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第14話:想いを込めて

翌朝。

俺は一人、街を歩いていた。

明日の料理祭まで、あと数時間。

でも――まだ決められていない。

「メインディッシュ、何を作ろう……」

考えれば考えるほど、分からなくなる。

『調理の祝福』を活かした料理?

それとも、技術を見せつける料理?

「違う……」

立ち止まる。

「俺は、何のために料理を作ってるんだ?」

原点に立ち返る。

前世で、ブラック企業で疲弊していた俺。

この世界に来て、村で小さなカフェを開いた。

お客さんが笑顔になる。

「美味しい」と言ってくれる。

それが、何より嬉しかった。

「そうだ……」

答えが見えた。

俺は、誰かを幸せにするために料理を作ってる。

技術を見せびらかすためじゃない。

スキルを自慢するためでもない。

「食べた人が笑顔になる。それが俺の料理だ」

ならば――

「明日は、あの料理を作ろう」

心が決まった。


料理祭、第2ラウンド。

「それでは、第2ラウンドを開始する!」

「テーマは『メインディッシュ』!制限時間は3時間!」

「開始!」

ゴングが鳴る。

俺は迷わず、食材を選んだ。

「作るのは、ハンバーグだ」

そう――前世で、母親から教わった、俺の十八番。

村でレイナさんに出した、あのハンバーグ。

「シンプルだけど、これが俺の料理だ」

牛肉と豚肉を挽いて、玉ねぎを炒める。

パン粉と牛乳を混ぜて、つなぎにする。

塩、胡椒、ナツメグで味付け。

そして――丁寧にこねる。

「母さん、教えてくれてありがとう」

前世の記憶が蘇る。

小学生の頃、母親と一緒に作ったハンバーグ。

「健太、料理はね、愛情が一番大事なのよ」

母親の言葉。

「食べる人のことを想って作る。それが美味しさの秘訣」

「……そうだ」

俺の料理には、想いがある。

食べる人の笑顔を思い浮かべながら作る。

それが、俺の料理だ。

ハンバーグを成形して、フライパンで焼く。

じっくり、丁寧に。

焦げ目をつけて、中まで火を通す。

そして――デミグラスソースを作る。

赤ワイン、トマト、玉ねぎ、バター。

じっくり煮込んで、濃厚なソースに仕上げる。

「よし……」

ハンバーグを皿に盛り付けて、ソースをかける。

付け合わせは、ニンジンのグラッセとマッシュポテト。

そして――最後に『調理の祝福』を込める。

すると――

【調理の祝福】が大きく発動しました!

料理に『体力回復・大』『心の癒し・大』『幸福感・中』『思い出・微』が付与されました。

「思い出……?」

初めて見る効果だ。

でも――なんとなく分かる。

この料理には、俺の想い出が込められている。

母との記憶。

村での日々。

大切な人たちとの時間。

「これが、俺の料理だ」

完成した。


審査の時間。

今回も、順番に審査員が試食していく。

ジャックさんの料理は、完璧なステーキ。

エリーズさんの料理は、繊細な魚料理。

マルコさんの料理は、豪華な子羊のロースト。

そして――レオンさんの料理。

「鴨のコンフィ、オレンジソース添えです」

完璧な盛り付け。

芸術作品のような美しさ。

審査員たちは、一口食べた瞬間、言葉を失った。

「これは……天国の味だ……」

「こんな料理、初めて……」

「完璧だ。完璧すぎる……」

レオンさんの料理は、圧倒的だった。

「さすが、宮廷料理人……」

そして――俺の番。

「ハンバーグ、デミグラスソース添えです」

「ハンバーグ……?」

審査員たちが戸惑った表情を見せた。

「メインディッシュで、ハンバーグか……」

「庶民的すぎないか?」

懐疑的な雰囲気。

でも――俺は自信を持って差し出した。

「どうぞ」

審査員たちは、恐る恐るフォークを入れた。

一口。

そして――

「――!!」

全員の目が、見開かれた。

「なんだ、これは……!」

「美味い……美味すぎる……!」

「シンプルなのに、こんなに深い味わいが……!」

「それに――この温かさは……心が、満たされていく……」

一人の審査員が、涙を流し始めた。

「懐かしい……母が作ってくれた料理を思い出す……」

「私もだ……子供の頃の、幸せな記憶が蘇る……」

「これは……ただの料理じゃない……」

第二王子が立ち上がった。

「ケント。これが、お前の料理か」

「はい」

「素晴らしい……技術も、見た目も、他の料理には劣るかもしれない」

「……」

「だが――お前の料理には、『心』がある」

第二王子は微笑んだ。

「料理とは、技術だけではない。食べる人への想いが込められて初めて、本物になる」

「……!」

「お前の料理は、本物だ」

会場が、静まり返った。

そして――大きな拍手が起こった。

「すごい……」

「あのハンバーグ、食べてみたい……」

「俺も泣きそうになった……」

客席からも、称賛の声が上がる。

レオンさんが、こちらを見ていた。

その目は――驚きと、そして尊敬の色を浮かべていた。

「成長したな、ケント君」

小さく、呟いた。


結果発表。

「では、第2ラウンドの結果を発表する」

緊張の瞬間。

「第3位、マルコ!」

「第2位――」

心臓が高鳴る。

「ケント!」

「――!」

また2位だ。

でも――悔しくなかった。

むしろ、誇らしかった。

「そして、第1位は――レオン・ヴァレンティーノ!」

「……」

やはり、レオンさんは強かった。

でも――次は負けない。

「第3ラウンド、デザート部門は明日開催!」

「決勝に進むのは、レオン、ケント、マルコの3名だ!」

「優勝をかけた、最後の戦いが始まる!」

こうして、決勝への切符を手に入れた。

あと一歩だ。


ーー第15話に続く

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