54 秘密の実験室
「さて、それではこちらに参れ。まずはわしのかわいいオートマタ達を見せてやろう」
と大広間から延びる通路の一つに歩を進める。
その先にも広い部屋があり、中に入った俺はわが目を疑った。
そこには何百もの兵士の姿をした人形たちが物言わず整然と整列をしていた。
「これは…?」
「わしのかわいい子供たちじゃ」
「動くんですか?」
「うーむ、動くと言えば動く。しかし、不完全じゃ。これも失われた英知の一つなのじゃ」
「この人形は強いんですか?」
「ちゃんと動けば一体で熟練の兵士十人分の働きをする。ちゃんと動けばな」
「今は動かないんですね」
「うむ、意識転写の魔術で、遠隔操作をすることは出来るが、それだと、一体しか動かせん。それに、感覚が今自分とオートマタの二つ分を同時に共有してしまうので混乱しないために本体の動きを止める必要があり、これに憑依している間は、本体が無防備になってしまう。
かつての伝承を読むと、操作者一人で、100体ものオートマタを同時に操作できたという。感覚共有してそんな多くのオートマタを動かすのは不可能だ。と言うことはこのオートマタ達がある程度は自立思考して各自の判断で動いたという事になる。操作者は全体を統括して大きな指示を出すだけで事足りたはずなのだ」
説明が専門的な話になるとエルフのヒューリンさんの話し方が途端に『ロリババア』で無くなって、普通の喋り方になる。
あの『のじゃ』とかいうのは、ただのキャラ付けなのかもしれない。
よく考えたら不自然なしゃべり方だなと思う。
まあ、今それを指摘しても怒らせるだけだろうから、とりあえずは黙っておく。
「では、あなたの目的と言うのはこのオートマタの軍隊を復活させることなのですか?」
「違うわ。これは手段の一つじゃ。たとえこれが復活できたとしても、今の馬鹿な人間どもにこれを渡す気は無い。わしは人間の政治には二度と関わらんと誓いを立てておる。わしの目的はもっと個人的な事じゃ。お主が使える人間で、わしの信頼を得られたとしたら、わしの目的の一部を話して聞かせる日もあるやもしれん。今のお主に話せることは何もない」
「でも、初対面の私をこんな場所に連れてきてくれたというのは、それなりの期待をしてくれているという事ですよね」
「ああ、転生者はこの世界の理の外にある存在じゃからな。転生者のあるところ必ず歴史の転換が起こる。なぜ転生者がこの世界に現れるのかは謎じゃが、きっと何かの理由があるはずじゃ。
『ジン』がお主に言葉を授けたことからも、お主には何かの役割があるのやもしれん。それがいい役割なのか悪い役割なのかをわしは見極めねばならん。そしてお主がこの世界に仇なす者なのだとしたら、その時はこのわしが自らの手で始末する。お主はわしに始末されないようにその言動と行いにせいぜい気を付けよ」
とヒューリンさんは冷たい眼差しで上から俺を見下ろした。
こうしてすごまれると威圧感と迫力があって緊張するが、同時に彼女は凄い美人なので、睨まれることになんだか分からない『お得感』もある。
鈴木春馬氏がびんたされてお礼を言った気持ちが少し分かり始めてしまう。
変な性癖に目覚めてしまいそうな自分が怖い。
元々『陰キャ』は『虐げられる』ことに親和性があるのかもしれない。ヘドロの様な不細工に虐げられるのは死んでも嫌だが、このお姉さまになら踏まれてもいいかな、と思ってしまえるから不思議だ。
そんなことを考えていたら、脳裏にミーファの顔が浮かんだ。そのミーファは『またですかガルゼイ様』と俺に失望してげんなりしていた。
「何を呆けておる。わしはまだお主の味方になったわけでは無いぞ。お主を見極めるのはこれからじゃ」
と目の前のエルフさんは俺の表情の意味を誤解してくれた。
この内心の想いを知られたら、鈴木春馬氏のように変態認定されてしまう。
この感覚はこれ以上発展させない方が良さそうなので、心の底に封印しておこう。
「それで、これからいくつかの実験をしようかの。こちらへ来い」
とヒューリンさんに促されて、いろいろな機材の並んだ大理石の様な広い作業台の側に立つ。
「まず、これに触れて見よ」
テーブルの一角のトレイに並べられた小さな球状の者を指し示す。
それは直径5センチくらいの水晶の珠のような物だった。
その水晶の様な透明の中心部、銀色で1センチくらいの金属の様ないびつな塊がある。
「これは?」
と触る前に一応確認する。
「これはオートマタの核じゃ。とは言っても、まだ核になり切っていない出来損ないじゃがな。この中央にある金属はわしが錬金術で錬成した物で、巷では神銀と呼ばれておる。これ一つで王都の中心に家が建つぞ」
「うっそー?」
こんなもので家が建つとはとても信じられない。
「信じぬか?ふん、まあいいわ。これで目の色を変えられても困るでな。言っておくが、これを盗んで売ろうなどと思うなよ。市井の俗人にその価値は分からんからな。売っても半銀貨一枚くらいにしかならんぞ」
「知る人ぞ知るというやつですか」
「これ一つで莫大なマナを蓄えることができるので、魔導師や、魔術師、錬金術師達は皆欲しがる。競売に出せば、いくらの値が付くか分からん。ただし競売に出すには出品者の身元も調べられる。盗品を競売に掛けられてら困るのでな」
そんなレアアイテムが、長編30㎝くらいのトレイの中になん十個も無造作に転がっている。
「これにマナをためてオートマタを動かすのですね」
「いや違う」
とヒューリンさんはにべもなく否定する。
「マナではだめじゃ。魔法を発動するにはいいが、オートマタには使えん。オートマタを動かすには『ジン』が要るのじゃ。しかし、この『ジン』を集めるのが一苦労でな。ジンはどこにでもあるがまた、どこにもない存在と言われるだけあって、人工的に蓄えることがほぼ不可能とされてきた。じゃが、太古の昔には『ジン』を集めて利用する技術が確立されていたようなのじゃ。
そして、わしはこのオートマタの核に注目をした。この核に使われている金属を100年かけて研究し、その再現に成功した。ただ、核は再現できたが、動力源となる『ジン』の充填方法が分からん。今使っているオートマタは過去に『ジン』充填されたものの備蓄を使って動かしている。なので、今ある、充填済みの核を使い切ったら、このオートマタ達は全く動かなくなってしまうのじゃ」
「そのやり方について、は全く分からないのですか?」
「いや、使い切った核を放置しておくと自然に『ジン』が集まって満たされてくる。しかし、自然の充填を待っていると、時間がかかりすぎるのじゃ。それではとても使い物にならん」
「この小さな核一つ満タンになるのにどのくらい時間がかかるのでしょうか?」
「一つで150年ほどじゃ」
「それはまた…」
「うむ、よって、エルフ族が使うならまだしも、人族では使い物にならん」
「一度満充填するとどのくらいの時間オートマタが動くのですか?」
「オートマタの大きさにもよるが、人型で約1年くらいじゃな。お主の憑依した小型の鳥型なら酷使しても2年は使える」
「それでも、150年時間をかけて、たった2年ですか…。それではとても実用化に耐えられませんね」
「そうじゃろ。よって今は人型をほぼ稼働させておらん」
「あの、魔術具店にあった老婆のオートマタは?」
「あれは、わしが実験的に作ったものじゃ。機能を限定しているので、あまりジンを使わん。そのぶん簡単な動きしかできんし、戦闘には役に立たん。店番代わりに置いてあるものじゃ。あんなものでも来客の対応くらいはできるのでな」
「あの店に来客があるのですか?」
「わしが呼んだ者だけじゃ、よって、余計な詮索はしないように言い含めてある。お主のように勝手に入ってきたものは初めてじゃ」
「それは申し訳の無いことです」
「まあよい。お主がわしの店にたどり着いたのも『ジン』の導きやもしれん。これで、わしの研究が少し進み、悲願の達成も近づくといいのじゃがな…。まあ、楽観視はしておらん。今までの失望が長すぎたのでな。簡単にぬか喜びは出来ん」
「それで、実験とは何をすればいいのでしょうか?」
「うむ、まず、ここにお主の先ほど憑依した、鳥の核がある。これにもう一度手を触れて見よ」
と言うヒューリンさんの左目が金色に輝き、俺の全身が薄い光のベールに包まれた。
「これは?」
「ジンとマナの動きを観測する魔法じゃ。わしの魔眼とつないで実験の情報を記録できるようにしておる」
「魔眼!?」
「なんじゃ、いちいちうるさいぞ!」
「その魔眼は普段は眼帯などで隠したりしないのですか?」
と俺はハアハアしながら尋ねた。
「ああ、そういうのは要らん。それは『中二病』というやつじゃろう。あのスズキハルマの馬鹿も、黒い眼帯を持って来て、『これを付けてください』とハアハアしていたので、目の前で燃やしてやったわ」
「そうですか…」
と俺はがっかりして俯いた。
「それ、はよ、この核を持て」
と学者エルフさんがせっつく。
俺は恐る恐るその核に触れる。
何も起こらない。やはり、あの時一回で、『ひっかかり』は失われたようだ。
「ふむ、何も起こらぬか。では次にこちらの核に触れて見よ。これはまだ『ジン』が残っているものだ。ただし、もうすぐ使い切ってしまうほど少ししか『ジン』が残っていないので、お主への影響も少ないじゃろう。安心して触れよ」
と言う。
言われてその核を人差し指と親指の二指でつまむ。
指先にチリチリとわずかな感覚がある。
そしてすぐにその感覚は失われた。
「それをこの計器に入れよ」
と壺状の柔らかい曲線を持つ機械の上の穴に核を入れる。
その計器の側面で赤い光が点灯した。
「今ので『ジン』が失われた。という事はお主が今の一瞬でこの核の『ジン』を吸収したという事じゃ。とするとお主の体を治す力の源は『ジン』であるという事じゃな。これは大きな発見じゃ」
とエルフさんが興奮した様子だ。
「今、お主の指先から『ジン』がお主の体に流れていく経路が見えた。『ジン』二つの経路を辿っておった。その一つは心臓で、もう一つは下腹部の中心辺りじゃ。古来の武術や、仙道には『ジン』を練って下腹部に蓄える呼吸法があるという言い伝えがある。これは、限られた達人にしか出来ないし、理屈が解明されてもおらんので、あくまで伝承の域を出ない。心臓の方は聞いたことが無いが、お主の黒衣の呪いと関係があるのかもしれん」
うげ、あの爺さん俺が吸収したエネルギーを体内で横取りしていやがるのか?くっそ、油断も隙も無いな。
「うーむ、これは実に面白い。今、お主はジンを自らの能力で吸収した。そして、お主は霊を討伐してその力を奪うことで、無限に『ジン』を体内に蓄えられる。という事は、お主が『霊体エネルギー』と呼ぶ『ジン』をお主の体から抽出して、核に移せれば、核の充填問題は解決するという事じゃ」
「はあ…」
この学者エルフさんのギラギラした目を見ていると、なんだか不安になってきた。
この人大丈夫だろうか?
俺、本当にモルモットのように実験されて、ひたすらエネルギーを抜かれる電池代わりにされるのでは?という疑念が意識に横切った。
「もっとも、この充填方法の欠点はお主が死んだら再現できないという事じゃが、お主を実験して原理が解明できれば、お主無しでも、充填が可能になるであろう。お主の存在はその解明が進むまでのつなぎと思っておけば良いのう。実験の回転を上げていけば、お主が死ぬまでには何とかなるじゃろう」
と、ヒューリンさんは鼻息荒く、フンスフンスと興奮している。
「あの、その実験に私が付き合うメリット…利点はどこに?私は基本的に苦しいのが嫌なので、実験もできれば、そこそこのほどほどのテキトーなかんじで、ゆるーくなんとなくやって欲しいのですが…」
「うん?何を今さら。ここまで来て何を言っておる。この実験場に入った時点でお主に拒否権など無いのじゃ。お主は今誰の目の前にいるのか全く理解しておらぬのじゃな。わしはかつての人魔大戦で人族側に立ち、あまたの戦場で魔族を殲滅して回り『殺戮の天女』と恐れられた、真祖エルフじゃぞ。人族に賢者と称えられるわしの言葉に逆らおうなどと言う発想が出てくること自体お主は分かっておらん」
と、このエルフさん何か恐ろし気な事を言い始めた。
これは聞いてはいけないやつでは?
「あの、私は口が堅いのが自慢で、幸い友達も居ないので、私の口からここの情報が洩れることはありません。私は戦闘用の魔術具が欲しかっただけで、かるーい気持ちでヒューリンさんのお店に伺っただけですので、ここは一つ私とは会わなかったという事にして、この一連の流れを、無かったことにはー…」
「出来んな」
と、にべもない。
「今更お主を逃がすと思うか?もし自主的に実験に協力しないなら、お主を拘束して檻に入れて飼わねばならん。お主はそうされるのが望みか?」
「いえ……、自主的に協力する方向でお願いします……」
選択肢は無いようだった。
「うむ、よう言った」
と実験大好きエルフさんは満足げに頷いた。
よう言ったも何も、言わされたんじゃん。
他に何も言えないように、あんた追いこんでんじゃん。
こんな子供に何をさせようというのか。
これ、前世なら児童虐待だよ?
前世では35歳のおっさんだったけど、エルフさんの年齢から考えたら俺なんか児童どころか『幼児』と言ってもいいくらいだよ。
つまり『幼児虐待』だって。
児相が飛んで来るレベルだよ。
いい大人なんだからその辺ちょっとは考えなさいよ!
本当に常識の無いエルフだよ!
といつものように言えない思いを心の中でつぶやいた。
ああ、俺ってなんて負け犬なんだろう。
負け犬強度が異世界で強化されているようだ。
「何じゃ、その不満そうな顔は?」
とヒューリンさんが俺の顔を覗き込む。
「実はエルフの古い魔法に『読心魔法』というものがあってな。その魔法を使うと目の前の人間がどんな失礼な事を考えているのかが、たちどころに分かるのじゃ。その魔法を今使っちゃおうかのー?」
と意地悪エルフが面白そうにつぶやく。
「ぐふうううううー…」
と俺は泣きそうになった。
「はっはっは、嘘じゃ。そんな魔法は無い。心配するな。からかっただけじゃ。お主は冗談の通じん人間じゃのう」
「ひどい、これは虐めですよ。人権侵害じゃないですか?」
と控えめに反論してみる。
「ふざけるな。半人前の子供に人権などあるか。人権などという言い草は、成人まで生き残ってから言え。成人になり、世の役に立つ役目を担うようになって初めて人として意見を聞いてもらえるようになるのじゃ。子供ごときが死のうが生きようが、そんなものわしの知ったことか!」
そーでした。
この世界での子供の社会的地位は無茶苦茶低い。
以前、前近代のヨーロッパには『子供』という概念は存在していなかった、という何かの家族史の研究本を読んだことがある。
だから、うちのバルドや母マリエルがガルゼイを顧みなかったというのも、中世ヨーロッパに似たこの世界なら当たり前の話で、特別な事では無いのだった。まれに庶民の中にはゼスのように子供を大切にする大人も居るが、あれはごく例外で、他の大抵の大人は子供を大してかわいがらないし、簡単に捨てるし、子供の世話も他人任せだ。
それは、この世界での子供の死亡率非常に高いことに原因があるのだろう。子供が生まれても、半数近くが成人せずに亡くなるという話だ。だから、愛情を持ってかわいがってもすぐに死ぬので、生き残って成人した子供にだけを家族として認めるというやり方が主流になっているのかもしれない。
18世紀のフランスの思想家のルソーは自分の実の子供を5人も孤児院に捨てたという話だし、16世紀中頃のフランスの哲学者のモンテーニュは自分の子供を乳幼児の内に2,3人なくしても『ひどく悲しむというほどの事は無かった』という。それにしてもこの『2,3人』という、人数すら特定していないアバウトさは一体何だろうか?
18世紀中ごろまで、西洋ヨーロッパの文化圏の人たちの感覚は、皆大体こんな感じだったという、信じがたい、でも事実らしいお話。
前近代では子供の死亡率の高さもそうだが、女性の死亡率も高い。そのほとんどは出産に関わるものだという。医学の発展しない時代にあっては、出産は女性にとって命懸けのイベントなのだ。
だから、跡継ぎの必要な貴族は第二、第三と、夫人のスペアを必ず用意しておく。
庶民も奥さんが亡くなったらすぐに後妻を貰うし、子供ができなかったら、多産の家からすぐに養子を貰う。ゼスがナコねーちゃんとエルを気軽に拾おうとしたのも、そういう社会的なバックグラウンドがあっての事だったのだろう。
そういえばゼスはいい歳だが、子供が居なかった。深くは尋ねなかったが、あの歳で全く子供が生まれなかったとは考えづらい。恐らくは成人を迎えずに亡くなったのではないかと思う。
ナコねーちゃんとエルの事は、ゆくゆくは自分の養子にするつもりだったのかもしれない。
最近の王都では、治癒魔法の研究が進み、子供と女性の死亡率が低くなっているので、裕福な中間層が子供をかわいがるという文化が生まれつつあるようだが、このエルフさんは古い価値観そのままに生きているのだろう。
これは、反論してもかみ合わない。
ここは、自分がいかに役に立つ人間であるかをアピールしていく以外に身の安全を確保する方法がなさそうだ。
ここは俺も頭を切り替えていかねばならない。
臨機応変と言うやつだ。
前世の派遣社員生活でも同じことをよく経験した。
上役が人によって全然違う事を言うので、誰の言う事を聞いたらいいのか分からなくなることがよくあった。Aさんの言う通りにやっていると、Bさんに叱られる。それでBさんの言う通りにやると、今度はAさんに叱られてしまう。AさんとBさんで話し合って、統一見解を出して欲しいところだが、ABさんは反目していて決して話し合わない。その付けはひたすら派遣社員の俺に来るのだ。
それで、俺はAさんがいるときはAさんのやり方、BさんのいるときはBさんのやり方をするようにして、その場を凌いだものだった。
そういえば進化論の考え方で、生存競争に打ち勝つのは『強い種』ではなく『変化に適応できた種』だという蘊蓄を、何かの本で読んだことがある。
今までの人生で、なるべく自分の意思を殺して変化に適応しようとして生きてきた。
それが上手くいっていたと言える自信は無い。
そして、この異世界で『変化に適応』できる自信は更に無い。
ここでは俺もまた滅びる種の一つなのだと思う。
ただ、進化論の中には『運のいいものが生き残る』という、何とも身も蓋も無い考え方もあるらしい。その考え方を『運者生存』というようで、俺にはこちらが向いているのかなと思う。
いわば神頼みだ。
なるべく自分の努力が要らない方向でお願いしたいと思うのです。
「了解です。分りましたよ。賢者ヒューリン様に実験していただけて、私は幸運という事なのですね?実験動物としてこれから、せいぜい頑張ればいいのですよね?それでいいんでしょ?」
とやけくそになって、開き直った。
「そう、悲観するな。わしはわしに従順なものが好きじゃ。お主がわしの役に立つ以上は、悪いようにはせんぞ」
と言い、意地悪エルフさんはにやりと笑った。