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第7話:新メニュー開発と、謎の少女

料理ギルドに加入して2週間。

特に変化はなかった。

ギルドから届いたのは、メンバーズカードと、高級食材カタログだけ。

「思ったより普通だな」

カタログを見ると、確かに珍しい食材がたくさん載っている。

ドラゴンの肉、魔法樹の果実、深海魚のヒレ……

「これ、使ってみたいな」

せっかくだから、新メニューを開発しよう。

俺は何種類か食材を注文した。

3日後、食材が届いた。

「すごい……初めて見る食材ばかりだ」

まずは、ドラゴンの肉。

赤黒い色をしていて、見るからに高級そう。

「これ、どう調理すればいいんだろう」

試しに薄く切って、焼いてみる。

『調理の祝福』が発動――

【調理の祝福】が発動しました。

料理に『体力回復・大』『筋力向上・中』『火耐性・小』が付与されました。

「火耐性!?初めて見る効果だ」

一口食べてみる。

「うまい!濃厚で、野性味がある」

これはステーキにしたら絶対に人気が出る。

次に、魔法樹の果実。

青く光る、不思議な果物だ。

「これは……デザートに使えそう」

果実を切って、クリームと混ぜて、タルトを作る。

『調理の祝福』が発動――

【調理の祝福】が発動しました。

料理に『魔力回復・大』『集中力向上・中』『魔法威力上昇・小』が付与されました。

「魔法威力上昇!?これ、魔法使いに大人気になるんじゃ……」

こうして、次々と新メニューを開発していった。


そんなある日の夕方。

店に、奇妙なお客さんがやってきた。

10歳くらいの少女。

ボロボロのローブを着て、フードで顔を隠している。

「いらっしゃいませ」

「……」

少女は何も言わず、隅のテーブルに座った。

「ご注文はお決まりですか?」

「……一番安いもの」

小さな声だった。

「えっと、それなら野菜スープですね。銅貨8枚になります」

「……これで足りる?」

少女が差し出したのは、銅貨が10枚。

「足りますよ。おつりは銅貨2枚です」

「……いい。おつりはいらない」

「そんな、もらえませんよ」

でも、少女は首を横に振った。

「……私、お金ない。だから、少しでも多く払いたい」

「……」

この子、お金に困っているんだ。

「分かりました。じゃあ、サービスでパンもつけますね」

「え……いいの?」

「もちろんです」

キッチンに戻って、野菜スープとパンを準備する。

スープには、野菜をたっぷり入れて、栄養満点に。

パンは焼きたてを。

そして――『調理の祝福』が発動。

【調理の祝福】が発動しました。

料理に『体力回復・中』『栄養補給・大』『温もり・微』が付与されました。

「温もり……?」

初めて見る効果だ。

でも、なんとなく分かる気がする。

この子に必要なのは、栄養だけじゃない。

心の温もりなんだ。

料理を少女のテーブルに運ぶ。

「お待たせしました」

「……ありがとう」

少女はスープを一口飲んだ。

そして――

「……!」

涙が、ぽろぽろと流れ落ちた。

「おいしい……こんなに、おいしいもの、初めて……」

「……」

少女は泣きながら、スープを飲み続けた。

パンも、最後の一口まで大切に食べた。

「ごちそうさま……」

「また来てくださいね」

「……うん」

少女は小さく頷いて、店を出て行った。

その背中が、とても小さく見えた。

「あの子、大丈夫かな……」

翌日も、少女は来た。

またスープとパンを注文した。

そして翌日も。

その翌日も。

毎日、夕方になると少女は店に来た。

いつも同じものを注文して、静かに食べて帰る。

「おじさん」

5日目、少女は初めて話しかけてきた。

「ん?どうしました?」

「……名前、教えて」

「俺はケント。君は?」

「……リナ」

「リナちゃんか。よろしくね」

「……うん」

それから、リナは少しずつ心を開いてくれた。

笑顔を見せるようになった。

他のお客さんとも、少しだけ話すようになった。

そして、ある日――

「ケント、お願いがあるの」

「何?」

「……ここで、働かせてもらえない?」

「え?」

「私、何もできないけど……お皿洗いとか、掃除とか、なんでもする」

リナは真剣な目で俺を見つめた。

「だから……ここに、いさせてほしい」

「……」

俺は少し考えた。

この子には、きっと複雑な事情がある。

でも、それを詮索する必要はない。

「分かった。じゃあ、明日から来て」

「本当!?」

「ああ。でも無理はしなくていいからね」

「うん!ありがとう!」

リナは初めて、満面の笑みを見せてくれた。

こうして、カフェ・ミルフォードに、小さな従業員が加わった。


ーー第7話に続く

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