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不意に目が覚めた。
私のまわりは深い闇だった。なにも見えない。
なのに、わかった。
なにかがいる。すぐ近くに。
私を見ている。じっと見つめている。
逃げ出したいのに身体が動かない。怖い。
どこかから声が聞こえた。
──おまえが悪いんだよ。おまえのせいだ。
私のせい?
だから仕方ないの?
私は問う。
でも、じゃあ私はどうすればいいの?
突然、闇の中に手が現れた。そこだけ浮かぶように白く。
およそ人間のものとは思えない勢いで、私に向かって手がのびる。
悲鳴をあげる間もなく──。
そこで本当に目が覚めた。