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隣の魔界は立入禁止  作者: 武家樹李
3/4

〜泡沫な正夢〜

 後編(第1部)


 成田徹。この世に流れている情報の中で一番最初に被害に遭ったとされている人物である。

 20XX年11月16日。この日は、実際に起きた部屋のクリーニングいわゆる特殊清掃が行われていた。事件が起きた場所とされているのは玄関だが部屋には土足で上がった形跡が見つかっており、大家さんの希望でその部屋まるごと清掃することになったらしい。この特殊清掃が終わり、貸し出せる状態になったら不動産のサイトなどに掲載され希望者がいれば借りられるようになる。「事故物件」として。


 それから半年が経過したが、入居者は現れないままだった。大家さんは時々、内見時や入居が決まった時の為に掃除しに入るが室内は異様な空気に包まれていた。ここ数ヶ月ほど大家さんしか出入りしていないはずなのに、誰かいたような雰囲気を放っていたからだ。事故物件ということもあり住みたがる人はなかなか見つからないが、それは承知の上だ。

 しかしある日、この部屋の上に住む人から男の人の声や足音が聞こえると大家さんに連絡があった。それは、毎晩23時になると起こるらしい。大家さんは、確かめに行こうとしたがその直前に新しい入居者が決まり確かめに行かなかった。

 やがてその入居者が暮らし始めて1ヶ月が経った頃、僕はそのアパートを見に行っていた。何となく、現在のアパートが気になったからだ。その時、事件があった部屋から女性が出ていくのが見えた。仕事に行くのだろうか。颯爽と駐車場に向かっていった。僕がしていることは良くないことだと思いながらその場を離れた。

 その日の夜、そのアパートの近隣から通報があった。「スーツを着た女性が包丁を持って暴れている」と。警察や救急車が出動したが、被害者は出なかった。その為かマスコミが集まることもなく女性は警察署に連れて行かれた。そのアパートは学校からそんなに遠くない為、寄り道してから帰るようになっていた。

 「このアパートにご用ですか?」

 近隣の住人だろうか。60代くらいの女性が僕に話しかけてきた。

 「いえ、用はないんですけどなんか気になって」

 僕がそう言うと、女性は険しい顔をして

 「あの女性のこと知ってるのかい?」

 僕は少し驚いたが「見かけただけです」と答えた。

 僕は、この時に女性の騒動を知った。

 「なんか、三橋とかいう犯人と似てるのよね」

 女性はそう言った。

 似てると言うのは、「顔」とかではなく「犯行」についてだとすぐに分かった。

 どうやら、あの部屋には三橋の怨念が残り女性に取り憑いてしまったのかもしれない。

 

 その日、僕はまた夢を見た。前に見た夢の続きのようだ。観覧車の下で倒れている僕を見下ろしていた唯は手を差し出した。僕も手を伸ばし、唯の手を掴みながら立ち上がった。唯は何も言わなかった。僕はジェットコースターを指差し唯の方を振り返った時、唯の口が動いていることに気がついた。唯の近くに行くと、微かに声が聞こえた。耳をすますと、

 「金を出せ。さもないとナイフで刺すぞ」「お前、一人暮らしだよな。静かにしろよ」

 唯の口から、男性のような低い声が聞こえてくる。

 「やめろよ」「(物が落ちる音)」「きゃー」「(何度も刺す音)」

 別の声質や人間が出せる音ではない音も聞こえてきた。その時僕は、事件現場の実際の音だと確信した。唯の目は一切変わらないままだ。僕は声を出そうとしたが何故か声が出ない。こうしている間にも唯の口は動き続け、まるでスピーカーのように色々な声や音が聞こえてきていた。僕はどうにか彼女を止めようとしたが、どうすることもできなかった。

 そのうち、視界がぼやけていき僕はある場所にいた…


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