1 俺と香澄ちゃん
最後までお読み頂けると幸いです。
「えっ?仁科孝之君?えぇっ?!本当に?!孝ちゃん!私だよっ!香澄!小学校3年生の時引っ越していった!」
「んんっ?!香澄ちゃん?!えっ?隣に住んでた川上香澄ちゃん?!」
「そうだよ!!会いたかった!前の家行っても違う人住んでるし!探したんだよ!」
高校入学式当日、クラス分けの表を見て、自分のクラスの席に着いた途端、話しかけてきたのは、川上香澄。
そして、びっくりして固まっているのが俺、仁科孝之。
俺と香澄ちゃんは昔、家が隣同士で、俺たちが幼稚園、小学校の頃は香澄ちゃんの両親が共働きで帰りがいつも遅かった。
事情を知っていたウチの両親は、香澄ちゃんの両親が帰ってくるまでウチで面倒を見ることにした。
そこからは仲良くなり、いつも俺たちは一緒にいた。
「大きくなったらけっこんしようね、たかちゃん!」
「うん、やくそくだよ!かすみちゃん!」
この頃の俺たちに恋愛感情があったのかはわからない。結婚の約束もただズッ友みたいな感覚だったんだろう。
口数の少ない俺と活発で明るい香澄ちゃん。普通に考えたら相性は良くないのだろうが、小学生の俺たちはなぜか一緒に居て苦痛ではなかった。
二人でいるときは専ら俺の家でゲームしたり、漫画を読んだりが多かったが、香澄ちゃんが不満を漏らすことは無かった。
しかし、小学校3年生の頃に香澄ちゃんは親の都合で引っ越して行った。
「約束忘れないでね!孝ちゃん!」
「うん!元気でね!香澄ちゃん!」
引っ越し先は県内だったらしいが、2人ともその時はスマホも持っていなかった為、直接の連絡はなかった。
親同士は年に1~2回程連絡を取っていたらしいが、俺の両親が中学1年の時に離婚してからは連絡が途絶えた。
離婚時お互い揉めたので、父も母もスマホの番号を変えてしまい、連絡が途絶えたらしい。
離婚後、俺は父親に引き取られ父親の実家に移ったのだが、元の家と近かったため、学校は変えずに済んだ。
香澄ちゃんが転校してから6年。香澄ちゃんは何となく面影があり、女性らしく成長していた。
香澄ちゃんはやはり明るいままで、塾で一緒だった友達が同じクラスにいるみたいだ。
今はその友達と話している。男3人、香澄ちゃん含めて女3人。凄く仲が良さそうだ。
皆タイプは違うが、イケメン・美少女でクラスで目立っている。
嫉妬しているかって?いや、ないだろ。幼馴染と言ったって6年会ってないんだ。
香澄ちゃんが引っ越して行った時、恋心があったなら嫉妬してもおかしくないが、小学3年だぞ?初恋もまだだったよ。
俺はと言えば、中学からのゲーム仲間がこのクラスに居るので、話すのはソイツぐらいだ。
おっと、俺だってゲームばっかりやってるわけじゃないぞ?勉強もそこそこ出来るし、最近はプログラムの勉強もしている。
「何?あの人たち知り合い?お前にあんな派手な友達いたんだ?」
「いや、あのうちの一人が小さい頃の幼馴染だったんだよ。」
「へぇ、感動の再会って奴?」
「うーん、言っても6年振りだからな。」
「6年連絡とってなかったのか?」
「そうだよ。」
「それ他人じゃね?」
「まぁ、幼馴染には変わりないだろ。」
「そっか。まぁいいんじゃね?」
適当だなぁ。まぁ懐かしいとは思うけど、それだけだな。
「孝ちゃん、今日学校終わってから予定ある?」
今日はコイツとゲームの予定だ。
「ごめん、今日は予定があるんだ。」
「そっか、ざんね~ん!また今度ね!」
「うん。」
「予定あるって!残念だけど。」
「ならしょうがないな。俺たちがお祝いしてやるよ!」
「お祝い?」
「会いたかった幼馴染に会えた記念!」
「いいじゃん!香澄はタダでいいぞ!お祝いだからな!」
「いいの?やった!ゴチになります!」
賑やかだな…。