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ダンジョン最底辺の芋虫に転生した俺は、寄生能力で美少女を支配する  作者: 葉月


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第3話 ダンジョンの危機

「おお! ここが冒険者ギルド!」


 アニメやゲーム、漫画で飽きるほど見た光景のはずなのに、実際に目の当たりにすると感慨深いものがある。


 年月を感じさせる石造りの外観に、どこか人目を引くダチョウのエンブレム。冒険者たる者、どこまでも突き進めという意味が込められているらしい。ちなみにエルメスちゃんの知識によるものだ。


「マジでモ◯ハンみたいだな」


 中には強面の男だけでなく、得物を提げた女の姿も意外と多い。ギルド内は酒場も兼ねているらしく、長テーブルには給仕係の女の子の姿もある。


「おい、リンス! こっちもエール頼むわ!」

「怒鳴らなくても聞こえてるネ! ちょっと待つヨロシイ!」


 昼間っから酒をかっくらっている姿は、どこから見てもダメな大人という感じなのだが、この世界の冒険者にとっては当たり前の光景なんだろう。


「へぇー、やっぱりクエストボードもあるんだ」


 冒険者ギルドの定番、依頼書を貼り付けるボードもしっかりある。こういうのを見るとゲーマーの性だろうか、胸がワクワクしてくる。


「なになに――薬草採取依頼、推定難易度E、薬草一束につき報酬500ギル」


 難易度の横のアルファベットは冒険者ランクを表しているんだろう。


「この一束500ギルってのは……高いのか安いのかさっぱりわからん」


 まあ薬草採取に大した危険はないだろうから、きっと安い部類なんだろう。


「こっちはユニーク個体――黒ゴブリンの討伐、か」


 当たり前だけど、俺以外にもユニーク個体はいるんだな。ひょっとして、俺と同じ転生者だったりして。


「……」


 あながち否定できないんだよな。もし転生者と出会うことがあったら、仲良くできるだろうか。いや、出会う前から考えても意味がない。タラレバほど無意味なものはない。



「少し失礼します」

「へ?」


 突然、神官服を着た少女が近づいてきた。

 そして――


 クンクン。


 犬みたいに臭いを嗅ぎ始めた。


 ……え、俺ってそんなに臭いっすか? 加齢臭でも出てんのかな? いやいやいや、今はピチピチの十代、エルメスちゃんなんですけど! 昨夜は湯浴みして隅々まで懇切丁寧に洗ったんだ。それが臭いわけないだろ!


 ――って、コイツ! 昨日の酒場にいた神官じゃないか。


「あなた、魔物の臭いがする」


 ギクッ!?


「え? き、気のせいじゃないかしら? ほら、あたし冒険者だし? モンスターと戦ってるから!」

「それは皆さんそうです。でもそうじゃなくて、体の中から臭ってくる感じなんです」


 何なんだよ、この神官少女は! おっさん、勘のいいガキは嫌いだよ!


「それに、黒い魔力を持っています」

「く、黒い魔力?」

「普通、人間の魔力は青いです。エルフは黄色。魔物と魔族は黒といった感じです」


 少女は自分の左目を指差した。黄金色の瞳。ちょっとカッコいいかも。おっさんの中の眠れる厨二病が疼いちまう。


「神眼。通常は見えない魔力の色が、私には見えます」


 チートかよ。


「あなたには青と黒。魔力が二色あります」


 そんな落とし穴聞いてねぇよ!


「混血ならあり得なくもないです。でも――」


 少女はエルメスの耳をじっと見た。


「耳、長くないですね。尻尾も、やはりないです。あなたは混血ではありませんよね?」


 そんなルール知らねぇよ! 後出しじゃんけんしてくんな!


「そ、曾祖母が魔族だったんですの! きっと先祖返りってやつですわね!」


 少女は少し考えた。


「……それは、ほぼ人間なのでは?」


 正論やめろ。


「でも、臭いは確かに魔物です」


 まだ言うのかこの子!


「私、嗅覚には自信があるんです」


 そんな自慢いらん!


 俺が困っていると、少女は小さく首を傾げた。


「本当に不思議です」


 そして一言。


「私、あなたにとても興味があります」


 いや持つな。


「あ、あの、あたしそろそろ受付に行かなきゃ、ですわ!」


 強引に会話を切る。振り返ると、神官少女はまだこちらを見ていた。

 ただ見ているだけだ。追いかけてくるわけでも、声をかけてくるわけでもない。


 なのに――足が速くなる。


 おかしい。俺は今、エルメスの体を動かしている。エルメスの感情じゃなく、俺の判断で動いているはずだ。

 なのになぜ、逃げたいと思っている。


 首筋が、ざわつく。

 あの金色の瞳が、見ていた。エルメスじゃなく――その奥にいる、俺を。


「……あの子、絶対ヤバいやつだ」


 要注意どころじゃない。


 あれは――放置したら、いつか詰む。



 ◆



「あー……エルメス=バーキンさん、生きていたんですね」

「え?」


 受付嬢がめちゃくちゃ冷たい。汚物でも見るような目でこっちを見てくるんですけど、なんで? どして?


 エルメスちゃんの記憶を辿ると、その理由が判明した。どうやらエルメスちゃん、ギルド職員の間では超が付くほどの有名人。人呼んで――


 “悪魔の女”(メンタルクラッシャー)


 この数ヶ月でエルメスちゃんを担当した職員が相次いで辞職するほど、凶暴なクレイマーだったらしい。


「もうっ! エルメスちゃん良いところがひとつもないじゃん! そんなだから家を追い出されるんだよ!」


 ――――ッ!


 ……ん? また一瞬、Wi-Fiが途切れたような感覚になった。気のせいかな。エルメスちゃん……ちゃんと圏外ですよね? 意識ないですよね? なんかじわじわ不安になってきたんだが。



「ダンジョンの報告でしたら、すでにキリトさんたちから受けています」

「え、ああ、そうなのね」

「?」


 受付嬢が怪訝な顔をした。


「あなた、本当にエルメスさんですか? 以前より雰囲気が随分と柔らかくなられていたので。それに――口調も、違いますよね」

「き、気分転換ですわ!」

「そうですか」


 興味ないなら聞くなよ!


「それで、キリトさん達はどんな報告をしましたの?」

「キリト、さん?」


 受付嬢が一瞬、目を細めた。


 やばい。


「き、キリトのバカはどんな報告をしたのかって聞いてるのよ! さっさと答えなさい!」

「……ちっ」


 舌打ちされた。俺だってこんな言い方したくないんですよ。おっさんのメンタルはエルメスちゃんみたいに鋼じゃないんだから。


「あのダンジョンは浅い階層のモンスターが弱いとの報告でしたので、討伐コストが低いと判断しました。ダンジョンコアの破壊を目的とした精鋭パーティが、三日後に出発予定です」

「……」


 ダンジョンコア?


「コアが破壊されれば、そのダンジョンの魔物は全滅します」


 ……え?


 つまり。


「……俺も死ぬじゃん」


 シャレにならない。


 呑気に街の様子を楽しんでいる場合ではなかった。ダンジョンは俺の生命線だ。タイムリミットは三日後。


 なんとかしなければ!


 手駒は芋虫(パイセン)たちだけ。しかし、俺には知恵がある。そして今、俺には人間社会で得られる情報がある。それで何ができる? 何をすべきだ?


「考えろ、俺!」

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