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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード1 エルフの行商人
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精霊召喚 その2

「おわかれやー。みんなといっしょ、いっしょがいー」


「ほら、泣かないの」


 ニーナが頭を優しくなでるとステラの泣き声が小さくなる。


 こういうのは女の方がうまいだろう。そう思ったシャルルはニーナに任せる事にして、レティとブランに世話になった礼を言うとやり残した事や忘れ物が無いかをチェックした。


「元気でね」


「ばいばーい」


「ブルル」


「ああ、世話になった。この恩は忘れない」


「ばいばーい」


 ニーナ、レティが笑顔で手を振り、ブランも表情はわからないがたぶん笑顔でシャルルたちを見送る。


 それに応えシャルルはもちろんステラも精一杯の笑顔で手を振った。


 ニーナたちと別れてから少しだけ手を繋いで歩いたが、それだとやはり遅すぎるのでシャルルはステラをおぶって歩く。


 そして振り返ってもニーナの馬車が見えなくなった頃、シャルルの耳にいつの間にか眠っていたステラの寝言が聞こえてきた。


「むにゃ……ある……ろーざ……そふぃ……しるふぃ」


 さっきの別れでマギナベルクの人たちの事を思い出したのだろう。がんばって笑顔で別れたが、寂しいものはやはり寂しいのだ。


 そんな寂しさをなんとかしてやりたいとシャルルは思い考える。


 アルフレッドやローザ、ソフィは無理だが――シルフィにはあてがあるな。




 シルフィを呼び出してみるか? シャルルは村を目指して歩きながら考える。


 ステラのぬいぐるみにつけたシルフィという名前。これはシャルルがゲームで育てていた課金ペット、風の精霊につけていた名前であり、そっちがオリジナルだ。


 そしてそれを召喚するためのアイテムはアイテムボックスに入っている。


 今まで召喚しなかったのはシャルルが味方など必要無いくらい強い(むしろいたら邪魔)という理由と、最初は今も装備しているHPオーラの自然回復速度が2倍になるアクセサリー、リング・オブ・リジェネレーションを外さないと呼び出せないと思っていたからだ。


 確かにゲームでは同種の装備を同時に身に着ける事はできなかった。


 ここでもアイテムボックスから取り出すと同時に装備する『換装』という方法を使うと同種のアイテムは入れ替わってしまう。


 だが、アイテムボックスから出した上で装備する場合、物理的に可能なら同種のアイテムを複数装備する事は可能。なのでステラにぬいぐるみを買ってやったときも『呼び出せば無料』という考えがシャルルの頭をよぎっている。


 当時はステラを遺跡から連れ出した事がばれるとまずい状況であり、店員にエレメンタルは珍しいという話を聞いていたため、無駄に目立ちたくないという理由から断念したが――今は違う。


 ニーナたちとの旅で風のエレメンタルが旅の役に立つという事もわかったし、エレメンタルがシャルルが思っていたほどは珍しくない事もわかった。


 それにリベランドからの追っ手がいた場合、最初はいなかったエレメンタルが一緒にいればカムフラージュになるかもしれない。


 呼び出せるのはあくまで課金ペット、風の精霊。見た目はそっくりでも能力が同じかどうかはわからない。


 だが、もし同じならこれからの旅で大いに役立つだろうし、役に立たなかったとしてもステラは喜ぶだろう。


 歩き始めて数時間。丁度腰掛けるのによさそうな岩を見つけ、シャルルは歩みを止める。


「ここでちょっと休憩するぞ」


「……うん」


 ニーナたちとの別れ際には気丈に笑顔で手を振ったステラだったが、やはりまだ元気が無い。


 シャルルはおぶっていたステラを地面に下ろし、自分は岩に腰を下ろす。


 そしてアイテムボックスから風の精霊を召喚するためのアイテム、エレメンタルリングを取り出して指にはめた。


「なあ、ステラ。シルフィに会いたいか?」


「おうちかえるの?」


「いや、まだ帰れないけど、シルフィは呼び出せる」


 意味がわからないといった感じでステラは首をかしげるが――


「あいたい……しるふぃにあいたい!」


「そうか。じゃあ、呼ぼう」


「うん」


 頷くステラの頭を右手で軽くなでてから、シャルルは緑に輝くエレメンタルリングをはめた左手を突き上げる。


「いでよ我がしもべ。風の精霊シルフィ!」


 ちなみに召喚にこの文言は一切必要ない。


 エレメンタルリングから指輪の色と同じ緑の光線が発せられ、それが空中に魔法陣を描く。


 そして完成した魔法陣から風を纏いつつ半透明の羽が生えた小さな子供、風のエレメンタルに良く似たそれ――風の精霊シルフィが現れた。

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