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82 厄介事がやって来た

とりあえず、脅してビビらせた強姦魔誘拐犯二人の後頭部を強めに殴って、意識を刈り取っておいた。


そして、奴らの上着を千切って、それで二人に猿ぐつわをかまし、手足も縛る。


ベッドの上の女が『むーむー』とうめいている。


その顔を覗き込んだ。


怯えた目で俺を見上げている。


「おい、今からその口の布を外してやるから、騒ぐなよ。まだ、こいつらの仲間がいるかもしれないからな。分ったら頷け」


と、言うと女は何度も頷いた。


首の後ろで硬く結ばれていた猿ぐつわを外してやった。


「ふー、苦しかった。ありがとう。あなた小さいのに強いのね」


「小さいは余計だ」


「ごめんなさい。でも助かったわ」


「隣の部屋で糞みたいな事が起きているのが、気に食わなかっただけだ。お前たちのせいで、宿を変わらなきゃならないだろ。迷惑な話だ。後は知らん。何処へ行くなり好きにしろ」


踵を返す。


「待って、待って!」


女が俺の腕を掴む。


「おい、やめろ、俺は今機嫌が悪いんだ。他人に構っている余裕は無いんだよ」


「お願い、助けて!」


「嫌だ」


「なんで?」


「俺とお前は初対面だろ?なんで知らない奴の面倒を見ないといけないんだ?」


「お金をあげるわ。だから、どこか安全な街に着くまで護衛をしてくれない?」


「金に困ってはいない」


腕を振りほどいて自分の部屋に帰る。


自分の布カバン肩にかけていると、女が自分の荷物を抱えてバタバタと俺の部屋に入ってきた。


「おい、いい加減にしろ」


棚の上の鳥を掴んで自分の肩にとまらせた。


「それ、飼ってるの?肩にとまらせて海賊みたいね」


呑気な事を言って来る。


「お前と世間話をする気は無い」


窓を細く開けて、外を覗く。


暗がりの建物の陰に数人の男が潜んでいる。


『遠耳』をその方向に向けて見る。


「遅いな…、何やってんだ」


「まさか、あいつら、命令を忘れて楽しんでるんじゃないだろうな」


「だから、あいつらに行かせるなと言ったんだ」


「仕方ない。我々の顔を誰かに見られるわけにはいかないだろう」


「あいつらは、王都の娼館での役目を終えたら、処分するんだ。最後の楽しみを味あわせてやってもいいんじゃないか?」


「それで、逃げられたらどうする?」


「あの宿に裏口は無い。ここで見張っていれば、逃げられる事は無い」


「ごろつきはあてにならないな」


「そう、ぼやくな。あの、男爵令嬢にたんまり貰ってるだろ。女を売り飛ばした金も俺たちで分けていいって言うんだ。こんなうまい仕事は無いぞ」


「でも、俺たち、は口封じとかされないのか?」


「……大丈夫だろう。俺たちは騎士だ。いきなり騎士が三人も消えたら、さすがに騒ぎになるだろ?」


「でも、あの女だぞ。正直言って俺はあいつが怖い。きれいな顔をして、とんでもない奴だぞあいつは」


「今さら逃げられん。やるしかないんだ」


「そうだな……」


連中の話が聞こえてきた。


これの黒幕は貴族らしい。


ますます、関わり合いになるべきではない。


俺の『傷心旅行』(センチメンタル・ジャーニー)は始まったばかりなのだ。


その出だしから、かき回されてたまるか。


窓をゆっくりと開ける。


窓の外には鉄格子がはまっていた。


「ちっ!」


と舌打ちをする。


この鉄格子は泥棒除けだろう。宿泊客の支払いは全て前金だ。


少し目立つが、入り口から堂々と出るしかない。あいつらは俺の事はマークしていないから、普通に出ても大丈夫だろう。


ただ、こんな夜中に荷物を持って出ると不審に思われるかもしれないが、追いかけてくるほどの事では無いと思う。


問題は……。


「おい。何をしている?」


金髪ドリルヘアーの女が、体をかがめて、俺の腰にしがみついている。


「連れて行ってよお。おねがいよお…」


ぐずぐず泣き出す。


「はあ…」


俺はため息をついた。


王都を離れて、やっとしがらみから離れられると思ったら、早々に変な疫病神にとりつかれてしまった。


(俺ってこういう厄介ごとに巻き込まれる定めなのかなぁ…)


「分かった、その代わり次の町までだぞ。まずはその手を離せ」


「嫌!」


「お前の髪色は目立つんだ。この首飾りを貸してやるから、掛けて見ろ」


「なにこれ?」


女は俺が渡した、魔石付きの首飾りを手に取る。


「あれ、あなた、髪の色が変わってる?」


「髪色を変える魔術具だ」


「その黒い髪…、あなたひょっとして、ヘーデン家の…」


「ちっ!だったら何だ?」


「いえ、この際、あなたが誰でも関係ないわ。さっき助けてくれたし、信じるわよ」


女は首飾りを自分にかけた。


女の髪が明るい赤色に変わった。まるでナコねーちゃんみたいな燃えるような赤い髪色になった。


元の髪が明るい金髪だから、俺の様にくすんだ色にはならないみたいだ。


「これはこれで、目立つな…。仕方ない、この布を頭から被れ」


ミーファ寝具のぼろ布を渡す。


「え、なにこれ?ちょっと臭うわよ、洗って無いでしょ?嫌よ、こんなの被るの」


「いいから死にたくなかったら被れ!ぼんくらが!」


「分かったわよ…、うー…、うぶぶぶぶぶ…。臭い…」


嫌そうにぼろ布を身に纏う。


「次はおんぶだ」


「えっ?誰が?」


「俺がお前をおんぶする。時間が無い。早くしないと、外の連中に怪しまれるぞ」


「潰れない?」


「さっき俺の力は見ていただろう」


「それじゃ、失礼して」


女が俺の背中にしがみつくが、


「いたたたった、コレ痛い」


俺の左右の腰の魔剣ファルカタを指さす。


「………」


俺は無言でファルカタを外して、ヒューリンさんの棚を開いて仕舞った。


「えっ?今、剣、何処に消えたの?」


「うるさいなあ…」


鳥をカバンにしまう。


懐から手巾を出して、自分の頭に巻いて、髪色を隠してから、また女をおんぶした。


「うん、今度は痛くない」


と、呑気な女。


一度女を下ろして、俺は自前の魔石灯の明かりを消してカバンにしまう。


そのまま二人で階段を降りていく。


ドアを壊したお詫びに、部屋に王国銀貨1枚を残しておいた。


階段の下の受付で宿のおばさんが座っていた。


自分と彼女の部屋の鍵を返す。


「隣の部屋の連れが酔ってしまったので、少し酔いざましで歩いてくる」


夜に出かける言い訳をする。


「うーん、もお飲めない…」


と女が下手な演技をした。


おばさんは横目でこちらを見るが特に何も言われなかった。


人影がまばらになった食堂を抜けて、出口のところで、女をおんぶする。


「行くぞ…声を出すなよ」


小声で女に言う。


そして、認識疎外と、瞬歩の魔術具を発動して、一気に外に飛び出した。


「ひゃっ!」


と女が声を出す。


(声を出すなと言ったのに…)


腹が立つ。


2メルス(3メートル)ほど先に一瞬で、移動してそれを連続で5回発動した。


計、10メルス(15メートル)先に短時間に進んだ。


しかし、女が声を出したせいで、俺達の姿は、既に捕捉されてるようだった。


「なっ?」


「あれは誰だ?」


「おかしい。追うぞ。一人は残れ」


と言う声が『遠耳』に聞こえてきた。


魔術具の魔石が切れたので、これ以上『瞬歩』と『認識疎外』の発動が出来ない。


魔石を交換している余裕は無いので、そのまま走る。


女を背負っても、余裕で走れるが、俺は背が低く、脚が短いので、走るのが遅いのだ。


二人の騎士に追われて、段々距離が詰まって来る。


俺は裏路地の細道に飛び込んで道をジグザグに走る。


追手が追跡に戸惑っている間に、どこか隠れる場所を探して、左右を見回しながら走る。


家と家の密集する間から細い水路が始まっていた。


水路は家々の下のトンネルに消えていた。


迷わず水路に飛び込む。膝までの浅い水路だ。


そのまま背丈ほどのトンネルに入り奥に進む。


暗闇で前が見えないが、しばらく明かりは点けられない。


横の壁に手を当てて前に進む。


「うー臭い。臭いよ…」


女が文句を言う。


「黙れ…」


そのままゆっくりと進む。


こんな水路の中に、どんな生き物が隠れているか分からない。


とっさに戦えるように心の準備だけはしておいた。


少し奥で道が二股に分かれている。そこで立ち止まって耳を澄ませる。


追手が水路を後から進んでくる様子はない。


取りあえず安心して、二股を右に折れてから、懐から魔石灯を取り出し、明かりをつける。


「これを持ってろ」


と、女に渡す。


女の身に纏った、ミーファのぼろ布を汚さないように、裾をまくってから女を下に下ろす。


「ああ、臭い…」


また女が文句を言う。


俺はそれを無視し、ミーファのぼろ布を回収して、汚さないように懐に大事にしまう。


隠しから予備の魔石を一つ出して、首の認識疎外のネックレスの魔石を交換しておく。


足のアンクレットの魔石はこの水路を出てから交換することにした。


この、汚水の中に今手を入れたくない。


ヒューリンさんの棚から魔剣ファルカタを一振りだけ取り出して、左の腰に佩く。


二刀流は目立つので、しばらくはこれでいいかと思う。


剣に手を当てて慎重に水路を進む。


『遠耳』で水路の先の音を探りながらゆっくりと水路を歩く。


少し先で何か大きな生き物が蠢くような音が聞こえた。


そこで、水路を左に折れた。


左の水路は少し細く、上り坂になっている。


それを上ると、段々水路の水が浅くなってきて、足首までしか水が無くなる。


不意にトンネルが終わり、視界が開けた。


外に出た。家々の間のどぶ川の様な屋外の水路に出た。


横の1メルス(1.5メートル)ほどの石垣をよじ登り脇道に上がる。


辺りを見回す。


戸締りした民家が並ぶだけだ。


人に見られた様子はない。


俺はほっとして、一つため息をついた。


「ねえ、手を貸して」


水路の下から女が言う。


俺は無言でファルカタの鞘の先を差し出した。


女がそれを両手で掴むのを確認してから、一気に上に引き上げた。


「ああ、臭い」


と女がまた言う。


ほんとに、臭いに煩い女だ。


「さて、これからどうするか…」


独り言を言う。


「何か乗り物を拾いましょう」


と女。


「こんな時間に乗り物が拾えるわけないだろ。常識のない奴め」


「それなら、お風呂に入りたい」


と女がぐずる。


「どこかに水場があるはずだ」


細道を先に行く。


道が太くなってきた先に小さな広場があり、そこに水場があった。


水場の淵に置いてある古い木桶で足に水をかけて洗う。


皮の編み込みサンダルが水路のヘドロでドロドロになったのを念入りにきれいにする。


それから足のアンクレットの魔石を交換した。


女も俺に続いて足を洗っていた。


「宿に泊まるのは危険だ。これから野営をするぞ」


と宣言した。


「ええ、分かったわ」


意外に女は気軽に了承した。


「野営は割と好きなの。領地に居る時はよく森に遊びに出かけたわ」


と言う。


俺は道を人気のまばらな方へ進む。しばらく歩くと、家々の間に小高い丘があるのが見えた。


その小さな丘には小道があり、上に続いている。


それを上がって行くと、丘の上には小さな祠の様な神殿があった。


石造りの神殿の中には女神の石像があった。


豊穣と多産と朝日を司る地母神『ルーサ・マ―エス』の像だ。


右腕に赤子を抱き、左手に穀物の穂を一房持ち、頭の後ろに太陽の後光を背負っている。


ミーファの祖父がこの女神の神官をしていたことを思い出した。


民間信仰で人気のある女神だ。


カバンから鳥を出し、女神像の肩にとまれせた。


その像の横の開いているスペースに腰かけ、壁にもたれる。


「少し寝ておけ。三時間ほど寝たら、出発するぞ」


と言い、目を閉じる。


「ねえ、少し話さない?」


「……」


「いいわ。私が勝手に話すから」


「……」


「私、実は侯爵家の一人娘なの。名前は…」


「いい、言うな。名を聞く必要は無い。俺たちは他人だ。俺も事情がある。これ以上面倒事はごめんなんだ」


と言ったものの、俺には何となくこの女の正体に予想がついていた。


ユーム公爵家に狙われていて、男爵家令嬢が拉致の為に騎士を動かしている。


最近王都の舞踏会で、侯爵家の令嬢がユーム公爵家の嫡男との婚約を破棄された話は有名だ。


ミーファの事があるので、俺も貴族関係の情報や噂はいつも気にしていたのだ。


殺すのでなく王都の娼館に売るというあたり、相手の誇りを踏みにじることが目的なのだろう。


この女は自分を侯爵家の一人娘と言った。婚約を破棄された本人だ。


だがそれが何だ。女同士の痴情のもつれなど俺の知ったことではない。貴族同士の争いなど糞喰らえだ。酷い目に会うのが見過ごせなかったので助けたが、慣れ合う気は無い。


もう、貴族にかかわるのはうんざりだ。


「分かったわ。じゃあ、偽名ならいいでしょ。私の偽名は、エイコ。十八歳のエイコよ。この偽名は今初めてああなたにだけ教えたわ。変わった名前でしょ。貴族らしくない名前よね」


(ん?エイコ?日本人みたいな名前だな。しかし、まさかな…)


「さっきは助けてくれて本当にありがとう。あなたみたいな子供があんなに強いなんて。驚いたわ。で、私はあなたを何て呼べばいいの?」


「俺は、そうだな、『ガイ』だ」


と言うと女は『ぷっ』と吹き出した。


「あんまり偽名になってないわよ」


「今更だろ。この髪を見られているんだ」


「ああ、ごめんなさいね。これ返すわ」


女……エイコが髪色変化の魔術具の首飾りを外して、俺に渡す。


俺はそれを受け取り、自分の首に掛ける。


「待ってろ。お前の分をすぐ作ってやる」


と言って、懐から魔術具の指輪を一つ取り出した。


術式を刻んでいない無地の指輪だ。魔術の転写札をいくつか取り出す。


「えーと、これとこれと、これを重ねて、あと、これを足せば色が落ち着くか。上から『魔発粒』をのせてっと…」


俺の手元で指輪が光って、転写札が消え失せる。


「これをつけて見ろ。今度は目立たないと思う」


とそれをエイコに投げ渡す。


「え、いいの?ありがとう」


受け取った彼女は右手の人差し指にはめる。


すぐ彼女の髪色がくすんだ赤に変わる。どうやら色の配分は良かったみたいだ。


「ところで、魔法は使えるのか?」


「ええ、治癒魔法は得意よ」


「あー、そっちか。攻撃魔法は使えないのか?」


「攻撃魔法は使えないの。治す方の才能しかないみたい」


「光属性なら、ホーリー・レイが使えるんじゃないのか?」


「ホーリー・レイ…、王立図書館にある光属性の専門書で読んだ覚えがあるわ。二百年前の伝説の技でしょ。でもそんなの無理よ。歴史の英雄じゃ無いのよ」


「それなら光の盾は?」


「無理」


「他に何が使える?」


「だから、治癒魔法だけだって。私は治癒魔法にだけ特化してるの」


「…駄目だな。役に立たない」


「なんでよ。あなたが怪我したらすぐに直してあげられるわよ」


「いらん。俺に治癒魔法は必要ない」


「不死身でもあるまいし、治癒魔法が必要ない人間なんて居ないわ」


「……」


「例えばほら、その右腕に酷いやけどの跡があるわね。それも治してあげられるわよ」


「何を言っている。やけど跡は厳密には怪我とは言えない。いびつだが、すでに治癒している状態だから、これに治癒魔法をかけても無駄だ。光属性のくせにそんなことも知らないのか?」


「いいわ。口で説明するより、実際に見せた方が早いわ」


エイコは立ち上がって俺の前でしゃがむ。


右手のひらを俺の右腕のやけど跡にあてて、目を閉じる。


彼女の右手の平が金色に輝く。


(なんだ?この光は?治癒魔法でこんな光を発するのを見たことが無い)


右腕のやけど跡が温かくなる。


「済んだわ」


エイコが手を離す。


俺は、自分の右腕を見る。


「これは…」


醜くただれたやけど跡が、跡形もない。


「どういうことだ?」


驚いてエイコの顔を見つめる。


「言ったでしょ」


エイコはドヤ顔で満足そうに微笑む。


「私の治癒魔法は普通と違うのよ」


「こんな治癒魔法使いが居たら、神殿が放っておかないだろ?」


「神殿は知らないわ。知られないように隠していたもの」


「何のために?」


「知られたら、聖女にされて王子と結婚させられるから、わざと無能の振りをしてたの。でも、それをなんとか避けても、今度は公爵家の嫡男と婚約させられて、結局断罪から娼館に売り飛ばされるルートに入っちゃったから、あんまり隠した意味は無かったけどね。シナリオの強制力からは何をしても逃げられないみたい。でも、あなたがそれをあっという間に変えてくれた。あなたって何者?まさか天使様?」


「………」


色々と聞き捨てならないフレーズがエイコの口から飛び出した。


「…お前、まさか、…転生者か?」


「あっ!やっぱり!今わざとこの世界の人の分からない言葉で話してカマをかけたの。あなたも転生者なのね!」


「いや、違う。俺は転生者ではない」


(嘘は言ってない。俺は『転霊者』であって、転生者ではない)


「えー、ホントに?でも転生者の知識はあるのよね?なんで知っているの?」


「俺の師匠が学者で、話を聞いたんだ」


「あー、そうなの?がっかりね。せっかく、日本の話が出来るかと思ったのに」


「日本人なのか?」


「そうよ。前世の名前がエイコなの。漢字で書くと、英語の英に子供の子で『英子』よ」


と言って、英子は俺の顔をじっと見つめる。


また、カマを掛けている。


俺は、『漢字』の下りに知らない顔をした。


「カンジって、なんだ?」


としらばくれる。


「前世の文字の種類の一つ。日本語には漢字とひらがなとカタカナがあるの。で、あなた、本当に何者なの?」


顔を至近距離に寄せて、俺を見つめる。


「俺か?俺は、もちろん天使なんかじゃない。むしろ、邪悪な方面に親和性がある存在だ。知らないか?俺が王都で『黒の魔人』と呼ばれているのを」


「えー、『子供殺しの悪魔』よね?『黒の魔人』って何?」


「ちっ!ちっ!それは古いんだよ!お前はエルフの学者や、ごろつきよりも情報更新がクソ遅いんだな!もおいい!あっち行け。お前なんか嫌いだ!」


英子に背を向ける。


「何を怒っているのよ。意味わかんない」


英子も俺のから立ち上がり、女神像の反対側に行き、うずくまった。


「今日は疲れたわ。もう寝るね」


と言って、すぐに寝息を立て始める。


本当に疲れていたようだ。


俺も、精神が疲弊していて、これ以上起きているのが限界だった。


目を閉じてすぐに、眠りの底に意識が沈んで行った。

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