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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード1 エルフの行商人
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精霊召喚 その3

 シルフィは頭にティアラがついているなど、ぬいぐるみやレティと比べ若干豪華な衣装を身に纏っている。


 とはいえ差異はわずか。並べてよく見比べたりでもしない限り、普通の人には風のエレメンタルと同じに見えるだろう。


 シルフィは辺りをきょろきょろ見回したあと、満面の笑顔でシャルルに向って飛んでくる。


「ごしゅじんさま~」


 だが――シャルルに到達する直前、飛びついたステラに捕まった。


「しるふぃ!」


「わっ、なに!?」


 捕まえられあせるシルフィ。だがステラは抱きつき離さない。


 そして名前を呼びながら頬ずりをした。


「しるふぃ~」


「わー、はなしてってばー。ご、ごしゅじんさま、たすけて~」


 シャルルは困っているシルフィをステラから取り上げると、レティのときとまったく同じだな……と思う。


「しるふぃ~」


「ひぃ~」


 懸命に手を伸ばすステラ。それに怯えながらシルフィはシャルルにしがみつく。


「こら、ステラ。嫌がる事しちゃ駄目だろ」


「……はーい」


 ステラがしぶしぶ手を引っ込めると、シルフィはシャルルから離れ尋ねた。


「ごしゅじんさま、この子だ~れ?」


「この子はステラ。私の家族だ。ほら、ステラ。挨拶」


「はーい。すてらはすてら。よろしくね」


 ステラはちょっと首をかしげた感じでぺこりとお辞儀をする。


「わたしはシルフィ。ごしゅじんさまのいちのこぶんよ」


 そう言うとシルフィは『むふー』といった感じで鼻息荒く誇らしげに胸を張った。


「一の子分て……」


 なんだそりゃ……とは思いつつも、まあどうでも良いかとシャルルは思う。


 そして、シャルル自身はゲームで知っているからかシルフィを違和感なく受け入れられるし、どうやらそれは彼女の方も同じようで、シャルルが自分にとってどういう存在なのかを理解しているようだと感じた。


 なんとなく大丈夫な気はしていたのだが、思っていたのと違っていたらどうしようという一抹の不安がなかったわけではない。


 しかしどうやら問題はなさそうなのでシャルルは少し安心する。


「いちのこぶんってなーに?」


 ステラが首をかしげて聞くと――


「ふふん。いちばんのこぶんってことよ」


 とシルフィは鼻息荒く誇らしげに胸を張った。


 すると対抗してステラも言う。


「じゃーすてらはしゃるーのおくさんだから、いちのかぞく!」


「じゃあ、私はなんなんだ?」


 シャルルが尋ねると二人は同時に言った。


「いちのしゃるー!」


「いちのごしゅじんさま!」


 そして二人は顔を見合わせて嬉しそうに笑う。


「……そうか」


 シャルルは二人を見て思った。子供が増えてしまったかな……。




 シルフィの出現にはしゃぐステラ。シルフィも最初はステラを警戒していたようだが、少しずつ慣れてきているように見える。


「ねーねー、しるふぃは、かぜのくにのおひめさまなの?」


「……ちがうけど」


 なに言ってるのこの子……的な雰囲気を出しつつシルフィは戸惑う。


「じゃーなんてかんむりつけてるの? おーさまなの?」


「……なんでだろ?」


 首をかしげるシルフィ。


 そんな様子を見つつ、王様がつける冠はティアラじゃなくてクラウンじゃないか? とシャルルは心の中で突っ込みを入れる。


「ごしゅじんさまー、なんで?」


「さあ?」


 アナザーワールド2の関係者ならともかく、単なるプレイヤーでしかなかったシャルルがそんな事を知っているはずもない。


 しかし……レティやぬいぐるみにはティアラついてなかったんだよなぁ。そう考えたシャルルはレティの事を良く思い出してみる。


 レティはアナライズで見ると『エアロエレメンタル 6/10』だった。シルフィにはレティと同じようは気配を感じるので同種か近親種といったところだろう。


 まあ、考えるより見た方が早いか……と思ったシャルルはシルフィにアナライズを使う。その結果、シルフィが『エアロエレメンタルマスター 32/60』だという事がわかった。


 クラスがちょっと違うが、名称や最大レベルから考えるとエアロエレメンタルの上位クラスである可能性が高い。見た目がちょっと豪華なのは上位クラスだからと考えれば納得が行く。


 レベル32というとレベル4~5のハンターと同じくらいだからこの世界ではかなり強い。それに潜在能力がレベル60というのはヨシュアやヒイロ騎士団の騎士よりも上だ。


 しかしこんな事ならシルフィのレベルをもっと上げておけば良かったな……とシャルルは思う。


 シャルルはこの世界におけるレベルの上げ方を良く知らない。


 アルフレッドたちやステラを見た限りでは、ゲームと違って敵を倒して経験値を貯めるとレベルが上がり能力が上がるというシステムではないと考えられる。


 むしろ能力が一定値を越えると、その能力の目安としてレベルの数字が上がるという感じだ。


 つまりこの世界でレベルを上げるには、日々の鍛錬や勉強、経験によって能力を上げるという、現実世界とまったく同じ方法を取るしかない。というか、ここはシャルルの元居た世界とは別の世界ではあるが、ある意味一種の現実世界なのだろう。


 だが、ゲームで得た能力を持ち込めるという事を考えると、レベル上げはゲームでやった方が圧倒的に楽だ。


 シルフィをこれからここでMAXの60まで上げる事は非常に困難だが、ゲームでならそれもできたはず。そう考えるとやはり惜しいなと思わずにはいられない。


 まあ、当時はシャルルもこうなるなんて思ってなかったし、今更考えても仕方がない事ではあるのだが。

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