第23話:美食結社の影
竜国から村に戻って3日後。
約束通り、ゼンが再び店を訪れた。
「来たぞ、ケント」
「ゼンさん……」
「返事は決まったか?」
「はい」
俺は真っ直ぐにゼンを見た。
「申し訳ありませんが、お断りします」
「……そうか」
ゼンは、予想していたかのように頷いた。
「理由を聞いてもいいか?」
「俺は、ここで料理を作りたいんです」
「辺境の村で?」
「はい。ここが、俺の居場所なので」
「……」
ゼンは少し考えてから、言った。
「なら、一つ勝負をしよう」
「勝負……?」
「料理対決だ。俺と、お前で」
「え……」
「俺が勝ったら、お前は美食結社に入る」
「お前が勝ったら、二度と勧誘しない」
ゼンは真剣な目をしていた。
「どうだ?」
「……分かりました」
断る理由はない。
「いつやりますか?」
「明日、この店で」
「了解です」
ゼンは去っていった。
「料理対決か……」
また、新たな戦いが始まる。
翌日。
店には、多くの村人が集まっていた。
「ケントの料理対決、見逃せないぞ!」
「相手は誰なんだ?」
「美食結社とかいう、謎の組織らしい」
ざわざわと、騒がしい。
そこへ、ゼンが現れた。
「始めるか」
「はい」
「ルールは簡単。同じテーマで料理を作る」
「審査員は、ここにいる村人たち」
「多数決で、勝敗を決める」
「分かりました」
「テーマは――『故郷の味』だ」
「故郷の味……」
「制限時間は1時間。準備はいいか?」
「はい」
「では――開始!」
俺は迷わず、材料を集めた。
「作るのは――オムライス」
前世で、母がよく作ってくれた料理。
シンプルだけど、温かい。
卵、米、鶏肉、ケチャップ。
ご飯を炒めて、チキンライスを作る。
卵を薄く焼いて、チキンライスを包む。
ケチャップをかけて――
『調理の祝福』を込める。
【調理の祝福】が発動しました。
料理に『心の癒し・極大』『思い出・大』『母の愛・中』が付与されました。
「母の愛……」
完璧だ。
一方、ゼンは――
「フォアグラのポワレ、トリュフソース添え」
高級食材を使った、プロの料理。
見た目も、香りも、完璧だった。
「すごい……」
時間終了。
審査の時間。
まずは、ゼンの料理から。
村人たちが試食する。
「うまい……!」
「こんな料理、初めて食べた!」
「これが、プロの味か……」
絶賛の声。
「やばい……レベルが違う」
次に、俺のオムライス。
「これは……普通のオムライス?」
「シンプルだな……」
不安な空気。
でも――一口食べた瞬間。
「――!!」
全員が、涙を流し始めた。
「なんだ……これ……」
「温かい……心が温かい……」
「母ちゃんを思い出す……」
「子供の頃……幸せだった日々が……」
次々と、村人たちが泣き出した。
「これが……故郷の味だ……」
トムさんが言った。
「ゼンさんの料理も美味かった。でも――」
「ケントの料理には、心がある」
「これが、俺たちが選ぶ料理だ」
全員が、俺に投票した。
「ケントの勝ちだ!」
「やったぞ、ケント!」
勝負が終わった後。
ゼンは静かに言った。
「お前の勝ちだ」
「……」
「俺は、技術では負けていない。食材も、盛り付けも、完璧だった」
「でも――お前の料理には、俺にないものがある」
ゼンは認めた。
「心だ」
「ゼンさん……」
「お前は、料理に魂を込めている」
「それが、人を動かす」
ゼンは微笑んだ。
「約束通り、もう勧誘はしない」
「でも――いつでも、美食結社の扉は開いている」
「お前が来たくなったら、いつでも来い」
「ありがとうございます」
ゼンは去っていった。
「料理に、心か……」
改めて、大切なことを学んだ。
ーー第24話に続く




