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第3話:噂は広がり、村の英雄がやってくる

開店から1週間。

カフェ・ミルフォードは、予想以上の繁盛ぶりだった。

朝は村人が朝食を食べに来る。

昼は近くの森で働く木こりたちが休憩に来る。

夜は冒険者たちが疲れを癒しに来る。

「店長、今日もオムレツセット!」

「コーヒーおかわり!」

「俺はサンドイッチで!」

嬉しい悲鳴だ。

メニューも少しずつ増やしていった。

サンドイッチ、パスタ、シチュー、カレー。

全て前世の知識を活かして、この世界の食材でアレンジしている。

そして、全ての料理に『調理の祝福』が発動する。

「不思議だな……なんでこんなに効果がつくんだろう」

考えてみれば、このスキル、かなり強力だ。

普通の料理なのに、回復ポーション並の効果がある。

しかも、美味しい。

「もしかして、俺のスキル、ユニークだからこんなに強いのか?」

まあ、深く考えても仕方ない。

今は、目の前のお客さんに喜んでもらうことが大事だ。

そんなある日の午後。

店に、見慣れない人物がやってきた。

30代くらいの女性。

鋼の鎧を身に着け、腰には立派な剣。

そして――その雰囲気が、他の冒険者とは明らかに違う。

「いらっしゃいませ」

「ここが噂の店か……」

女性は鋭い目で店内を見回した。

「あの、ご注文は?」

「……とりあえず、お前が一番自信のある料理を出せ」

「はい!」

一番自信のある料理。

それなら、これだ。

キッチンに戻って、俺は特製のハンバーグを作り始めた。

前世で母親から教わった、俺の十八番。

肉をこねて、玉ねぎを炒めて、形を整える。

じっくり焼いて、特製のデミグラスソースをかける。

そして――

『調理の祝福』が発動した。

しかも、今までで一番強い光を放った。

【調理の祝福】が大きく発動しました!

料理に『体力回復・中』『筋力向上・小』『魔力回復・小』が付与されました。

「おお……3つも効果がついた」

これは今までで最高の出来だ。

料理を運んで、女性の前に置く。

「特製ハンバーグです。どうぞ」

「……」

女性は無言で、ナイフとフォークを手に取った。

一口。

「――」

女性の動きが止まった。

そして、ゆっくりと顔を上げる。

「これは……」

「どうでしょうか?」

「信じられん……こんな料理、見たことも食べたこともない」

女性の目が、わずかに潤んでいた。

「体が、内側から満たされていく。魔力も回復している。それに、この味……」

「気に入っていただけたでしょうか」

「……ああ」

女性はゆっくりと、しかし確実に、ハンバーグを完食した。

「店主。お前の名は?」

「ケントといいます」

「ケントか……覚えておこう。私はレイナ。Bランク冒険者だ」

「Bランク!?」

この村にいる冒険者は、ほとんどがFランクかEランク。

Bランクともなれば、かなりの実力者だ。

「私は今、王都に向かう途中だ。たまたまこの村に立ち寄っただけだが……」

レイナさんは会計を済ませると、こう言った。

「お前の料理は、本物だ。いずれ、お前の名は王都にまで届くだろう」

「そんな……」

「謙遜するな。この村で終わるには惜しい才能だ」

そう言い残して、レイナさんは店を出て行った。

「王都か……」

正直、今の俺にそんな野望はない。

ここで、小さなカフェを続けられれば、それで十分だ。

でも――

「いつか、もっと色んな人に料理を食べてもらえたら、嬉しいな」

そんなことを考えながら、俺はまた厨房に戻った。

次のお客さんが、もう入ってきた。

今日も、忙しい一日が始まる。

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