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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第一章 エクストラエピソード
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最高貴族会議 その1

 リベランド最高貴族会議。


 それは国王と四人の大公爵が話し合うリベランド最高の権威。


 この会議では法律ですら捻じ曲げるどころか即時改定が可能。


 即日施行の法律を新たに制定する事もでき、ここで決まった事はここでしか覆す事ができない。


 議決権は国王に2票、大公爵に1票だが、基本的に全会一致を目指し、全会一致を『決定』それ以外を『暫定』と呼ぶ。


 ちなみに一度『決定』した事を覆すには、必ず『決定』が必要となる。





 ラーサーとシャルルの一騎打ちから約半年。


 いまだ公子邸宅襲撃事件は審議も行われていなかった。


 捜査が終わっていないからではない。


 この事件は英雄、紅蓮の竜騎士ことシャルルだけでなく、シーラン公子マリオンやアーティファクトであるエトワール、そしてマギナベルク大公ラーサーが係わっている。


 そのためリベランド最高貴族会議で審議される事が決定していたからだ。


 この会議は王都ヴィクトリウスで開催される事が法で定められている。


 なので開催するにはラーサーも王都に出向かなければならない。


 しかし、シャルルというドラゴンから都市を守れる防衛力を失ったためラーサーはマギナベルクを離れる事ができず、開催できない状況が続いていた。


 だが、ようやく国王及び各大公爵の協力により、マギナベルクにもドラゴンから都市を守れるだけの防衛力が整う。


 これにより開催できずにいたリベランド最高貴族会議の開催が決定した。



 そして今日、王都にあるトルーキン城の特別会議室で、リベランド最高貴族会議が執り行われる。





 特別会議室には長方形の机があり、上座には国王リベリアス三十一世、向って右側にはオブシマウン大公、シーラン大公、シーラン公子マリオン、左側にはフリーダン大公、そしてマギナベルク大公ことラーサーが座っていた。


 国王の後ろにはリベランド王国騎士団上級副団長にして第二王子ギルフォードが護衛として控え、各人の後ろにもそれぞれが連れて来た護衛が控える。


 議長である国王は全員の準備が整った事を確認すると、立ち上がり開会を宣言した。


「リベランド最高権威による会議、リベランド最高貴族会議を開会する」


 開会を宣言した王は一同を見渡してから着席し、議題を言おうと口を開きかけたが、ラーサーが挙手しているのを見て発言を促す。


「マギナベルク公、発言を許可する」


「ありがとうございます」


 ラーサーは立ち上がるとまず王に、そして三人の大公爵一人一人に礼をした。


「今回、私がこの会議に出席できたのは、陛下をはじめ大公爵の皆様による我が都市マギナベルクへの防衛力提供のおかげ。この場をお借りしてお礼申し上げます」


 そう言ってラーサーは再び頭を下げる。


「なに、我らこそマギナベルク公には頼るだけで配慮を忘れていたのだ。礼を言われるほどの事でもない」


 王はそう言うと各大公を見渡し、大公たちはみな軽く頷く。


「ありがたきお言葉。このご恩は今後もリベランドに貢献して行く事でお返ししていきたいと思います」


 ふてくされたような顔をしているマリオンを除き、その言葉に皆は拍手を送る。


 そしてラーサーの着席を確認すると、今度こそ王は議題を口にした。


「今回の議題は鉱山都市マギナベルクで起きた公子邸宅襲撃事件とそれに係わる問題、特に紅蓮の竜騎士についてだ。証言者としてシーラン公子マリオン卿の参加を許可した。マリオン卿、まずはそなたの主張を聞こう」


「はっ」


 マリオンは立ち上がり王に向かって礼をする。


 そして着席する大公爵の面々を見回したあと、用意していた紙を読み上げた。


「マギナベルクで起きた事件の『真実』を申し上げます。 紅蓮の竜騎士ことシャルルなる者は、無許可で遺跡に入りアーティファクト、エトワールを盗み出しました。 私はそれを奴から取り返したのですが、奴は我が邸宅を襲撃しそれを強奪して行ったのです。 調査権を持つ者の許可無くリベランド内の遺跡に入る事は『遺跡調査法』違反であり、アーティファクトを勝手に持ち出す事は『窃盗』、そして我が邸宅に押し入り強奪していった事は『強盗』です。 更に奴は私を殺そうとしました。 これは真王リベリアスの血を受け継ぐ者を殺害しようとした者は死罪とするという『真王血統維持法』に抵触する犯罪。 この事だけでもリベランドの法に照らし合わせれば死罪は免れないと考えます。 そして貴族居住区の警備を怠り我が邸宅への襲撃を許したラーサーは領主として治安維持の責任を果たしておらず、更に犯人を取り逃がしただけでなくその追跡を禁じた行為は犯罪的ですらあります。 したがって、彼にも相応の処分があってしかるべきであるという事を強く主張致します」


 そこに居た誰もがそれを黙って聞き、ほとんどの者は表情さえ変えない。


 ただ、シーラン大公だけは渋い顔でマリオンを見ていた。


 そしてしばしの沈黙のあと、王が口を開く。


「マリオン卿。卿がマギナベルク公と個人的にどういう関係なのかは知らんが――この場はリベランド最高貴族会議だ。名前ではなくマギナベルク公、もしくはマギナベルク大公と呼ぶように」


 会議場に失笑が漏れ、マリオンは渋い顔をしながら言う。


「以後そのように致します」


 そして王に頭を下げマリオンは着席した。


 それを見届けてから王は再び口を開く。


「マギナベルク公に問う。マリオン卿はこのように言っておるが、相違ないか?」


 メモを取っていたラーサーは顔を上げ王を見ると言う。


「私の認識とはだいぶ異なる点がございます。私の見解を述べたいのですがよろしいでしょうか?」


「わかった。貴公の見解を聞こう」


 ラーサーが立ち上がろうと腰を浮かせると、後ろに控えていた護衛がイスを引く。


 そして立ち上がると王に軽く頭を下げた。

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