第25話:新たな仲間
定休日を設けてから2週間。
少し余裕ができた。
「やっぱり、休みは大事だな」
そんなある日――
店に、見慣れない少年が入ってきた。
15歳くらいだろうか。
ボロボロの服を着て、痩せている。
「いらっしゃいませ」
「……」
少年は何も言わず、隅の席に座った。
「ご注文は?」
「……お金、ない」
小さな声だった。
「お金がないなら……」
俺は考えた。
「じゃあ、サービスでスープとパンをどうぞ」
「え……いいの?」
「もちろん」
スープとパンを作って、提供する。
少年は、がむしゃらに食べた。
「美味しい……」
涙を流しながら、食べている。
「……」
この子、リナと同じだ。
お腹を空かせて、居場所がない。
「ねえ、君」
「はい……?」
「名前は?」
「……ユウ」
「ユウか。俺はケント」
「ケント……」
「ユウ、もしよかったら、ここで働かない?」
「え……」
「お皿洗いとか、掃除とか。給料も出すし、食事も提供する」
「本当……?」
「ああ。どうかな?」
ユウは、しばらく考えてから――
「お願いします!」
深々と頭を下げた。
「じゃあ、明日から来てね」
「はい!」
こうして、カフェ・ミルフォードに新しい仲間が加わった。
翌日から、ユウは一生懸命働いた。
お皿洗い、掃除、食材の運搬――
何でも率先してやってくれる。
「ユウ、真面目だな」
「だって、ケントさんに恩返ししたいから」
「恩返しなんていいよ」
「でも!」
ユウは真剣な目をした。
「ケントさん、僕を拾ってくれた」
「僕、孤児で……誰も助けてくれなかった」
「でも、ケントさんは違った」
「ユウ……」
「だから、恩返しがしたいんです」
その真っ直ぐな目を見て、俺は微笑んだ。
「分かった。じゃあ、一緒に頑張ろう」
「はい!」
ユウは、すぐに店に馴染んだ。
リナとも仲良くなった。
「ユウ、お皿洗い上手だね」
「えへへ、ありがとう」
「私も最初、お皿洗いから始めたんだよ」
「そうなんだ」
二人は、まるで兄妹のようだった。
「いい光景だな」
トムさんが笑っている。
「お前の店、本当に温かいよな」
「そうですか?」
「ああ。ここに来ると、心が癒される」
「ありがとうございます」
ある日、ユウが俺に聞いてきた。
「ケントさん、僕も料理、覚えていいですか?」
「もちろん。教えるよ」
「本当ですか!」
「ああ。何から始めようか」
「えっと……オムレツ!」
「オムレツか。いいね、基本だから」
こうして、ユウへの料理指導も始まった。
「卵を溶いて、塩で味付け」
「はい」
「フライパンを温めて、バターを溶かす」
「はい」
「そして――一気に流し込む」
ジュワッと音がする。
「わあ……」
「箸でかき混ぜながら、半熟にする」
「難しい……」
「最初はみんなそうだよ。練習すれば上手くなる」
ユウは、真剣に練習した。
何度も失敗して、何度もやり直して――
「できた……!」
ついに、綺麗なオムレツが完成した。
「すごいじゃないか!」
「やった……!」
ユウは嬉しそうに笑った。
「料理、楽しいです!」
「そうか。じゃあ、これからも教えるよ」
「お願いします!」
こうして、カフェ・ミルフォードは――
俺、リナ、ユウの3人体制になった。
店は、さらに活気づいた。
「いい仲間が増えたな」
幸せな日々が、続いていく。
ーー第26話に続く




