表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
dual  作者: T.D.W.
● プロローグ
5/12

1ヶ月前 ③

「はぁぁぁぁぁぁぁ・・・良かった・・・・俺、生きてるっ!!!」


開放感が半端なかった。

よもや、本当に勝てるとは思っていなかったのだ。

必死に抑えていた”アレ”が耐え切れなくなり

ああなってしまった事は、しょうがない・・・しょうがないんだが、

命がいくつあっても足りないぞホント。



あれからというもの、



『ウォーミングアップは終わりましたか?さぁ地獄を見せてあげますよ』



なんて考えてビクっ!!となり。



『考えが浅はかですね。これで本当に勝てると思っていたんですか?』



なんて考えてビクっ!!と小剣を構え。



『残像です』



なんて考えてビクっ!!と後ろを振り返る。



ってな感じな事を、

あいつが吹き飛んでいった茂みを見ながらしばらくの間やっていた。

自慢では無いが、俺はあいつと一緒に訓練をしていた10年間の中で、

一回も勝った事が無い。

だからあれで終わりなんて思ってもみなく警戒するなっていうのが無理がある。



ここ数年は、親父に鋼糸を無理やり預けさせられたというのもあり、

一緒に訓練や組み手なんてやった事なかったが、恐らく勝てなかっただろう。



今回あいつが負けた原因は、あの謎の行動だ。

笑みを浮かべながら横にゆっくりと移動。

その動きは、ただの変態にしか見えなかった。



いやけども、あれがあったからこその勝利だろうこれは!!!

変態さんに感謝せねば。



つーわけで、例の茂みに入って横たわっていた雌い・・・上の妹を発見し、

小枝でツンツンとやって、安全性を確認してからあいつが殺った魔獣の血を

回りに撒いておいた。

これでここのボア達は近づかないだろう。

これはとてつもなく臭いからだ。

若干服にもついたけど気にしないでおこう。

恐らく、一ヶ月は臭いが取れんがな!



戦った相手のアフターサービスもするなんて、俺優しすぎる・・・・・。


■■■■



しっかし、触られただけで抑えきれなくなるとは・・・・、

俺の冬休みの修行はなんだったんだ一体・・・。

あれを抑えるために精神修行をじいちゃんにお願いして、必死にやった。



俺には隠している実力や、力なんてものは無い。

が、隠している事ならある。



今から約1ヶ月くらい前の話。

俺はいつもの用に自分のノルマ分の訓練をこなし、寮へと戻る途中だった。



いつもの光景、いつもの生活、いつもの帰り道だ。



この普通な事がとてつもなく幸せな事で、この人生に満足していた。

そんないつも通りの事をしていただけの俺に、

なんの前触れも無く、それはやってきた。



同顔見知りの女の子が反対の方向の道から歩いてきていた。

女の子の方から挨拶してきたので、俺も何気なく挨拶をし返した。



と思ったら水平蹴りをして体勢を崩し、そこから押し倒して、



「そっちから話かけてくるとはとんだ雌猫だな・・・欲求不満なのかオイ」



なんて事を顔と顔が3cmくらいの距離で呟いていた。

何をやってるかわからねーと思うが俺も自分がわからなかった・・・・・。

頭がどうにかなりs(自主規制



とりあえず素に戻った俺は、驚いて固まってしまっていた女の子を

手刀で気絶させ、女子寮に送り届けて何事も無かったように振舞った。



それからというもの、女を見るととりあえず、押し倒したくなり、従わせたくなる。

生意気な女は、罵りたくなり、踏みつけたくなり、そしてやはり従わせたくなる。



一体俺はなんに目覚めてしまったのか。

心当たりは一つしかない。



古代語チェッカーという便利な道具がある。

ゴブレットの形をしたそれは、特殊な水で器を満たし、血を一滴垂らす事で、

自分に発現している「力」の名を水面に表示してくれる優れものだ。



大丈夫、俺はあっちが側では無い。

というか、俺はこっち側でいたい。





結論、その日は厄日となった。






「で、これからお前はどうしたいのじゃ?聞いている限りだとさっさと死んだ方が

 良いとワシは思うがの」




「いやそこまでは・・・けど何もやる気が起こらない・・・・こんなくだらない力

 なんて欲しくなかった・・・こんなんじゃあ親父の部隊にすら・・・」




「入隊出来んじゃろうな、むしろ普通の生活すら危ういわい。

 世界の半分を敵にしかねんからの、その理は・・・・・・・」




「じいちゃん俺どうすればいいかな?」




「言っておるじゃろ、死「酷くない!?愛弟子相手に死を勧めるとか酷くない!?」




「自分で道を見つけれん者に生きる意味など無いわい。

 逆境をバネにし生き抜いてこその人生じゃ、

 考え方次第で人はどのようにも生きていける」




「考え方を変えるって・・・・例えばどんな?」




「少しは自分で考えんか馬鹿者・・・・そうじゃの例えばじゃが・・・・

 世界の半分が敵であろうとも、残りの半分は敵では無いとか・・・かの」




「残りの半分って・・・・まぁそんな考えも出来るのか」




「それにの、親父さんの部隊に入隊出来ぬと言っておったが・・・・わしはの、

 その事について喜んで良いと思っておる。

 お前は家に囚われすぎじゃ、これを気にいっその事ルーツ・レスにでもなって

 世界をまわって来い。ワシ等の世代では出来なかった事が今は出来るのじゃ、

 それだけでも世界はお前が思っているより、お前に優しく出来ておるからの」




涙が出そうだった。いや、もう若干ウル目だ。

師弟関係とは言え、じいちゃん・・・・師匠は赤の他人である。

親族である親父や、妹達なんて比べ物にならないくらい親身になって

俺の事を思ってくれ考えてくれている。

この人の存在だけで、俺は・・・・・、



「あぁ、あとの・・・お前の人生はこれから、特殊な性癖の持ち主に出会わん限り」




「・・・出会わん・・・・限り?」




「魔法使いになる確率は100%じゃな」



涙腺が崩壊した。





今思い出しただけでも色々な意味で泣きたくなってくる。

暇があったらまたじいちゃんのとこによるとしよう。



もうすぐ林道を抜ける。

ここを抜ければ、ニトル街道だ。

そこからだと一番近くて大きい街は、衛生都市カシゴテンオ。

そこでとりあえず路銀稼ぎといこう。



大丈夫、なんとかなる。

なんせ、俺が思っているより世界は俺に優しいらしいからな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ