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第17話:王宮での準備

翌日から、俺は王宮の厨房で準備を始めた。

「こちらが、王宮の厨房です」

案内されたのは、巨大な厨房だった。

最新の設備、豊富な食材、そして――

「料理人が、こんなにいるのか……」

20人以上の料理人たちが、こちらを見ていた。

「皆さん、紹介します。建国祭の料理長、ケントです」

グレゴリーさんが紹介する。

「よろしくお願いします」

俺が頭を下げると――

「……」

シーンとした空気。

誰も、歓迎してくれない。

「あの……」

「失礼ですが」

一人の料理人が前に出てきた。

「あなたは、本当に料理長に相応しいのですか?」

「え……」

「我々は、王宮で長年働いてきた料理人です」

「それなのに、村から来たばかりの若造が料理長だと?」

明らかな敵意だった。

「みんな、やめろ」

止めたのは、一人の老料理人。

「私は、王宮料理長のアンリです」

「アンリさん……」

「確かに、皆の気持ちも分かる。だが、これは国王陛下の命令だ」

「でも、アンリ様……」

「ケント君、気にしないでくれ。彼らも、プロとしての誇りがあるのだ」

「はい……」

「さあ、仕事を始めよう」

こうして、準備が始まった。

でも――雰囲気は最悪だった。


1週間後。

準備は進んでいたが、問題だらけだった。

「このソース、もっと濃厚にしてください」

「はあ?これで十分でしょう」

「いえ、もう少し煮詰めた方が……」

「あんた、何様のつもり?」

料理人たちは、俺の指示を聞いてくれない。

「困ったな……」

リナが心配そうに見ている。

「ケント、大丈夫?」

「ああ……なんとかなるよ」

でも、内心は不安だった。

このままでは、晩餐会は成功しない。

「どうすれば、みんなに認めてもらえるんだろう……」

その夜、俺は一人で厨房に残って練習していた。

「メニューは決めた。あとは、完璧に仕上げるだけ……」

「まだ、やっているのか」

振り向くと、アンリさんが立っていた。

「アンリさん……」

「お前、真面目だな」

「みんなが認めてくれないので……自分で練習するしかなくて」

「そうか」

アンリさんは、俺の隣に立った。

「ケント君、一つ聞いていいか」

「はい」

「お前は、なぜ料理を作る?」

「……」

俺は少し考えた。

「食べた人を、幸せにしたいからです」

「幸せに……か」

「はい。笑顔になってもらいたい。それが、俺の料理の原点です」

アンリさんは、優しく笑った。

「そうか……良い答えだ」

「……」

「実は、若い頃の私も同じだった」

アンリさんは遠い目をした。

「料理人になりたての頃、私も周りに認めてもらえなかった」

「そうなんですか……」

「ああ。でも、諦めずに料理を作り続けた」

「そして、ある日――私の料理を食べた人が、涙を流して喜んでくれた」

アンリさんは続けた。

「その時、分かったんだ。料理人の仕事は、技術を見せびらかすことじゃない」

「……」

「人を幸せにすることだと」

「アンリさん……」

「お前の料理には、それがある。だから、自信を持て」

アンリさんの言葉が、心に響いた。

「ありがとうございます」

「さあ、明日からも頑張ろう」

「はい!」


翌日。

俺は、料理人たちを集めた。

「みなさん、聞いてください」

「……」

「俺は、確かに経験も浅いし、技術もみなさんには及びません」

「……」

「でも、一つだけ自信があることがあります」

俺は真っ直ぐに、全員を見た。

「それは、『お客様を幸せにしたい』という想いです」

「……」

「今回の晩餐会、各国の王族が集まります」

「彼らは、きっと毎日豪華な料理を食べているでしょう」

「でも――心から満足しているでしょうか?」

料理人たちが、少し表情を変えた。

「俺たちが作るのは、ただ豪華な料理じゃない」

「心を込めた、温かい料理です」

「それが、王国の誇りになると信じています」

「……」

「だから、力を貸してください。一緒に、最高の晩餐会を作りましょう」

俺は深く、頭を下げた。

しばらく、沈黙が続いた。

そして――

「……分かった」

一人の料理人が言った。

「あんたの想い、伝わったよ」

「俺も協力する」

「私も」

次々と、料理人たちが歩み寄ってくれた。

「みなさん……!」

「ただし、手は抜かないからな」

「ああ、俺たちもプロだ。最高の料理を作る」

「お願いします!」

こうして、ようやくチームがまとまった。

建国祭まで、あと3週間。

本当の準備が、今から始まる。


ーー第18話に続く

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