第4話:村の危機と、伝説級の料理
それから2週間。
カフェ・ミルフォードはすっかり村の日常に溶け込んでいた。
常連客も増え、毎日笑顔が溢れる店。
俺にとって、これが理想の生活だった。
でも――そんな平穏が、突然破られた。
「店長!大変だ!!」
朝早く、トムさんが血相を変えて飛び込んできた。
「どうしたんですか!?」
「村の北の森に、魔物の群れが現れた!しかもB級魔物だ!」
「B級魔物……!?」
この世界の魔物は、E級からS級まで、ランク分けされている。
E級は初心者冒険者でも倒せるレベル。
でもB級となれば、熟練の冒険者でも危険な相手だ。
「村の冒険者だけじゃ、とても対処できない。村長が隣町に援軍を要請したけど、到着まで3日かかる」
「3日も……」
「それまで持ちこたえられるかどうか……」
トムさんの顔は青ざめていた。
村には、戦える人間が少ない。
冒険者はトムさん含めて5人。全員FランクかEランク。
「俺も戦いたいけど、装備もろくにないし……」
「いや、待ってください」
俺は考えた。
俺には『調理の祝福』がある。
料理に魔法効果を付与できる。
「もしかしたら、俺にも手伝えることがあるかもしれない」
「店長……?」
「トムさん、村の冒険者全員を集めてもらえますか?それと、戦える村人も」
「わかった!」
30分後。
店には15人ほどが集まった。
冒険者5人、それに戦える村人たち。
「皆さん、聞いてください」
俺は深呼吸してから、話し始めた。
「俺の料理には、特殊な効果があります。体力回復、疲労回復、そして――戦闘能力の向上」
「それは知ってるが……」
「今から、特別な料理を作ります。援軍が来るまでの3日間、皆さんが戦い抜けるような料理を」
俺は厨房に入った。
「さあ、全力で作るぞ」
まずは、体力と筋力を大幅に上げる料理。
次に、魔力と集中力を向上させる料理。
そして、耐久力と回復力を高める料理。
1時間かけて、10種類以上の料理を作った。
ハンバーグ、ステーキ、シチュー、パスタ、サラダ、スープ……
全てに、俺の魂を込めた。
そして――
『調理の祝福』が、かつてないほど強く発動した。
【調理の祝福】が極大発動しました!
料理に複数の強力な効果が付与されました。
・『体力回復・大』
・『筋力向上・中』
・『魔力回復・中』
・『防御力向上・小』
・『集中力向上・中』
・『疲労回復・大』
「これが……俺の全力だ」
料理をテーブルに並べた。
「さあ、食べてください!」
「おお……」
冒険者たちは、次々と料理を口にした。
そして――
「な、なんだこれ!?」
「体が、熱くなる!」
「力が湧いてくる!」
全員が驚きの声を上げた。
トムさんは剣を抜いて、素振りをしてみた。
「すげえ……動きが軽い!いつもの倍は速く動ける!」
魔法使いの村人は、火球を放ってみた。
「魔力が……こんなに早く回復するなんて!」
「皆さん、これで戦えますか?」
「ああ!」
「任せろ!」
「店長の料理があれば、B級魔物だって怖くない!」
全員が力強く頷いた。
「よし、じゃあ作戦を立てよう」
俺も一緒に、戦略会議に参加した。
俺は戦えないけど、後方支援はできる。
料理を作って、戦う人たちを支える。
それが、俺にできること。
3日後
魔物との戦いは激しかった。
でも、俺の料理のおかげで、村人たちは見事に戦い抜いた。
朝、昼、夜と、休む暇なく料理を作り続けた。
戦いで疲れた冒険者たちに、回復料理を。
魔力が尽きた魔法使いに、魔力回復料理を。
怪我をした人には、治癒効果のある料理を。
そして――ついに援軍が到着した時、魔物はほぼ全滅していた。
「信じられない……F級冒険者たちが、B級魔物を倒すなんて」
援軍のリーダーは驚愕していた。
「これも全部、店長のおかげだ!」
トムさんが俺を指さした。
「店長の料理がなければ、俺たちは初日で全滅してた!」
「料理……?」
援軍のリーダーは首を傾げた。
でも、村人たちは皆、俺に感謝してくれた。
「ケント!ありがとう!」
「お前がいなければ、村は終わってた!」
「これからも、よろしくな!」
その夜、村では祝勝会が開かれた。
もちろん、俺が料理を担当した。
「店長、これからも頼むぞ!」
「ああ、任せてください」
こうして、村の危機は去った。
そして――俺の名前は、少しずつだが、周辺地域に広がり始めていた。
「辺境の村に、伝説級の料理を作る男がいる」
そんな噂が、王都にまで届くのは、もう少し先のことだった。
ーー第5話に続く




