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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード1 エルフの行商人
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馬車の旅 その4

 夕方。ニーナは日が落ち切る前の昨日より若干早い時間に野宿の準備を始めた。


 まず馬車を止めブランを荷車から外し水をあげるという、いつもの作業を終わらせる。


 次に荷車からスコップを取り出しシャルルに渡し、彼に穴を二つ掘りそれをトンネルで繋げるように指示を出す。


 そして、シャルルがステラの『お手伝い』という名の邪魔をされつつ穴を掘っている間に昼間狩ったウサギを捌いた。


 穴を掘り終わったシャルルは首をひねりながらニーナに尋ねる。


「できたけど……何これ?」


「燻製窯の代わりよ」


「燻製窯? これで燻製なんか作れるのか?」


「まあ、見てなさい」


 そう言ってニーナはニヤリと笑う。


 彼女はまず片方の穴の途中に細い枝を刺して格子状にすると、その上にウサギの肉を置く。そして穴の上にも枝を置き、その上に大きめの葉っぱを乗せてふたをした。


「薪と着火用の枯れ草を持ってきて」


『はーい』


「ああ」


 ニーナが振り向き指示を出すと、ステラとレティが元気良く返事をする。シャルルは若干遅れて返事をしつつ、二人が枯れ草を取りに行ったので荷車から薪を出した。


 準備が整うとニーナはもう片方の穴に枯れ草と薪を入れて着火する。そしてもう片方の穴から煙が出ているのを確認すると言った。


「これでしばらくすれば燻製肉の完成よ」


「おおー、すごーい」


 ステラがもくもくと出る煙を見て感嘆の声を上げる。


 そんなステラを見てシャルルは、どうせ何やってるかわかってないんだろうなぁなどと思いつつ、ニーナの知識に感心していた。


「さすが元狩人。こういうのに詳しいんだな」


「まあね。って私が狩人やってた事なんで知ってるの?」


 ニーナは驚きの表情を見せるがシャルルは苦笑しつつ思う。その格好でその知識。それに弓も使えるんだからそれ以外ないだろ。


 それに――


「昼間レティが、自分はニーナが狩人のときからの相棒だって言ってたから」


「なるほど。確かに森で迷子のレティと出会ったのは、狩人やってたときだったわね」


「迷子じゃないわ! お散歩してただけよ」


 迷子と言われ、心外だとばかりにレティは頬を膨らませる。


「森で散歩? エレメンタルって大陸北部では珍しいって聞いたけど、案外その辺の森に住んでたりするのか?」


 シャルルの質問にニーナは腕を組んで考える仕草をした。


「さすがにその辺の森に住んでないとは思う。でも、珍しいって言うほどかな? 確かにあんまり見ないけど、この辺の村や町でたまに見かけるし」


「そうなのか」


 たまに見かけると言われシャルルは考える。もしかしたらエレメンタルは、自分が思っているほどは珍しくないのかもしれない。


 確かに洋品店の店員は見た事が無いと言ってたし、シャルルもマギナベルクでは一度も見かけなかった。


 だがソフィは前に住んでいた村に水のエレメンタルが居たと言ってたし、ニーナも村や町ではたまに見かけると言う。


 これらから導き出される答えは――


「もしかして、エレメンタルって都市にはいない?」


「ん? あー、言われてみれば都市だと見ないわね。まあ、エレメンタルは自然を愛するから都市だと暮らしづらいのかも」


「そうなのか?」


 シャルルが尋ねるとレティは答えた。


「んー、ひとがいっぱいって好きじゃないかも……ってこら、つかまないでよ」


「えへへ」


 話に入れず暇だったのかステラがレティの足をつかみ、それをレティが怒る。


 だが、怒られても相手にしてもらって嬉しかったのかステラは笑う。


「こら、嫌がる事しちゃ駄目だろ」


「はーい」


 ステラはレティから手を離すと今度はシャルルのローブを引っ張って言った。


「しゃるー、ごはんまだー?」


「ああ、ご飯にするか」


「うんっ」


 ステラのリクエストに応え、シャルルたちは話をやめて夕食の準備をする。


 まずは焚き火で串に刺したウサギ肉ときのこを焼き、そして昨日同様お湯を沸かしてスープを作った。


 準備ができると焼けたウサギ肉やきのこを食べつつそれをスープで流し込む。炭水化物も欲しいところだが、残りが少ないからという理由でパンは無しだ。


 シャルルは焼けたきのこを食べながら、昼間レティが言っていた『やなにおい』についてニーナに聞いた。


「なあ、ニーナ。昼間レティがきのこの選別は『やなにおい』がするかしないかだって言ってたけど、風のエレメンタルは毒を嗅ぎ分けるって事なのか?」


「ええ、そうよ。その『やなにおい』っていうのが毒の臭いらしいわ」


「へー」


 そして味のしないきのこを噛みつつシャルルは思う。味の良し悪しも嗅ぎ分けられればいいのに。

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『小さな村の勇者(完結済)』

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