とは違うと言う事か?
考えられるのは…………転移、異世界か?なんだか、だんだん頭が冴えてきたぞ。
「僕は白戸黒。ここが何処かは分からない。勿論、どうやって来たかもな」
偽名を名乗る事も出来たが、心を読まれる可能性も有るからな、慎重にいこうか…………はっきり言って、このキラキラした名前も名付けた親も嫌いだが今は関係無い。
『白戸黒………リストには載ってないのう』
リスト?他にも連れて来られた者が居るのか?もしかして桜姉ちゃん達3人もか?それなら急に僕だけを残して居なくなった理由も納得だな。何とか確認する必要が有るな。
ますます頭がクリアになってくる。ここが異世界と仮定するなら、リストに載っている者が連れて来られた者で、僕自身は巻き込まれた者か…………ラノベに感謝だな。
そろそろ学校の授業でもラノベを教科書にした方が良いんじゃないか?少なくとも、こう言った特殊な事態に冷静でいられるぞ。まぁ、焦る、焦らないは別だがな………
「僕は名乗ったぞ。次はそっちの番じゃ無いのか?それと、そのリストには何人の名前が載っているんだ?」
得られる情報は、得られる時に得ていて損は無いだろう。ラノベのテンプレ的に連れて来られたからには魔王くらいは倒さないと帰れないだろう。
『これは失礼した。ワシは????、調律者じゃ』
調停者………大層な肩書きだな。名前の方は理解出来なかったが言葉が違うのか?
「その調律者様が、僕にどんな用が有るんだ?」
『実に言いにくいのじゃが、お主は想定外………イレギュラーじゃ。本来、ワシの役目は魔王を倒す為に転移してきた12人の勇者の調律じゃ。お主は何と言うか13番目の一般人………』
やはり転移に巻き込まれただけか、それにしても勇者は12人も居るのか、僕が読んだどのラノベよりも豪華だな。魔王大ピンチ。
「それで?」
『う~む………これも言いにくいのじゃが、お主には勇者の素質は皆無じゃ。このままここで、勇者達の帰還を待つか、勇者達を追いかけるか、2つに1つじゃ』
それは想定通りだ、逆に勇者の素質が有って貰っては予定が狂う。幾ら勇者が多くても僕には魔王や神等を相手にする気は無い。
「元の世界に戻る選択肢は無いのか?」
まぁ、この選択肢も有って貰っても困るんだが、どんな異世界か分からないが日本で学生生活を送るよりは楽しいだろう。
『ワシには、その権利は無い』
やはり無理か…………
「そのリストは見せて貰えるのか?」
『その権利も無い。現時点でのステータスやスキルも記されておるからのう。プライバシーの侵害と言うやつじゃ』
どの口がプライバシーの侵害とか言いやがる。ここに連れて来られた時点で、そんな物は存在してないだろうが………
それにしても、この自称調律者はバカなのか?「権利は無い」とかいかにも重要な情報を漏らすとか有り得ないぞ。何らかの権利を持つ調停者よりも上の存在がバレたと分かっているのか?多分、そのリストを作った仮称・【全てを見通す者】が。
…………この仮称っていかにもラスボスっぽい名前だな。ヤバイな楽しくなってきたぞ。
警戒していたが心を読まれる事は無いようだ。それに、あきらかに調停者って感じでは無い、良いところで雑用係りって感じだしな。
こうなると引き出せるだけ情報を引き出すとするかな。この名も知れない異世界を生き抜く為に…………




