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異界の住人たち  作者: misato
Ⅰ.死神~闇のストーカー
9/53

viii.

 占いはそれで終わりだった。

 かなりシンプルだ。かつ抽象的。あとは自分で考えろということ? 

 仕方がない。どのみち、私の問題は私だけのものにすぎない。

 仕切られたスペースから出て行くと、菜摘たちが待ち構えていた。

「ね、ね、なんていわれた?」とつついてくる。

 私は首を振ってみせた。

「よくわからなかった」

「なんのカードが出たわけ」

「──死神」

「げっ、最悪」

 なにが最悪ですか、誰のせいよ──私はまた八つ当たり。もちろん内心でだ。

「じゃ、そろそろ帰ろっか」

 人の気も知らず、咲帆がのんきにいう。

「あ、じゃあこれ。どうぞ」

 店長がレジカウンターから出てきて、店の名前と電話番号が入ったカードを私たちに配った。ぜひまた来てね、とにっこり笑う。

 いわれなくても咲帆と菜摘は来るだろう。二人は店長より店員の彼の方を見て頷いた。

「店長さんさ、すっごい里央のこと見てたよね」

 店を出ると、菜摘が笑いながらいった。

「そうそう。美少女だね、とかいってたもんね」

「美少女って、よく考えたらマンガみたいな言葉だよね。っていうか、なんかやらしい」

「それよか、あの人かっこよかったでしょ」

「うんうん、広沢さんっていってたよね」

「ソウって、名前もかっこよくない? かなでるっていってたね。どんな字だっけ」

「演奏の奏じゃない」

「だからどんな字」

 勝手にしゃべりまくる二人は、なんとすでに店員の彼の名前までチェック済みだった。

 おそらく店長から情報収集したのだろう。大したものだ。名前を訊いたところで、どうなるものでもないとは思うのだけど。

 二人はそのまま駅に向かう。友人たちと別れた私は、またしても、『とぼとぼ』という足どりで歩いた。

 家はすぐそこだ。視線のことを思うと外をうろうろしたくもないけど、家に帰ることを考えても気が重かった。さっき見た骸骨の絵が目の前をちらついて、いっそう気持ちが沈んだ。

 店員の彼の言葉を思い出す。

 状況がよくなる。

 もちろん、そうなればありがたい。だけど実際にどうなってほしいのか、それは自分でもよくわからなかった。

 あの視線の男は、いなくなればほっとするだろう。

 といっても、突然いなくなっただけでは、おそらく安心できない。今後安全だという保証はまったくないのだ。いつまた、とびくびくしているのでは同じことだ。

 家族のことにしても──今日帰ったら、母と姉が、『やっぱりお祖父ちゃんの家に行かないことになったから。ここで暮らすわ。今までごめんね』とか? 

 それでほっとできるだろうか。

 できるはずがない。

 今までのことをなかったことにして、これからは平和なごく普通の家族として暮らす?

 無理に決まっている。

 それに私自身のことだって──。

 私は立ちどまった。また視線だ。

 まさか。

 私は周囲を見まわしながら思う。

 あの男、ずっとこの辺りで待っていたとか。

 恐怖で身が竦んだ。周りを見ることがためらわれた。動悸が激しくなり息苦しくなってくる。

 胸に手を当てて、ぎこちなく辺りを見た。男の姿はなかった。だけど視線はまだしつこく感じられた。

 気のせいかもしれない。もうよくわからなくなっていた。私は駆け出して家に飛び込んだ。

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