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異界の住人たち  作者: misato
Ⅲ.月~迷える少女たち
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vii.

「それから、もし外から名前を呼ばれても返事しないこと」

「呼ばれる?」

「うん。君の姉さんの声で呼びかけてくることがあるかもしれない。でも姉さんはここには来ない。兄さんが、家にいるように指示しているはずだ。だから、声がしてもそれは姉さんじゃない。応えちゃ駄目だ」

 わかりました、と私は頷いた。

 そもそも姉は、滅多に私の名前を呼ばない。話もあまりしないのだから、当たり前だ。名前を呼ばれたら、姉でないとすぐ気づくだろう。

「あの、ひとつ訊きたいんですけど」

「なに」

「連中っていったようだけど、複数なんでしょうか」

「それはわからない。言葉のあやだよ。気にしないで」

 はあ。

「まあ、君の姉さんは本当の術者じゃない。そういう人間が呼び出した魔物だから、それほど力は強くないと思う。どんなものでも、兄さんの霊符で当面は防げるだろう」

 だろう、ですか、と思ったけど、これ以上訊いてもきりがない。私は質問をやめにした。

「まあ念のため、おれのそばにいて」

 小さく頷いて、店長の近くに寄る。さっきの電話の声が思い出された。

 強い憎しみ。悪意。死ねという言葉。なにか怖ろしい危害が加えられるのでは、という思いで身体が震えそうになる。

 もしも、もしも殺される、なんてことにでもなったら。

 しかも考えてみれば、店長はなんの関係もない。彼のお人よしをいいことに、軽い気持ちで頼って、一緒に店に籠ることにまでなってしまった。

 どうしよう。

 私ときたら、店長をこんなことに巻き込んで、また迷惑を。

「こら、変なこと考えない」

 店長がいった。いつの間にか店長の腕に触れていたのだ。

 考えたことが伝わってしまっただろうか。私は慌てて身体を引いた。

 まったく、厄介な。

「別に巻き込まれたわけじゃないよ」

 やっぱりわかってる。

「自分を責めることない。そういう感情も魔物の餌になっちゃうよ」

 はい、と私は答える。少しだけ気が楽になった。

 そうだ。今はとにかく、魔物につけ入られないように努力することが先決だ。

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