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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード1 エルフの行商人
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ユニコーンの馬車 その4

 食事も終わり人心地つくと、ステラはレティと共にブランのところに行く。


 シャルルは少し心配したが、ニーナがレティがいればブランが人に危害を加える事は無いと言ったので、一応何かあったらすぐに動けるようにはしつつも見守っていた。


 さて、これからどうしたものか……シャルルは考える。


 とりあえず事情を説明し、それから一番近い人里への行き方を聞く。そしてそこに行くまでに必要であろう食料を分けてもらえないかと交渉する。そんな流れで良いだろう。


 無論、追っ手がいる可能性がある以上、本当の事を話すわけにはいかないので事情は作り話になるが……まあ、修行の旅をしているとか適当な事を言っておけば良い。


 適当なプランを立てたシャルルは、早速事情から話そうとしたのだが――


「私たちは旅をしながら――」


「他人の事情に興味は無いわ。それに、今も私は誰とも会ってない」


 ニーナに重ねられシャルルは口を閉じる。


「……そうか」


「ええ」


 そういう事か……ニーナの返事にシャルルは理解した。


 ニーナの『誰とも会ってない』と言うのはつまり、私たちとの交流はなかった事にするという事。これはいわゆるハンターの不文律と同じで、早い話が他人の事情に巻き込まれたくないという事だ。


「私もなるべく迷惑はかけたくないと思っている。一番近い人里への道がわかれば勝手に行く。だからそこに行くのに必要な程度の食料を分けて欲しい。もちろん対価は払う」


「そうしてあげたいのはやまやまなんだけど……ここから一番近い村でも徒歩だとたぶん4~5日はかかるわ。でもあなたはだいぶ疲れてるみたいだし、道もわかりづらいから倍の一週間くらいは見ておいた方が良いかも。一人は子供とはいえ、さすがにそれだけの食料は持ってないわ」


「一週間……?」


 シャルルは一瞬、4~5日の倍って全然一週間(7日)じゃないだろ……と思う。だが次の瞬間、この世界の一週間が10日なのを思い出す。


 ちなみに曜日も10種類で、日、月、火、水、木、金、土の他に、風、海、冥という曜日があり、通常は冥と日が休みの8勤2休だ。


「10日分の食料か……」


 シャルルがつぶやくと会話が途切れ、ステラとレティのはしゃぐ声が聞こえる。その声を聞きながら、シャルルとニーナはお互いにどうするべきかを考えていた。


 シャルルは考える。


 どうやらニーナは食料をたくさんは持っていないようだ。もちろん自分の分はあるのだろうが、それを奪うとなると恩を仇で返すことになる。そんな事はしたくないし、ステラのためにも良くない。


 となると――頼み込んでわずかでも食料を分けてもらうと共に、食べられる動植物でも教わって、それで飢えを凌ぎながら進むしかないだろう。


 ニーナも考える。


 子供を連れてるしシャルル自身に害意は感じられない。たぶん悪い人ではないのだろう。


 だが――明らかに何らかの厄介ごとを抱えているように見える。


 それが持っていると言う金なのか、それとも別の問題かはわからない。気にならないわけではないが、知るべきじゃないし係わるべきでもない事だ。


 とはいえ食料もなしにここに置いていけば、恐らくステラは村まで持たない。仮に持っている食料を全部渡しても、途中で迷う可能性も高いだろうし、村までたどり着く事はできないだろう。


 つまりここに置いて行くという事は見殺しにするのと同じだ。シャルルだけならともかく、ステラも居る事を考えるとさすがにそれはできない。


 乗りかかった船って奴よね……しょうがないか。


「しゃるー!」


 戻ってきたステラはシャルルを呼ぶとその懐に飛び込む。シャルルはそれを優しく受け止め抱きしめると頭をなでた。


 シャルルはステラを見て思う。この子だけは守らなければ……と。


 意を決してシャルルは口を開く。無理は承知でこの子の分だけでも食料を、そして道と一種類でも良いので食べられる動植物を教えてもらおうと。


「ニーナ、頼む」


「わかったわ」


「まだ何も言ってないんだが……」


 困惑するシャルルにニーナは思いがけない提案をする。


「途中まで乗せてあげる。でも食料は足りないから現地調達。シャルーには手伝ってもらうわよ」


「すまない……いや、ありがとう」


 地獄で仏に会ったような提案に、一度は迷惑をかけて済まないという意味で謝罪の言葉を口にしたシャルルだったが――そういえば『こういうときは謝罪じゃなくて感謝の言葉を――』みたいなセリフが良くあるな……と思い、謝意を告げつつ深々と頭を下げた。


 シャルルが頭を下げるのを見て、ステラもまねをしてお辞儀をする。


 そんな様子を微笑みながら見ていたニーナは、まだ荷車から離れていたレティとブランを呼んだ。


「レティ、ブラン、そろそろ出発するわよ」


「ブルル」


「はーい」



 こうしてシャルルたちは、ブランの引く馬車にしばらく同乗させてもらえる事になった。

本日の更新はここまでです。お読みくださりありがとうございました。

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