3.仲良くなってみました
「……隊長。ありがとうございました」
「ん?何が?」
突然お礼を言われた。どの件かよく分からないから、僕は首をこてんっと倒すことしか出来ない。
実は学生自体に、僕が裏から色々と手を回してあげたことに気がついたのかな?……いや、流石にそれはないか。
「私を自由にさせてくれたことです。学校でも前の隊でも、私の考えた策は危ないと言われて却下され続けてきましたから」
「ふふっ。気にしなくて良いよ。それに、悪いけど他のやり方も試すからね。まだこれでやり続けるって決まったわけじゃないから」
「ええ。分かっています。でも、1回でもやれたことが嬉しいんです。自分の考えが間違ってなかったと確信できたので」
ふぅ~。自信家だねぇ。たった1回成功しただけで間違ってないかどうかなんて僕には決められないよ。天才には敵わないね。
その後も似たような会話をしながら帰った。そして、数日間他の方法も試しながら調整を行う。数日経ってくると懸山ちゃんもかなり距離を詰めてくれるようになって、
「は?何ですかこの作戦は。最初からムダすぎます。もっと1回1回しっかりと考えてから作戦を立てて下さい」
なんて毒舌が飛び出してくるようになった。その後すぐに謝ってきたけど、笑顔で許してあげたよ。なかなか新鮮な経験だったからね。これでも前年度成績トップだったから、けなされるのは慣れてないんだよ。とても新鮮で楽しかった。
そして、そんな風に距離が近くなっていくと、懸山ちゃんは自分のことを話してくれることが多くなった。例えば、
「実は私、拷問の訓練で受けてないものがあるんですよ」
「へぇ?そうなの?」
「はい。痛み関連や薬関連はかなり耐性があるんですけど、性的快楽関係は相手がいなくて」
「へぇ~。……何?誘ってるの?」
「ち、違いますっ//」
なんてきわどい話をしたり。その他にも好きな食べ物とかの話をしたり。
そして、左遷前の話も。
「私、異動理由が暗殺対象を逃したからなんですよね」
「そうなの?」
知ってたけど、まるで初めて知ったみたいな反応をしておく。聞き手が「あぁ~。その話知ってる」とか言ってきたら、その後その人に話しはしたくなくなるから。
この辺も大切な話術だよ
「その時の暗殺対象は暴力団のボスだったんです。かなり広い屋敷に住んでて、私は隠し通路とかを色々疑ってたわけです。ただ、その時の隊長は逃げられる前に殺せば問題ないとおっしゃられまして」
「あぁ~。……それで、結局逃げられちゃった、みたいな?」
「はい。そうなんです。しかも、私は侵入するときに怪しい箇所に気付いてたんです。それで隊長に見張りを残しておくように言ったんですけど却下されて、終わってみれば案の定そこから逃げられてました」
「うわぁ~。辛いね。……え?どちらかと言えば隊長の危機管理能力不足だと思うけど、懸山ちゃんが左遷されちゃったわけ?」
「そうなんですよ。私が報告した怪しい箇所に逃げたのが分かってから、すぐに行けば追いつけたはずだ!みたいなことを隊長が言い出しまして」
「それで左遷かぁ~。大変だったねぇ……まあ何が出来るって訳でもないけど、見返せるように頑張ろう!」
「はい!ありがとうございます」
という感じの会話もした。
無能な隊長のミスを押しつけられた左遷されちゃった感じだね。ただ、そういうミスがなくても懸山ちゃんは優秀だから左遷されてたと思う。僕みたいに、ね。
懸山ちゃんとの進展はそんな感じだとして、お仕事の話も少ししようか。結局僕たち2人の方針は、懸山ちゃんが自由に動くので決まった。結局、アレが1番効率が良いんだよね。僕とは違って、懸山ちゃんはリスクを取ってでも効率の良い道を選ぶから当たり前なんだけど。
「良いペースで処理できてるね」
「そうですね。小隊としての成績はトップになるかもしれません」
2人で組んでから1月。かなり良いペースで仕事が終わっていく。一般的な小隊の平均と比べても5倍くらいはあるよ。たぶん今年度の小隊で成績トップを狙えると思う。
そんな風に乗りに乗っているあるとき、
「……あっ。これ、懸山ちゃんが前にいた小隊で取り逃がした人じゃない?」
「え?どれですか?……あぁ!それですそれ!その人です!」
普段クールな感じで毒舌な懸山ちゃんも、このときはかなり前のめり。僕は依頼を見せていない方の手でどうどうと落ち着けさせる。
それから、伺うように視線を向けつつ、
「……受け」
「受けます!」
即答だった。僕が言い終わらないうちに頷かれてしまったよ。
でも、僕も特に反対意見があるわけではない。すぐに準備をして、目的地へ飛び出した。
いらない情報かもしれないけど、やる気溢れる懸山ちゃんは前傾姿勢で僕の前を走ってた。だから、お尻が突き出される形になるわけで……。うん。複眼でした。露出される太モモ含めて、凄かったよ。うん。