親友という関係
田舎町という設定のため地元の方言を使っています。
もしかしたら読みにくいかもしれません。
長い黒髪の少女が学校を終えて下校している。
少しつり上がった目は彼女をとても勝ち気な少女だと連想させてくれる。
恐らく、隙などは見せないのだろうと想像させる。
そんな少女の背後に人影が
「うりっ」
「ヒアアァッ!!」
うなじに冷たいなにかをピトッと押し付けられて少女は奇声を挙げて鞄を地面に落とした。
意外と隙だらけのようだ。
「うはは、大成功!」
背後にいたのは顔立ちだけを見たら爽やかな少年だった。
手には缶コーラ。顔には満面の笑顔と堪えきれない笑い声。
そんなイタズラ大成功な少年の笑顔をうなじを片手で押さえながら睨み、もう片方の手で鞄を掴み、地の底から聞こえてきそうな声で少年の名を呼んだ。
「か~~ず~~っ」
そして鞄を少年にぶつけた。
「デッ!?」
「今度やったらほんまに許さんけぇねっ!!」
「か、鞄ぶつけんでもええじゃんか!」
「ふん、知らん!」
少女はそっぽを向いてご機嫌ななめ。少年は鼻を抑えながらちょっと調子に乗ったかと反省した。
少女は特別うなじに弱かった少年もそれは知っている。だが、あまりにも無防備だと少年はついやってしまうのだ。
なので今日も少年はやってしまったのだ。
「また、やったんか、かず」
そんな時、背後から自転車のブレーキ音と野太い声がした。
その声に二人は同時に振り向いた。
「あ、クロ」
そこには色黒で丸坊主な少年が無表情で自転車に跨がっていた。
「ん? なんでクロがこっちに居るん? なんかこっちに用事?」
少女は首を傾げた。クロと呼ばれた少年の自宅は少女達とは真逆だ。
こちら方面の下校時間にいるはずは無いのだ。
クロと呼ばれた少年は少女の問いに無表情のまま答えた。
「かずがDVD貸すっつうから。家に帰るよりも早いから、ちょっと寄り道」
解りやすい説明に少女は納得した。
「DVD? なんの?」
「ああ、ええっと・・・・なんてったっけなぁ」
「アイアンマンやろ! 観たいつっといたタイトルぐらい覚えとけや!」
かずと呼ばれた少年が即座に突っ込んだ。
「ああ、アイアンマンか」
クロと呼ばれた少年は特に気にする様子もなくDVDのタイトルを復唱した。
どうやら彼はあまり深くは考えないようだ。
二人もいつも通りの事なのでそこから先は突っ込まずに話を続けた。
「あ、アイアンマンなら私も観たい。クロの後でええけぇさぁ。今度貸してくれん?」
「ええけど、ミャコは怒っとったんじゃなかったか」
・・・・・・・・少女は少し沈黙する。
そしてすぐに顔を手で覆ってしまったのポーズを取る。
「あぁ、なんかもうどうでもええ。よく考えたらアホらし」
どうやら少女の怒りはどこかに飛んでいってしまったようで、かずはホッとした。
「んん、でもまぁ、ちょっとは悪かったけぇこれミャコにやるわ」
そう言ってかずはミャコに缶コーラを差し出した。
「・・・・もらうわ」
一瞬、ミャコはコーラとかずを交互に見てから受け取った。
「なに、今の間?」
「ん? 気にしなさんな。大した理由はないけぇ」
「そっか、じゃぁ気にせん」
聞いては見たものの気にするなというのでかずは気にしない事にした。
「なん、この軽いコント」
「ん~、なんの話? ていうかなんでクロちゃんがこっちおるん?」
クロがボソッと呟くと後ろから小さな少女がトコトコと歩いてくるところだった。
「・・・・なんだ、ゆなか」
「む、むぐむぐ、なによ」
素っ気ない言葉にちょっとムッとした小さな少女はなにか言おうとしたが、どうやら口の中には飴があるようでうまく話せない。仕方なく、少女はガリガリと飴玉を噛み砕いてから再度クロに質問した。
「で、なんでこっちにクロちゃんがいんの?」
「めんどくせ」
「ええよもう! クロちゃんいっつもそうなんじゃけ! にいとミャコちゃんに聞くもん!」
クロに子供っぽくイーッとしてからゆなはかずとミャコに駆け寄っていく。その後ろ姿をクロは少しだけ唇のを端を動かして見つめた。
四人が集まった所で彼らの自己紹介。
外見だけ見れば爽やかな少年(意外と艶やかな髪)の名は中村 一樹13歳(中2)愛称「かず」(一樹からとってかず)
黒髪ロングの少女の名は斉條 京13歳(中2)愛称「ミャコ」(京という名前が小さな時は言いずらかったのかミャコと言っていた名残)
小さな少女(少しくせ毛気味な短い茶髪)の名は相沢 優菜13歳(中1)愛称「ゆな」(由来はミャコと同じ)
色黒坊主の少年の名は杉田 六郎14歳(中2)愛称「クロ」(由来は色が黒いのと名前の間を取って。ちなみに名の通り六人兄弟の末っ子)
性格はそれぞれ
かず=意外とお節介
ミャコ=割りと天然
ゆな=そのまんま子どもっぽい
クロ=基本無関心
以上、簡単な自己紹介終わり。
彼ら四人は幼なじみ。いわゆる腐れ縁。
いつも四人一緒だったのでこのように
「うし、久々に四人で日曜はラーメン食いに行こうや」
「うん、私はええよ」
「予定は特にない」
「うはーっ! みんなでラーメン! 楽しみ!」
簡単な予定を決める事も多い。
そして、仲が良い友達によくある
「じゃ、場所は「一陣亭」に決まりだな」
「え? 「山寺」でしょ?」
「は、「一陣亭」だろ絶対!」
「違う「山寺」のほうが絶対いい!」
「またか」
「に、にいもミャコちゃんも喧嘩だめぇっ!!」
喧嘩も多々あり
「うし、じゃぁ公平にじゃんけんだ!」
「よし、絶対勝つ!」
「最初からやりゃ早えのに」
「クロちゃん! 勝負に水を挿さんの! どっちもガンバレ!」
簡単な事で納得し仲直りをする。
「んじゃ、当日はよろしく!」
「はいはい」
「と、俺かずんち行かなきゃ意味ねえ」
「にい! ミャコちゃん! ついでにクロちゃんも! バイバーイ!」
彼らにとっての変わらない関係。信頼できる仲間。
これが親友なのだろう。
いつまでも壊れない口で言わなくても解る絆なのだろう。
ほんの少しの変化が起きてもきっと、変わらない。