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Possible  作者: Nøkkel
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出会い

「人間は考える葦であるという言葉が、、、」


教授がパスカルの言葉について淡々と話をしている。喋り方に抑揚がなく話を聞く人達を眠らせる素晴らしい講義だ。

窓から外の木を眺める。ちょうど一月前の事なのに随分と昔の出来事に感じられた。先月、僕は生まれて初めて故意に自分の超能力を使った。


物心ついた時から、自分が普通じゃないことが分かっていた。何をしても僕は失敗しなかった、けれど自分に超能力があるなんて考えてなかった。小学校三年生の時に僕は学校のプールを壊した。その頃の僕は泳げなかったので水泳の授業が大嫌いだった。ある日、友達から泳げないことを馬鹿にされてプールを壊したいと衝動的に思ってしまった。それが運の尽きだった。プールは僕の願望の通りに見事粉々になった。

これが、自分の超能力を知ったきっかけだった。そして自分のことを化け物だと思った。プールを壊したこと事態は悪いことだと思っていなし、僕の事を馬鹿にした友達が悪いとも思っていない。普通でない子が嫌われていくのは小学校ではよく有る決まり事だ。自分は嫌われていて自分も自分を嫌っている、ただそれだけだった。

それから僕は、無意識で使っていた超能力を使わなくなった。100点しかとっていなかったテストで

0点をとった。当たり前だ、本当は間違っている回答を超能力で正解に変えていたのだから。地域で評判だった天才児童は、ただの児童へと成り下がった。

その後の中学生活、高校生活は一切超能力を使わなかった。しかし僕は大学受験の合格発表で能力を使った。本当は記されていない番号を出現させた、僕は大学に合格した。


「氷華、お昼食べないの?」


知らない間に授業が終わっていた、どうやら考え事をすることが増えているようだ。いや、授業が早く終わったのは、僕がそうしたかったからだ。

とりあえず、僕は席を立つ。無言で立ち上がった僕を朝月が訝しげに見ている。


「お腹が空いて死にそうだよ、早く食堂に行こう」


朝月はホッと息をついて


「うん! 行こうか、今日の日替わりメニューはカレーらしいよ」

「カレー? それはいつもメニューに有るよね?」

「あれ、、、確かに! 何でだろう、、、でも掲示板に書いてあったよー」


二人で首を傾げながら、食堂へと歩みを進める。ブワッと強い風が通り過ぎた時に、黒い影が自分達の前を横切った。


「ん? 何か——」


朝月がそう言葉にした瞬間、地面を蹴る。動体視力を三倍にして、脚の速さを五倍にする。あの影は人間だと思う、恐らく僕に用がある奴だ。あの脚の速さは異常だ。

ものすごいスピード流れる世界の中からさっきの影を探す。


「みーつけたっ」


大学のコンビニの裏に入る姿を捉えた。思い切り地面を蹴ってフワリと宙に浮く——、もしかしたら空を飛ぶのは簡単かもしれない、一度羽を生やしてみようかな。

コンビニの屋根に着地して、上からコンビニ裏を覗き込む。


「はぁ、はぁ、まさか追ってくるなんて」


そこに居たのは息を切らした同い年くらいの女性だった、外国人のような顔立ちをしているが日本語を喋っていたので、必ずしも外国人というわけではないらしいが。

それにしても人間困ってる時って、意外と隙だらけなんだな。この女性はちっともかおをあげようとしない。

音を消しながら、彼女の背後に着地する。


「っ!!!」


すると彼女は、僕が着地したのと同時に、大きく後ろに飛び退いた。


「いつから、そこにいたの!?」

「ほんの数秒前だよ。 それより、あなたは僕に用があるんでしょう?」


なんだか分からないが、ものすごい睨まれている。数分間黙り込んだ後、彼女は口を開いた。


「あなた、名前は?」

「僕? 氷華 神だけど、、、」


僕に用があるなら名前を知らないなんておかしい。しかし「しん、、、また、しんって名前なの、、、?」とかブツブツと呟いている。

すると彼女はクルッと踵を返して歩きだした。こっちが名前を教えただけで終わらすのは嫌だ。


「ストップ! あなたの名前は?」


彼女は足を止めて、僕へと向き直る。ただ、立っているだけなのに迫力がある。

一呼吸おいてから、彼女は口を開いた。


「はじめまして、私はテミス=アルテミシア」


そう、堂々と答えた。


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