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第5話:貴族のお嬢様がやってきた

村の危機から1ヶ月。

カフェ・ミルフォードは、以前にも増して繁盛していた。

噂を聞きつけた冒険者が、遠くの町からわざわざやってくるほど。

「店長、今日のおすすめは?」

「今日は新作のクリームシチューです」

「それください!」

メニューも充実してきた。

朝食メニュー、ランチメニュー、ディナーメニュー。

デザートやドリンクのバリエーションも増やした。

全ての料理に『調理の祝福』が発動するから、どれを食べても満足してもらえる。

「ケント、少し休んだらどうじゃ?」

村長さんが心配そうに声をかけてくれた。

「大丈夫ですよ。料理を作るのが楽しいですから」

「そうか……無理はしないでな」

実際、楽しかった。

前世では味わえなかった、充実感。

お客さんの笑顔を見るたびに、「ああ、この世界に来てよかった」と思う。

そんなある日の午後。

店に、見るからに上品な人たちが入ってきた。

先頭を歩くのは、15歳くらいの少女。

綺麗な金髪に、青い瞳。

豪華なドレスを着ていて、明らかに貴族のお嬢様だ。

その後ろには、屈強な護衛が2人。

「いらっしゃいませ」

「ここが噂のカフェね」

少女は店内を見回して、少し眉をひそめた。

「思ったより……質素なのね」

「申し訳ありません。田舎の店ですので……」

「いいわ。座らせていただくわ」

少女は一番奥のテーブルに座った。

護衛の2人は、壁際に立って待機。

「ご注文はお決まりですか?」

「この店の一番高い料理を持ってきて」

「えっと……うちの店、どの料理も値段はほとんど同じなんですが」

「同じ?」

少女は驚いた顔をした。

「オムレツもステーキも、銀貨2枚です」

「……冗談でしょう?ステーキが銀貨2枚?王都なら金貨1枚はするわよ」

「そうなんですか……」

俺は王都の物価を知らなかった。

「まあいいわ。じゃあ、そのステーキとやらを頂くわ」

「かしこまりました」

キッチンに戻って、ステーキを焼き始める。

この世界の牛肉は、地球のものとほとんど変わらない。

いい感じの霜降りだ。

塩胡椒でシンプルに味付けして、強火でさっと焼く。

そして――『調理の祝福』が発動。

【調理の祝福】が発動しました。

料理に『体力回復・中』『筋力向上・小』『魔力回復・小』『美容効果・微』が付与されました。

「美容効果?初めて見た効果だな」

面白い。

このスキル、食べる人に合わせて効果が変わるのかもしれない。

ステーキをお皿に盛り付けて、付け合わせの野菜と一緒に提供。

「お待たせしました」

「……」

少女は無言で、ナイフとフォークを手に取った。

一口、口に運ぶ。

そして――

「――!」

少女の目が、大きく見開かれた。

「これ……何なの……?」

「ステーキですが……」

「こんな……こんな美味しいステーキ、食べたことない……」

少女は驚きながらも、次々とステーキを口に運んだ。

「王都の高級レストランでも、こんな料理は出せないわ……」

「そんなに美味しいですか?」

「美味しいなんてものじゃない。これは……芸術よ」

少女は完食すると、俺をまっすぐ見つめた。

「あなた、名前は?」

「ケントといいます」

「ケント……私はセシリア・フォン・アルトリア。アルトリア侯爵家の令嬢よ」

「侯爵……!?」

侯爵といえば、王国でもトップクラスの貴族だ。

「あなたの料理、本物ね。こんな辺境の村にいるのが信じられないわ」

「ありがとうございます」

「ねえ、ケント。私と一緒に王都に来ない?」

「え?」

「王都で店を出すのよ。資金は私が出すわ。あなたはただ料理を作ればいい」

突然の申し出に、俺は戸惑った。

「それは……光栄なお話ですが」

「断る気?」

「いえ、そうではなく……」

俺は村を見回した。

ここには、いつも来てくれる常連客がいる。

村人たちとの温かい交流がある。

「俺は、この村が好きなんです。だから、ここで店を続けたい」

「……」

セシリアさんは、少し寂しそうな顔をした。

「そう……残念だわ」

「申し訳ありません」

「でも、諦めないわよ。いつかあなたを王都に連れて行くわ」

そう言い残して、セシリアさんは店を出て行った。

「王都か……」

いつかは行ってみたい気もする。

でも今は、この村で、この小さなカフェで、お客さんに料理を提供したい。

それが、俺の幸せだから。


ーー第6話に続く

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