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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第一章 エピソード1 マギナベルクの新英雄
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英雄公 その1

 大陸には近しい知能と容姿を持つ四つの種族が存在する。


 最も数が多く大陸全域に生活圏を持つ人間。


 数は少ないが長寿で、そのほとんどが大陸中央部にある大森林で暮らすエルフ。


 山岳地帯に国を持ち、屈強な戦士と優秀な職人が多いと言われるドワーフ。


 そして、圧倒的長寿だが圧倒的に数が少ない魔族。


 ほかの三種族とは違い魔族は他の大陸から流れ着いた者の子孫で、この大陸に魔法(魔術)という技術をもたらした種族でもある。


 彼らの魔族という名称は、悪魔的な意味ではなく魔法をもたらした種族という意味合いを持つ。


 これら四種族をまとめて『人類』と呼び、一般的に『人』という言葉は人間だけでなく人類すべてを指す。


 人類とひとくくりにされる四種族ではあるが、他種族との間に子孫を残す事はできないのでハーフは存在しない。





 アルフレッドたちの紹介でやってきた宿屋の一室。テーブルに置かれたオイルランプが照らすその部屋は、だいたい六畳といったところだろうか。


 入ってすぐのところには簡素なテーブルと二脚の丸イス。奥には二つのベッドがあり、その奥には今は閉まっているがガラスのはまっていない窓がある。


 装備をアイテムボックスにしまい、黒い長袖シャツと黒い長ズボンという姿でベッドに横になっていたシャルルは天井を見ながらつぶやいた。


「魔族……か」


 ギルドにいた人たちの反応を見る限り、魔族といっても悪魔とか人類の敵といった感じではなく、精々外人程度のちょっと珍しい人みたいな感じだった。


 鏡で見た限りでは人間と大差なく、違いはきれいに日焼けした感じに褐色な肌と耳がやや尖り気味な程度。まあ、それを言ったらエルフやドワーフも人間と大差ないが。


 ゲームにもエルフやドワーフは存在していた。


 だがそれは村や町の住人などでプレイヤーが使えるキャラではない。


 そして彼はやはり、そういうキャラクターでも魔族というのは見た覚えがなかった。


「最初にキャラを作ったときは明らかに人間だったよなぁ」


 そもそもシャルルという名前自体、キャラクターメイキングの画面に出てきたデフォルトキャラが金髪碧眼だったのを見て、なんかフランス人っぽいな……と思ってフランス人風の名前を適当につけたものだ。


「あれ? じゃあ、何で今は黒髪で黒い瞳なんだっけ?」


 キャラクターは普段からフル装備。なのでどんなキャラでも兜をかぶれば髪の色なんてほとんどわからないし、後姿を見る事が多い自分のキャラの瞳なんて見る事はほとんどない。


 確かにドラゴン装備の色のように課金アイテムで髪や瞳の色を変える事はできる。だが、それをやった覚えもない。


 ないが――


「あ!」


 不意に彼は思い出す。クラス5実装直後に起きたキャラクター変色事件を。



 キャラクター変色事件。それはクラス4マジックナイトからクラス5ダークナイトになるためのクエスト『闇の転生』で起きた。


 魔神を倒しその闇の力を取り込み転生するという設定のこのクエストは、クリアすると闇の力を取り込んだ演出としてキャラクターの色が黒系に変更されてしまう。


 元々デフォルトキャラをそのまま使っていた彼はキャラクターの容姿に興味がなく、装備品をつければ見た目もほとんど変わらないため特に気にもしなかったが――元に戻すには課金アイテムを使わなければならないため、他のプレイヤーからは苦情が殺到。


 結局この演出は廃止され、色が変わってしまったプレイヤーには戻すのに必要な課金アイテム相当のポイントが付与される事になった。



「闇の転生って……人間から魔族に転生したって事だったのか?」


 だとすればなんとなく腑に落ちる感じはある。だが、確認のしようはない。


「まあ、これ以上考えても仕方ないか。しかし――」


 自分が魔族という事も含め、随所にゲームの影響が見て取れる。


 ステータスを見る事はできなかったので自分の細かい能力を把握する事はできなかったが、アナライズは自分にも使う事ができ、やはり自分が『ダークナイト 100/100』というのは確認できた。


 100/100だからこれ以上レベルは上がらないのだろう。


 そんなゲーム的な部分もありながら、嗅覚、触覚、味覚から生理現象まで、明らかにゲームではありえない部分も多数存在する。


 したがってここは単純な異世界ではなく、少なくとも自分自身は明らかにゲームの影響を受けている存在なのだろう。


「まあ、明日だな」


 ワイルドウルフの報酬を三人で山分けしたら、お礼にと明日アルフレッドたちが都市内を案内してくれる事になった。


 この世界の事をもう少し知る事ができれば少しは謎も解けるだろう。



 だが彼は明日、新たな謎に出会う事となる。

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