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「えっ、なんですって!?」


「内定あげますと言っているのですよ」


「で、でもこれは模擬面接で、それにボクはこれからもずっとずっと就活を続けなければいけないし、ボクは永遠に就活生のままで……」


 言っていて自分でも混乱しかけたとき、突然背後のドアの開く音が聞こえたかと思うと元気な一声が飛び込む。


「おっめでとー! ナメくん内定おめでとう!! よかったねー」

 ぴょんと飛び跳ねて、スーツに抱きつく幼女。

 照る照る坊主のような、レインコートの女の子。


「マイ!? どうしてここに?」


「本来この世界に居てはいけないのはナメくんの方だよ。やっと現世の呪縛から解き放たれるんだね」



《涙の精霊》マイは、ボクを見上げると目に薄っすらと涙を浮かべた。


「ナメくん、ちゃんと成仏しなきゃ駄目だからね。せっかく天国に内定が通ったんだから」

 マイが言った。


 そうか、ボクはもう、死んでいたのか――。

 薄々気がついていた。

 マイと過ごす日々が楽しくて、自分はそれを認めたくなかったのだ。



 円間はそっと立ち上がり、マイとボクを交互に見て、それから口を開いた。


「騙したみたいでごめんなさいね。あなたは、とっくに死んでいるの。私の人工精霊、マイと出会ったその日にね」


「おねえちゃんはねぇ、浄霊師さんなんだよー」

 マイが後を続ける。



 流石にここまで来たら自分の置かれた状況を認めざるを得ない。

 ボクは、就活自殺した、幽霊だったのだ。


 ははは、結局そういうオチだったのか。

 最初から最後まで、自分の愚かさと間抜けさに呆れ笑いながら、物語は終わってしまうのだ。


 本当にこれで良いのだろうか。


 生前に、なんとかして内定を勝ち取る道を選べたのではないか。


 もしも人生をやりなおせるとするならば、ボクは、ボクは――。



「もう、いいんだよ。ぜんぶぜーんぶ、終わったんだよ。だからナメくんは、安らかに眠ったらいいの」


「でも、ボクは……ボクはまだ……」


 心の奥から、熱い何かが込み上げてくる。

 何も為せぬまま、果ててしまう無念。



 後悔してもしきれなかった。



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