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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード1 エルフの行商人
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馬車の旅 その1

 シャルルたちを乗せ、ニーナの馬車が辺境の道を進む。シャルルは揺れる荷車の奥で木箱に背を預けて座り、彼に乗っかるようにステラも座っている。


 そして特に会話もなくしばらく時間が経つと、いつの間にかシャルルは寝息を立てていた。


「しゃるー?」


 ステラの呼びかけにシャルルは薄目を開く。だが、ただ呼んだだけで用事はなさそうだな……と感じると返事もせず目を閉じた。


「しゃるー?」


 再びステラは呼びかけるがシャルルはもう薄目も開けない。反応が無い事に首をかしげたステラはもう一度呼ぼうとするが――


「しゃ……」


「しー。寝かせておいてあげなよ」


 御者台から荷車の方を振り返ったニーナが人差し指を立ててステラを止める。それを見てステラは黙って頷くと、寄り添うようにシャルルに体を預けた。


 仲いいなぁ……似てるしやっぱり二人は親子かな? それとも兄妹? そんな事を思いつつニーナは考える。


 どこから来たのか知らないけど、たぶんシャルーはステラを背負って相当な距離を歩いてきたんだろう。子供と二人じゃ交代で眠るなんてできないし、食料も持ってなかったから相当疲れがたまってるはず。


 だから寝てしまうのもしょうがないとは思うけど……ちょっと無防備すぎない? まあ、見知らぬ人を馬車に乗せてる私も人の事は言えないけど。


 シャルルの実力を知らないニーナがそう思うのは当然だろう。だがシャルルは寝ていても何かがあれば瞬時に動けるので実は無防備と言うほどでもない。


 とはいえこの状態でステラを完璧に守れるかと言われれば疑問は残る。なので出会ったばかりのニーナを信用しすぎだと言われればそうだ。


 しかしシャルルはニーナの予想通りここ数日ろくに睡眠もとらず歩き詰め。そのため疲労はかなり貯まっている。


 シャルルは確かに桁外れに強いが無限の体力を持っているわけではない。実力的に戦闘で死ぬ可能性は低いだろうが過労死は十分にありうるのだ。


 したがって軽微なリスクなら、それを背負ってでも体力の回復を図るべきだろう。


 一方、ステラは自分の足で歩いていたわけでもなく、ここ数日はシャルルの背中で眠っていただけ。


 もちろん食料もほとんどなかったし、おぶられているだけでも長時間ともなれば体力を消耗するから疲労が無いわけではない。だが、睡眠は十分だしご飯もさっき食べたのでそこそこ元気だ。


 そこそこ元気で眠くもない子供はやはりじっとしていられない。


 シャルルに寄り添っていたステラもしばらくすると動き出し、レティにちょっかいを出したり荷物に触って怒られたりする。


 そして目の届かない場所に居られると厄介だなぁと思ったニーナに呼ばれ、彼女の隣に座らされた。


 ニーナの隣でブランの背中を見ながらしばらくおとなしくしていたステラだったが、急に体を左右に揺らし始めると楽しそうに謎の歌を歌いだす。


「ぶらーん♪ ぶらーん♪ しろいおうま~♪ あたまのおつのがかっこいい~♪」


「……なにその歌?」


 ステラに捕まらないようニーナを挟んで浮いていたレティは冷ややかな目でステラを見る。するとステラは誇らしげに胸を張りながら言った。


「ぶらんのうた!」


「へぇ……」


 そういう反応が返って来るとは思ってなかったレティはちょっと引き気味だ。


 そんな二人をにこやかに見ていたニーナはステラに問いかける。


「歌が好きなの?」


「んー、わかんない」


「そっか」


「うんっ」


 ステラはなぜか嬉しそうに頷く。


「子供って……わけわかんないわね」


「ふふ、そうね」


 そう言うとニーナはレティを見て笑う。


「なに?」


「なんでも」


 そう答えつつニーナは心の中で思った。レティにもそういうところあるけどね。

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