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第10話:王都への旅立ち

村を出発する日が来た。

「ケント、本当に行くのか……」

村長さんが寂しそうに言った。

「はい。でも、必ず戻ってきます」

「そうか……気をつけてな」

村人たちが、見送りに集まってくれた。

「店長、頑張ってこいよ!」

「王都で有名になったら、俺たちのこと忘れるなよ!」

「リナちゃんも、元気でね!」

「うん……!」

リナは涙を拭きながら、手を振った。

トムさんが前に出てきた。

「ケント、これ、受け取ってくれ」

差し出されたのは、小さな袋。

「これは……」

「村のみんなで集めた、餞別だ。少ないけど、王都での足しにしてくれ」

「トムさん……みんな……」

胸が熱くなった。

「ありがとうございます。必ず、恩返しします」

「恩返しなんていらねえよ。お前はもう、十分村のために尽くしてくれた」

「……」

「だから、王都で思いっきり暴れてこい!」

「はい!」

馬車に乗り込む。

御者はレイナさん。料理ギルドが手配してくれた護衛だ。

「さあ、出発するぞ」

馬車が動き出す。

村が、だんだん小さくなっていく。

「……また来るからね」

リナが、小さく呟いた。

「ああ、必ず」

俺も心の中で、村との約束を新たにした。


王都まで、馬車で5日の旅。

初日の夜、森の中で野営することになった。

「今夜はここで休む」

レイナさんが馬車を止めた。

「俺、夕食作りますね」

「お、助かる。冒険者の飯は不味いからな」

「期待しててください」

持ってきた食材で、シチューを作る。

野菜と肉をたっぷり入れて、じっくり煮込む。

『調理の祝福』が発動――

【調理の祝福】が発動しました。

料理に『体力回復・中』『疲労回復・中』『温もり・小』が付与されました。

「できました」

「おお、いい匂いだ」

3人で囲んで、シチューを食べる。

「うまい……やっぱりケントの料理は最高だ」

「えへへ、美味しい……」

リナも嬉しそうに食べている。

「なあ、ケント」

レイナさんが話しかけてきた。

「王都では、色んな料理人がいるぞ」

「そうなんですか?」

「ああ。料理祭に出るのは、各地から集まった精鋭だ。みんな、特殊なスキルや技術を持ってる」

「……」

「不安か?」

「少し。俺、ちゃんとやれるかな」

「大丈夫だ」

レイナさんは笑った。

「お前の料理は本物だ。技術がどうとか、スキルがどうとか、そういう問題じゃない」

「本物……」

「お前の料理には、心がこもってる。それが一番大事なんだ」

「レイナさん……」

「だから、自信を持て。お前なら、必ず成功する」

レイナさんの言葉が、背中を押してくれた。

「ありがとうございます」

「礼はいらん。さあ、明日も早いぞ。寝るぞ」

その夜、俺は星空を見上げながら考えた。

王都で、どんな料理人に出会うんだろう。

どんな料理を作ればいいんだろう。

でも――答えは既に出ていた。

『お客さんを笑顔にする料理を作る』

それだけだ。


3日目の昼。

街道を進んでいると、前方に煙が見えた。

「あれは……」

「馬車が襲われてる!」

レイナさんが叫んだ。

「急ぐぞ!」

馬車を走らせると、豪華な馬車が盗賊に囲まれていた。

「金目のものを出せ!」

「やめて!」

馬車の中から、女性の声。

「レイナさん!」

「分かってる!」

レイナさんが飛び降りて、盗賊たちに突っ込んでいく。

「――!」

一瞬だった。

レイナさんの剣が閃き、盗賊たちは全員地面に倒れた。

「さすがBランク……」

「大丈夫か!?」

レイナさんが馬車に声をかける。

扉が開いて、出てきたのは――

「あら……あなたは……」

金髪の少女。

見覚えがある。

「セシリアさん!?」

「ケント!?」

なんと、襲われていたのはセシリアさんだった。

「どうしてあなたがこんなところに……」

「俺たちも王都に向かってるんです」

「そう……偶然ね」

セシリアさんは、ほっとした様子だった。

「助かったわ。護衛が買い出しに行ってる隙を狙われて……」

「大丈夫ですか?怪我は?」

「ええ、大丈夫よ。あなたたちのおかげで」

「よかった……」

「ねえ、ケント」

セシリアさんが提案した。

「よかったら、一緒に王都まで行かない?こっちの馬車の方が快適よ」

「でも……」

「いいじゃないか」

レイナさんが言った。

「どうせ同じ方向だ。それに、セシリア様がいれば、街道も安全だろう」

「そういうことよ。決まりね!」

こうして、俺たちはセシリアさんと合流した。


セシリアさんの馬車は、確かに豪華だった。

内装は絨毯が敷かれ、クッションも柔らかい。

「すごい……」

「これが貴族の馬車か……」

リナも驚いている。

「当然よ。私はアルトリア侯爵家の令嬢なんだから」

セシリアさんは得意げだ。

「それで、ケント。王都では何をするの?」

「料理祭に出場します」

「料理祭!?本当!?」

セシリアさんの目が輝いた。

「ええ。料理ギルドから招待されて」

「素晴らしいわ!私も料理祭、見に行く予定だったの」

「そうなんですか」

「ええ。今年は特別よ。各国の要人も集まるし、優勝者には王家から褒賞が出るらしいわ」

「王家から……」

「だから、絶対に優勝しなさい、ケント」

「頑張ります……」

「期待してるわ」

セシリアさんは微笑んだ。

馬車の中で、セシリアさんは色々と王都の話をしてくれた。

料理祭の規模、参加者たちのこと、王都の名所……

話を聞いていると、だんだんと王都が近づいてくるのが感じられた。

そして――

5日目の夕方。

「見えたぞ!」

レイナさんが叫んだ。

「王都だ!」

馬車の窓から顔を出すと――

そこには、巨大な城壁に囲まれた、壮大な都市があった。

「うわあ……」

「すごい……」

俺もリナも、言葉を失った。

高い塔、立派な建物、行き交う人々。

村とは比べ物にならない、圧倒的な規模。

「ようこそ、王都へ」

セシリアさんが誇らしげに言った。

「ここが、この国の中心。そして、あなたの新たな舞台よ、ケント」

馬車は、ゆっくりと王都の門をくぐった。

石畳の道、立ち並ぶ商店、豪華な馬車……

すべてが新鮮で、刺激的だった。

「さあ、着いたわよ」

馬車が止まったのは、大きな屋敷の前。

「ここは……」

「私の家よ。今日はここに泊まっていって」

「え、でも……」

「遠慮しないで。それに、料理祭まであと3日しかないんでしょ?準備が必要よ」

「……ありがとうございます」

こうして、俺たちは王都での最初の夜を、アルトリア侯爵家の屋敷で過ごすことになった。

新たな戦いが、すぐそこまで迫っていた。


ーー第11話に続く

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