第13話:ライバルとの出会い
第1ラウンド終了後。
控室に戻ると、ジャックさんが話しかけてきた。
「ケント、やるじゃないか」
「ありがとうございます」
「だが、次はこうはいかない。メインディッシュは、料理人の真価が問われる」
「……はい」
「お前の『調理の祝福』、確かに強力だ。だが、それだけじゃ勝てない」
ジャックさんは真剣な目で言った。
「料理は、技術と心の両方が必要だ。忘れるな」
「はい、肝に銘じます」
ジャックさんは去っていった。
「厳しいけど、いい人だな……」
「ケントさん」
声をかけてきたのは、エリーズさん。
「第2位、おめでとうございます」
「ありがとうございます。エリーズさんも」
「ふふ、お互い頑張りましょうね」
「はい」
「ところで――」
エリーズさんは声を落とした。
「レオンさん、気をつけた方がいいですよ」
「え?」
「あの人、ただ者じゃないんです」
エリーズさんは続けた。
「レオン・ヴァレンティーノ。隣国ロゼッタ王国の宮廷料理人。『味覚の魔術師』と呼ばれる天才です」
「味覚の魔術師……」
「あの人の料理を食べた人は、みんな虜になるんです。魔法のような料理を作ると言われています」
「そんな人が……」
「ええ。今年の優勝候補筆頭です」
エリーズさんは心配そうに言った。
「ケントさんの料理も素晴らしいですが、レオンさんは格が違います。油断しないでくださいね」
「ありがとうございます。気をつけます」
その時――
「君が、ケント君か」
振り向くと、レオンさんが立っていた。
「あ、はい……」
「初めまして。レオン・ヴァレンティーノだ」
レオンさんは優雅に一礼した。
「君の料理、素晴らしかったよ」
「ありがとうございます……」
「『調理の祝福』。興味深いスキルだね」
「はい……」
「料理に魔法効果を付与する。まるで錬金術のようだ」
レオンさんは微笑んだ。
「だが、料理の本質は、効果ではない」
「……」
「料理とは、作り手の想いを届けること。食べる人の心に響くこと」
「それは……」
「君はまだ若い。これから、本当の料理を学ぶといい」
そう言って、レオンさんは去っていった。
「本当の料理……か」
少し、悔しかった。
でも――同時に、学ぶことも多いと感じた。
その夜、アルトリア家の屋敷。
「ケント、お疲れ様!」
セシリアさんが豪華な夕食を用意してくれていた。
「すごい……こんなに……」
「祝勝会よ!第2位通過、おめでとう!」
「ありがとうございます」
リナも嬉しそうだ。
「ケント、すごかったよ!審査員さんたち、みんなびっくりしてた!」
「まだ第1ラウンドだけどね」
「でも、すごいよ!」
レイナさんも笑顔だ。
「お前の料理、俺も誇らしかったぞ」
「ありがとうございます、みんな」
温かい雰囲気の中、食事を楽しんだ。
でも――心の片隅に、レオンさんの言葉が引っかかっていた。
『料理の本質は、効果ではない』
『作り手の想いを届けること』
「俺の料理に、想いはあるのか……?」
「ケント、どうしたの?」
リナが心配そうに聞いてきた。
「ん?ああ、何でもない」
「本当?」
「ああ」
笑顔で答えたが――内心は複雑だった。
俺の『調理の祝福』は、確かに強力だ。
でも、それは俺の実力なのか?
スキルに頼っているだけじゃないのか?
「明日のメインディッシュ……何を作ろう」
その答えを、まだ見つけられていなかった。
ーー第14話に続く




