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死に咲く花  作者: サツキ
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プロローグ

―――戦争があった。


思想のために。

家族のために。

権力のために。


ありとあらゆる人々が、様々な思惑を抱いて殺しあった。


―――闘争があった。


力を求めて。

金を求めて。

夢を求めて。


一人の男が戦禍渦巻く世界の中で、己の目的のために闘い、殺し続けた。


国々の戦争は終わらない。

彼の闘争も終わらない。


彼が戦場に出た時から幾年ほどが経過したのだろうか。

彼が初めて人を殺した時、彼はまだ十歳にも届いていなかった。

それが今では歳は三十を越え、細かった身体には肉が付き、歴戦の戦士達と比べてもなお大柄と言える体躯に育った。その体躯で巨大な斧槍を振るい、彼は幾つもの戦果を重ねていった。


―――彼の最初の目的は、さてなんだったのか。

彼は弱い自分が嫌だった。枯れ木のような腕が、肋の浮いた胸が大嫌いだった。

だが、それは戦争の中で肉体を鍛え上げ自然と満たされる。


―――では次の目的は?

男は貧しい村で生まれた。故に戦場で豪華な飯を食らう貴族達が妬ましかった。

……それも闘い続けた結果身分が認められ、貴族程ではないが金には困らなくなった。


―――そして最後に残ったのが、憧れだった。

戦場で出会う無数の戦士達。中には英雄と呼ばれる男達がいた。

彼はただそれに憧れ、挑み、敵わなければ更に肉体を鍛え上げ、討ち倒していった。

そして何時しか、彼も英雄と呼ばれる者の一人に数えられていた。

彼は英雄になったのだ―――歴戦の英雄に。

彼が戦場に出れば敵味方問わず戦士は興奮に震え、雑兵は恐怖に怯える。

戦場で敵である彼を羨望の眼差しで見る敵兵も少なくはなかった。


四十を越えた頃、彼に残っていたのはただ強者と戦いたい、それだけだった。

当然だろう―――彼の人生は戦場にしかなかったのだから。


―――やがて彼の戦いにも終わりが訪れた。それは戦争の終わりだった。

彼と彼の仲間たちの働きによって彼の属する国が周辺国家を攻め滅ぼし、大陸を統一して数百年と続いた長い戦争に終わりを告げる。

そしてそれは同時に、彼の目的が意味を失ったことを意味していた。

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