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死に咲く花  作者: サツキ
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一章 二話


―――数日前の話である。


俺が所属している"帝国"は大陸を制覇した。数十年前までは王国、皇国、連合、共和国。他にも小さな国々が存在していて、数百年も前から戦争を続けていた。


俺が生まれたのは、そんな時代だった。


……はじめて剣を握ったのは、死体あさりの最中だった。父も母も気がついたら既に死んでいて、村の大人に指示されるがままに戦場後への死体あさりについていった。

名もしらぬ細身の兵士。絶対に剣を離すまいとして死んだのか、剥ぎ取るのに時間がかかった。

本来なら剣に名が刻まれていて彼が誰だか判別できたのだろうが、当時の俺に文字は読めなかった。剣は多少泥で汚れていたが、血は一滴たりともついていなかったのを記憶している。


そして――――酷く手に馴染んだことも。

剣は大きく、重く、持ち上げて振り上げることすらままならない。幼少の身には過ぎたる物だった。


だというのに妙にしっくりとくるのだ。まるで自分の手に握られるためにあった、というかのように。

初めて剣を振ったのはもっと後だったが、剣を使って何かをしようと考えたのはこの時だったかもしれない。


それからすぐに、俺は帝国軍に入って戦場にでた。少年兵なんぞこの大陸じゃ別に珍しくもない。

初めての戦場での戦果は、生き延びることができたことだろうか。兜をかぶった頭に何かの一撃を受け、治療用のテントの中で気がついた時には戦場は既に熱を失っていた。

訓練を積み、いくつかの戦場を経験した。最初の一年はロクに戦果も挙げられなかった。

運だけはよかったのか、ただ俺は生き延び続けた。無駄飯喰らい、と何度も罵倒された。


数年が経ち、村よりは多少マシな食事と、日課の素振りで肉付きもよくなり、俺の心には余裕が生まれつつあったのだろう。

即ち、他の人間と話をしたり、手合わせを願い出たりといったことを積極的に行うようになったのである。


古参兵達に酒を教えられ、女の買い方と抱き方を叩きこまれて。そうして何年もの月日が流れていくうちに、俺の心には微かな欲望が渦巻きつつあった。

酒、女、うまいメシ。軍の幹部は戦場でもよくそれらを調達して楽しんでいるのを見かけた。もっと力がほしい。戦果があれば、と。


無茶な切り込みをするようになったのはこの頃からである。古参兵でも避けるような位置に、単身斬りこんでいく。それは端から見れば自殺行為だったのだろうが、俺は自分の今まで生きてこられた運と勘に賭けた。

賭けには、勝った。俺の切り込みで敵の部隊は足並みを崩し、瞬く間に瓦解したのだ。俺は評価され、報酬を得た。

その日、俺は街で一番の娼婦を抱いた。あれは今でも忘れられないほど良い女だった。


次の日、娼館から帰ってきた俺に古参兵共hが口々に言う。


「よかったな、身請けされる前にあの女を抱けて」


聞けばあの娼婦はもうすぐ有名な傭兵の元へ身請けが決まるのだという。昨日はその数少ない日にちで、競争率が高かったのだとか。

確かに、俺程度でも命を賭ければ抱けるのだ。いくつもの戦場で名を馳せている英雄と呼ばれるものたちであるならば、当然なのではないか、と。

同時に湧き上がるのは嫉妬心。そしてあの頃には気が付かなかったが、恐らく憧れも。


戰場を駆け抜ける単騎の鬼を見たことがある。


目も霞むような距離から指揮官の頭を撃ちぬく味方が居た。


戦場の一画を純白に染め上げる氷雪魔導師の噂を耳にしたことがあった。


そしてそれらは"英雄"と呼ばれる化物たちである。


彼らを倒せば報酬は?勇名は?街一番の娼婦は?

己の為すがまま、全てが手に入るだろう。

俺は彼らに挑んで、挑んで、挑んで――――


気がつけば英雄と呼ばれていた。戦場では道を譲られ、英雄と一騎打ちになることもある。気合を込めて叫び声をあげれば戦場に歓声があがったこともあった。

だが自分が味方から英雄扱いされていることに気がついたのは、随分後のことだった。


ただ、己が英雄の一人であると気がついた時には既にどうでもよかった。

金はありあまるほどある。名前も既に味方で知らぬ物はいないだろう。娼婦は自分がいかずとも勝手に媚びを売ってくる。

ただ、俺の楽しみは既にそれらになくて、闘いに愉しみがあったというだけで。

肩書はいらない。もっとたくさんの敵と。もっと強い者達と。

その思いは兵士を率いる立場になっても変わらなかった。


司令官殿に連れていくだけでいいから、と部隊を預けられた。五百人程の部隊だ。

俺はお言葉通りに部隊を連れて数万の軍勢、その中枢へと吶喊した。厳しい戦場だった。

結果五十人程残して死んだが、敵軍でも強者と呼ばれる男の元に辿り着き、その首を狩ることもできた。


そして陣地に帰れば部隊は再補充され、気の赴くままに吶喊し、部隊を率いてもやることはその繰り返しだった。

気がつけば部隊の規模は増え、千人程となった。何故か部隊の兵士達は全員笑顔で突撃に付いてくる。

聞くところによると、俺の部隊は戦争狂ばかりだ、と指揮官殿がぼやいていたらしいが。


……気がつけば帝国は大陸の半分を支配していた。

かつて弱小であった帝国には強者少なかったので、いままで気にすることは少なかったが。

最近、帝国各地で英雄視される者達の話をよく聞く。

いずれ、彼らとも刃を交えてみたい。

口には出さずとも、俺はそう考えていた。


ちょっと雑。そのうち書き直します。。。

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