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隣の魔界は立入禁止  作者: 武家樹李
2/4

〜蟠り〜

 中編


 「・・・現在犯人は逃走中です。」

 テレビやネットニュースで速報が入った。

 僕が住む地域の隣町で一人暮らしを狙った強盗殺人事件が起こった。犯人は手にしていたナイフで被害者の左の脇腹辺りを複数回刺し、財布から3万円ほど盗み逃走しているらしい。

僕は通勤時、信号待ちをしている時にスマホでこのニュースを知った。「隣町か、なんだか物騒だな」そう思ったが、あまり実感が湧いていないせいかあまり恐怖心は無かった。いつも通りの道を行く。あと5分ほどで学校に着く。校門の前で自転車を降り、駐輪場へ向かった。下駄箱で上履きに履き替えていると、近くを通りかかった二人組の男子生徒が何か話していた。

 「ほんと怖いよな」

 「どうする、犯人近くにいたら」

 「もしかしたら知り合いだったりして」

 強盗殺人事件の話をしていた。

 「そのうち、警察が捕まえるだろう。」僕はこの程度にしか思っていなかった。

 教室に入る。またしても教室内はその話題で溢れていた。僕は興味ないふりをしながら机に背負っていたリュックを置いた。

 何となくスマホを見ると、また速報が入った。それは被害者と加害者の詳細についての情報だった。被害者は成田徹。30代前半の男性。仕事先の異動により約2年前から一人暮らしをしていたという。インターホンが鳴りドアを開けたらいきなり左の脇腹を刺されたと。加害者は三橋修造。50代の男性。顔写真も掲載されていた。髭を生やし、眉毛は太め、ほうれい線が目立ち、右頬にはうっすら切り傷があった。どこにでも居そうな顔立ちだ。僕は学校が臨時休校になり帰れることを期待していたが学校は通常通り行われた。僕だけじゃなく、他の生徒も同じことを考えていたのかもしれない。


 その日の学校は終わった。

 帰り道、

 「一人暮らしを狙った犯行ということはこれが初めてではないのか?」

まだ世に出ていないだけであの三橋には余罪があると思った。


 その日の夜のこと。再び隣の部屋から騒がしい音が聞こえてきた。前と同じような喧嘩してる声がした。

 「・・・って言ってるでしょ!」

 はっきりとは聞こえないが、誰かと言い争っているのは分かった。時には何かを投げつけるような音も聞こえてくる。

 だが、聞こえてくる声は女性の声だけだった。時々顔を合わせるあの女性だ。

 「もう、やめて!」

 そう聞こえてくると、音はパタリと止んだ。

 僕は、我慢の限界になりクレームを言いに、隣の女性の部屋へ向かうことにした。

 玄関の前に着き、インターホンを押した。だが、出てくる様子はない。ドアをよく見ると、僅かに隙間が空いていた。鍵が掛かっていないようだ。ドアノブを掴み、

 「あの、すみません。』

 声を掛けても返事は無かった。その時部屋の中を覗いた時、僕はあることに驚いた。玄関から廊下に渡りまるで強盗が入ったかのように物が散乱していたのだ。僕は、只事じゃないと思いながらどうしたらいいか分からず玄関のドアを閉め自分の部屋に戻った。

 「一体どうなっているんだ・・・?」

 考えれば考えるほど分からなくなる。呼吸が荒くなっていく。

 「苦しい、苦しいよ」

 意識が遠くなっていった…


 「健、こっちにきなよ」

 誰かが僕を呼ぶ声が聞こえる。目の前には幼馴染の唯がいた。唯は僕に向かって手招きをしている。僕は立ち上がり唯がいる方へ走った。周りには何もない。霧の中にいて、僕と唯しかいないように思えた。このまま彼女のいる方へ走って行ったら、「楽になりそう」そんなことを考えていた。唯も僕の方を振り返りながら走り続ける。しばらくしたら、霧が薄れていき、目の前にメリーゴーランドが現れた。あちこちに目を向けるとジェットコースターや観覧車が見えた。どうやらここは廃墟となった遊園地のようだ。唯は、

 「あれに乗ろうよ」

唯が指さしていたのは、メリーゴーランドだった。

 僕と唯はそれぞれ違う馬のオブジェに跨がるとメリーゴーランドは動き出した。賑やかな音楽が流れ、回る。僕は無意識に目を瞑った。頭の中で音楽に乗せて過去のことを思い出していた。幼少期から、小中学生の頃、つい最近までのことまで。色々な感情が込み上がってくる。自然と涙が溢れた。やがて、音楽が止まりメリーゴーランドは停止した。

 唯はあるものを指さし、

 「次は、あれ」

 観覧車だ。乗り口に向かって歩き始めた。僕の足取りは軽かった。観覧車に近づくと動き出し、タイミングがあったゴンドラに乗り込んだ。ゴンドラ内は沈黙が走っていた。唯は外を眺めている。僕も外を眺めていた。中間地点に辿り着く頃になると強風によりゴンドラが左右に揺れ始めた。観覧車は止まることなく動き続ける。もうすぐで頂上という所で観覧車は停止した。強風の為だと思った。遊園地には僕ら以外誰もいない為、園内アナウンスもない。その時、ゴンドラの扉が開いた。僕は慌てて扉を閉めようと手を伸ばしたが届かない。

 「あともう少しで届く・・!」

 扉のフック部分に指が届きそうになった時、足元に躓き僕は逆さまになり落下していった。落ちながらさっきいたゴンドラの方を見ると唯が僕を見下ろしていた。そのまま地面に着きそうになった時…


 僕は目を覚ました。そこは自分の部屋だった。


 そこには、倒れた時と同じ景色が広がっていた。

 その時、あの一人暮らしを狙った強盗殺人事件を思い出した。三橋は未だ逃走している。「まさか、隣に三橋が来ていた訳じゃないよな」

 きっと隣の女性の彼氏か身内の誰かだろうと思った。

 「気晴らしにコンビニにでも行くか」財布と部屋の鍵を持ち玄関を出た時、隣の女性と遭遇した。

 「あの、先ほどインターホン押したんですけど、」

 そう僕が言うと、

 「ほんとは気づいてますよね、うちがおかしいこと」

 女性はそう言った。僕は返答に困ったが、

 「もし、差し支えなければ教えていただきませんか。あなたの部屋から聞こえてくる音は何なのか。僕はたけるといいます。あなたの名前はなんですか?」

 すると、

 「愛美と言います」

 女性はそう言うと、自分の部屋に入っていった。

 原因を知ることはできなかったが、名前を知ることが出来ただけでも嬉しかった。

 僕は、コンビニに向かって歩き出した。コンビニまで100m程の近さだ。店内に入ると、カップラーメンやコーヒー牛乳、スナック菓子をカゴに入れていく。何気にスマホを持ち、ニュースを開くと速報が入った。あのニュースに関してだった。今度はここから、20キロ離れたアパートで一人暮らしをしていた20代女性が狙われたという内容だった。被害女性は幸いにも全治2週間で命に別状は無かった。近くの防犯カメラの映像からして三橋の犯行と思われるらしい。三橋は逃走しながら犯行を続けているのだろうか。店内を出たら空は夕焼けになっていた。

 家に着き何気にテレビをつけるとワイドショーを独占していた。犯行をやめず事件が明るみになっていく状況はまるで警察やこの世の者を挑発しているようだった。

 そこに、スマホに着信が入った。唯からだ。

 「もしもし、どうしたの?」

 「お兄ちゃんが、お兄ちゃんが!!」

 僕は、普通ではない状況に気づいた。

 「健、来てほしい、、」

 言われた住所に向かうとあるアパートの前に規制線が張られ、パトカーが数台停まっていた。人混みを掻き分け前列に出ると唯がいた。僕は、話を聞かずに何が起きたのか分かった。

 「三橋だ。三橋がやったんだ。」

 唯には兄がいた。社会人2年目24歳。就職した時から一人暮らしをしていたらしい。唯がお兄さんの部屋を訪れた時にはもう腹に包丁が刺さっており、唯は第一発見者として警察から事情聴取されていた。

 「僕も、狙われるかもしれない」

 そんな怖さが襲いかかってきた。後日分かったが、やはり犯人は三橋による犯行であることが分かった。三橋の目的な何なのか。確かに、一人暮らしを狙うとしたら目撃者もほとんどいなく犯人からすれば好都合だろう。しかし、事前に下調べしなければ一人暮らししているということは分からないはずだ。

 「愛美さんに聞こう。愛美さんなら何か知っているかもしれない」

 僕は、愛美さんのインターホンを押した。すると、

 「はい、何でしょうか」

 愛美さんの声がした。

 「ちょっとお聞きしたことがあるんですが」

 そう僕が言うと、彼女は玄関のドアを開け、

 「上がってください」

 と言った。

 僕は、初めて愛美さんの家に入った。玄関はすっかり片付いており、とても落ち着いた雰囲気だ。

 「お茶でも飲みます?」

 「あ、はい」

 僕は少し緊張気味だった。

 「今、テレビで一人暮らしを襲った強盗殺人事件が起きてますよね、僕一人暮らしなんで最近怖くて」

 そう言うと、愛美は、

 「実は、その犯人と知り合いでたまにここに来るんですよ。匿ってくれって言われて」

 僕は、驚いたがすぐに理解できた。

 「それで、断って喧嘩に・・?」

 そう言うと、愛美は頷いた。

 「彼が起こしていることは決して許されることではありませんし、早く捕まってほしいと思っています。私は、警察に彼のことを言おうと思っていました。彼の居場所も知っています。でも、彼に関わっている私までなんか共犯に思えてきちゃって、警察に言えないでいるんです」

 愛美は目に涙を溜めながら言った。

 「警察に言いにいきましょう。これ以上被害者を出さない為にも。愛美さんはただ三橋と知り合いなだけじゃないですか。しかも、匿っていた訳じゃないですし。今からでも間に合います」

 すると、彼女は呟いた。


 「三橋が近づいてくる」

 



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