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第12話:料理祭開幕!前菜勝負

翌朝。

美食宮殿の厨房は、緊張感に包まれていた。

参加者は全部で15名。

それぞれが自分の調理台に立ち、開始の合図を待っている。

「ケント、緊張してる?」

リナが客席から声をかけてくれた。

「少しね。でも、大丈夫」

「頑張って!私、応援してるから!」

「ありがとう」

観客席には、セシリアさんやレイナさんの姿も見える。

そして――審査員席には、王族や貴族たちが並んでいた。

中央には、王国の第二王子が座っている。

「緊張するな……」

「では、これより第50回王国料理祭、第1ラウンドを開始する!」

運営委員長の声が響く。

「テーマは『前菜』!制限時間は2時間!」

「調理に使用できる食材は、すべて厨房に用意されている!」

「それでは――開始!」

ゴングが鳴り響いた。

一斉に、料理人たちが動き出す。

俺も食材倉庫へ向かった。

「さて、何を作ろう……」

前菜といえば、軽くて、見た目が美しくて、食欲をそそるもの。

「よし、これで行こう」

俺は食材を選んで、調理台に戻った。


作るのは『カルパッチョ』。

生の魚を薄く切って、オリーブオイルとレモンで味付けする、イタリア料理だ。

この世界にはまだない料理だが、食材は揃っている。

「まずは魚を捌く」

新鮮な白身魚を選んで、丁寧に三枚におろす。

前世で母親に教わった包丁技術が、自然と手に戻ってくる。

「薄く、均等に……」

魚を薄くスライスしていく。

透けるくらい薄く、でも形は崩さない。

次に、ソースを作る。

オリーブオイル、レモン汁、塩、胡椒。

シンプルだが、素材の味を引き立てる。

そして――皿に盛り付ける。

魚を円形に並べ、中央にサラダを置く。

ソースをかけて、ハーブで飾る。

「よし……」

最後に、『調理の祝福』を込める。

すると――

【調理の祝福】が発動しました。

料理に『体力回復・小』『心の癒し・中』『美味覚醒・小』が付与されました。

「美味覚醒……?」

また新しい効果だ。

多分、味覚が敏感になる効果だろう。

「完成!」

時計を見ると、まだ1時間半残っている。

他の料理人たちを見ると、まだ調理中だ。

「早すぎたかな……いや、これでいい」

シンプルな料理ほど、素材と技術が問われる。

俺は自分の料理に自信を持っていた。


2時間後。

「時間です!全員、調理を終了してください!」

ゴングが鳴る。

全員の料理が出揃った。

審査員たちが順番に試食していく。

まずはマルコの料理。

「フォアグラのテリーヌです」

豪華な料理だ。

審査員たちは一口食べて、頷いている。

「うむ、濃厚で美味だ」

次はエリーズの料理。

「季節の野菜のテリーヌです」

色とりどりの野菜が、美しく層になっている。

「見た目も美しい。味も繊細だ」

そしてジャックの料理。

「スモークサーモンのムース仕立てです」

さすが王都のトップシェフ。

完璧な盛り付けだ。

「素晴らしい。技術の高さが光る」

順番に審査が進み――ついに俺の番が来た。

「次、ケント」

「はい」

料理を審査員席に運ぶ。

「白身魚のカルパッチョです」

「カル……パッチョ?」

第二王子が首を傾げた。

「聞いたことのない料理だな」

「はい。生の魚を使った、冷製の前菜です」

「生魚か……珍しいな」

審査員たちは半信半疑の様子で、フォークを手に取った。

一口。

「――!」

全員の表情が変わった。

「これは……なんだ、この爽やかさ!」

「魚の甘みが、口の中で広がる!」

「レモンとオリーブオイルの調和が完璧だ!」

「そして――この感覚は……心が、落ち着いていく……」

審査員たちは次々と完食した。

「信じられない……こんなシンプルな料理で、ここまでの味を……」

第二王子が俺を見た。

「ケント、だったか。お前、どこで修行した?」

「いえ、特に……独学です」

「独学だと……?」

会場がざわめいた。

「この技術が独学だと?信じられん」

「いや、待て。この料理には何か特別な効果がある」

一人の審査員が言った。

「食べた後、体が軽くなった。それに、心が穏やかになった」

「私もだ。まるで、疲れが吹き飛んだようだ」

「これは……回復魔法のような効果か?」

ざわざわと、会場が騒がしくなる。

「静粛に」

第二王子が手を挙げた。

「ケント。お前の料理には、特殊な力があるのか?」

「はい。『調理の祝福』というスキルです」

「調理の祝福……なるほど。それで料理ギルドの特別枠か」

第二王子は微笑んだ。

「面白い。お前の料理、気に入ったぞ」

「ありがとうございます」

こうして、全員の審査が終わった。


結果発表。

「では、第1ラウンドの結果を発表する」

運営委員長が立ち上がった。

「第2ラウンドへ進出するのは、以下の5名だ」

会場が静まり返る。

「第5位、マルコ!」

「やった……!」

マルコが安堵の表情を見せた。

「第4位、エリーズ!」

「ありがとうございます!」

エリーズさんが嬉しそうに頭を下げた。

「第3位、ジャック!」

「……当然だ」

ジャックさんは冷静だ。

「第2位――」

俺の心臓が激しく鳴る。

「ケント!」

「――!」

やった。

通過した。

「やったねケント!」

リナが客席で飛び跳ねている。

「素晴らしいわ、ケント!」

セシリアさんも拍手してくれた。

「そして、第1位は――」

「レオン・ヴァレンティーノ!」

「……」

名前を呼ばれた男性が、静かに立ち上がった。

30代くらいだろうか。

落ち着いた雰囲気の、紳士的な男性だ。

「レオンさん……」

エリーズさんが小声で言った。

「あの人、隣国の宮廷料理人よ。王族専属の」

「宮廷料理人……!」

つまり、国のトップシェフということか。

「強敵だな……」

でも、負けるわけにはいかない。

「第2ラウンドは、明日開催される!」

「テーマは『メインディッシュ』!制限時間は3時間!」

「では、本日はここまで。皆、お疲れ様!」

こうして、第1ラウンドが終了した。


ーー第13話に続く

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