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4.カバーしてみました

「……到着かな?」


「はい。ここで間違いないかと」


「作戦はどうする?」


僕は試すような視線を懸山ちゃんに向ける。懸山ちゃんは数秒悩むような表情を見せた。

懸山ちゃんは元々効率重視で、一直線に暗殺対象に向かっていく。だから、もし逃げられた場合の対策などは僕に頼るほか無い。

普段は1人で自由にやってるけど、今回は僕との連携も取った方が良い可能性があるわけだね。でも、懸山ちゃんの結論は、


「大丈夫です。今まで通り、1人で最短ルートを攻めます」


「逃げられない?大丈夫なの?」


「前回は陽動などで気付かれた状態でしたが、今回の私たちに陽動なんていません。まっすぐに行けば、気付かれることはないはずです」


「なるほど。了解」


懸山ちゃんは、相当自分の暗殺技術に自信があるみたい。前の上司よりも自分の方が上手くやれるって思ってるんだろうね。それならそれで、上司として尊重してあげることにしよう。

責任は僕が取るって言ってあるから、安心してやって欲しい。


「それでは、行って参ります」


「はい。行ってらっしゃい」


消える懸山ちゃん。僕はその背中を追ってすぐに侵入。……したりはせず、周辺を探っていく。脱出口に使えそうなのは3カ所。何かあった場合はすぐに全部まわることにしよう。

さぁ。確認も終わったし僕も行くかぁ。


「……と鼓滝組がよぉ~」

「へぇ。でも、駕常会の連中もいるし……」


何か裏社会のご事情を話している見回りをやり過ごしつつ、屋根の上を使ったりして移動していく。


ガンッ!

「……ん?」


移動途中、何か変な音が聞こえた。周りを見回してみるけど、人の気配はしない。今の音は割と重かったし、人だったと思ったんだけどなぁ。

周りにあるのは、倉庫みたいな場所とその周りにある異常な太さのダクト。工場とかにありそうな太さだよ。

ダクトがあるのは良いんだけど、明らかに大きさが不自然な気もするね。……もしかして、この中に金塊とか札束が隠されてたりするのかな?なんてことを思いつつ近づいてみる。

そして、


「……っ。……ぁ」


微妙に聞こえる声。いや、声って言うよりは息づかいかな?中に人の気配を感じるよ。

とりあえず何かよく分からないけど、脅してみようか。懸山ちゃんの可能性が無いこともないし、いきなり殺すのはマズいよね。


ドスッ!

「……ァァァァァァ!?」


持ってた剣で、脚があるっぽい部分を突き刺してみる。中から聞こえてくるのは男の人っぽい悲鳴。とりあえず懸山ちゃんっぽくは無さそうだね。それなら適当に扱ってよさそう。

まずは、頭側と足側のちょっと余裕があるぐらいの所に切り込みを入れて、……ふんっ!


ガンッ!

「グゥゥゥゥ!??」


僕は人が入ってる部分を切り落とした。落ちたダクトは地面に衝突し、中からうめき声が漏れる。僕は素速く足側にまわって、


「ほいっ!」


「ぬおぉ!?」


すぽっと抜けて出てくる中の人。

おやおや。この顔は見覚えがあるよ。確か、暗殺対象がこんな顔だったはず。懸山ちゃん、逃しちゃったみたいだねぇ。

懸山ちゃんには悪いけど、手柄は僕がもらおうか。騒がれる前に暗殺対象の首へ剣を、


「……ふぅ。お仕事終了!」


今回は暗殺対象を見せしめにすれば良いって話だったから、死体処理を行う必要は無い。適当に目立つところで吊しておけば良いかな。

そんなことを考えながら死体をツンツンしていると、


「……はぁ!はぁはぁ。隊長!すみません!」


懸山ちゃんが走ってきた。逃げられて相当焦って、かなり走り回ったみたいだね。肩で息をしてるよ。僕たちは身体能力が劇的に上昇されてるのにもかかわらず、息切れするなんて。

僕はそんな懸山ちゃんに笑顔を向けながら、


「いやいや。気にしないで。ちゃんと僕が仕留めておいたから」


更に死体をツンツンする。でも、それでは懸山ちゃんは納得しないみたいで、


「でも。逃がしてしまったのは私の責任です!折角信頼して自由にさせてもらったというのに、こんなミスを犯しては……」


そう言って下を向く懸山ちゃん。相当責任を感じて思い詰めてるね。

僕はそんな懸山ちゃんに近づいて、顎をくいっとしてこっちを向かせる。


「あ、あの?」


「ふふっ。懸山ちゃん。忘れちゃったの?僕は、僕が責任を持つから好きにして良いって言ったんだよ。だから、懸山ちゃんが逃がしちゃったのも僕の責任。ちゃんと責任は取って、僕の手で始末しておいたんだから。懸山ちゃんはそんなに思い詰める必要は無いんだよ」


語りかけるようにしながら、懸山ちゃんの頭を撫でる。


「あっ//」


「懸山ちゃんに今から必要なのは、反省すること。今回の失敗を活かして、次につなげれば良いんだよ。だから、何も思い詰める必要は無いの。……分かった?」


「は、はい」


顔を赤くしながら懸山ちゃんは頷く。

……おやぁ~。これは、もしかするとかな?お仕事が終わったら、ちょっと攻めてみよう。


「さて、死体を運ぶから周りの警戒をよろしく」


「はい!お任せ下さい」


自信たっぷりに懸山ちゃんは頷く。自信が戻ったみたいで良かったよ。やっぱり美少女には笑顔が似合うよね。ただ、落ち込んだ顔でも可愛いのが美少女なんだけどさ。


「……よし。終了。帰るよ」

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