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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第一章 エピソード3 それぞれの立場と譲れないもの
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依頼制限の緩和試験 その3

 今回アルフレッドたちに出された試験の内容は、街道から程近い森で何度も目撃されているワイルドベアーの討伐。


 場所はマギナベルクから徒歩で5時間程度、華鳥で行けば1時間ちょっとといったところ。


 おおよその縄張りはわかっているので、数時間も捜索すれば見つかると思われる。


 捜索や討伐を5時間くらいと見積もっても7時間程度で終わるので、午前中に出れば日没までには戻ってこられるだろう。



「なるほど……」


 楽しそうにパメラと話をしているステラを見ながらシャルルは考える。


 出会いの経緯もありステラとはなるべく離れないようにしていたが――あれから三ヶ月、特に何も起きていない。


 いまだ復興中であるマギナベルクは、基本的に誰でも受け入れるため非常に人の入りが激しい都市だ。


 ここに来る前はどこにいたのかわからないような者も多く、シャルルもステラもすっかりこの都市に馴染んでいる。


 もはやその事を気にする必要は無いだろう。


 今はまだ金銭的余裕があるが、いつまでもステラにつきっ切りで仕事もしないというわけには行かない。


 それに以前、都市名義でマギナベルクから出ずにいる場所を明確にして待機していて欲しいという謎の指名依頼があった。


 詳しい内容は話されなかったが、恐らくあのときはラーサーが都市外に行っていたのだろう。


 そのときは何も起きなかったが、ドラゴンが出ていればシャルルはそれを倒しに行く必要があったはず。


 もし今後そういう事があれば、やはりステラを連れてドラゴンと戦うわけにはいかないので、少なくともその間は誰かに預ける必要がある。


 そう考えるといずれはステラと少しの間離れる機会も訪れるはずで、そういうときにちゃんと留守番できるか一度は試しておくべきだろう。


 今回は夕食までには戻ってこられるので、時間も短くテストとしては良い機会。


 問題は誰にステラを預けるかだ。


「受けても良いが――」


「おお! 恩に着るぜ」


「ありがとうシャルル」


「まてまて」


 話し終わる前に礼を言われ、シャルルは慌てて片手で制しながら言う。


「受けても良いが、その間ステラを誰かに預ける必要があるだろ?」


『あ……』


 アルフレッドとローザの声がハモる。


「どうしよう?」


「うーん……」


 腕を組んで眉間にしわを寄せていたローザは、今まさにステラの相手をしているパメラに拝みながら言った。


「パメラ! 一日だけステラちゃんの事お願い!」


「え?」


 パメラが聞き返すとアルフレッドも言う。


「頼む! 今度おいしいものご馳走するから」


 二人の必死の懇願にパメラは聞く。


「協力してあげても良いけど……いつ?」


「依頼の期限はまだ先だけど、誰かに倒されたりいなくなったりすると困るから――なるべく早く、できれば明日」


「それは無理よ。仕事があるから一日中つきっ切りってわけには……」


 それを聞いてがっくりと肩を落とす二人を見ながらシャルルは考える。


 ステラを置いて行くとしたらギルドだろう。


 ここなら知り合いも多いしステラも慣れてるし、ギルドから出るなと言って置けば安心だ。


 となると預けるのはギルドに出入りしててステラも懐いている人が良い。


 そしてそんな都合の良い人物が今このテーブルにいる。


「なあ、ソフィ。明日一日だけステラの相手を頼めるか?」


「え? 私がですか?」


 ずっと蚊帳の外でボーっとしていたソフィは、急に話を振られ驚く。


「もちろん都合が悪ければ仕方ないが」


「あ、いえ。大丈夫ですけど。でも……」


 不安そうに下を向くソフィにシャルルは言う。


「大丈夫。パメラもいるし」


「あ、私は確定なんだ」


 パメラは苦笑するが――


「ギルドに置いて行くからどうせお前のところにも行くぞ。仕事中でもフォローくらいならできるだろ?」


「まあ、それくらいなら……」


「というわけで頼めるか?」


「パメラさんが一緒なら……わかりました」


 話がまとまったのを確認すると、アルフレッドとローザは立ち上がりソフィとパメラに頭を下げ、シャルルは座ったまま軽く頭を下げる。


「ありがとうございます」


「ありがとう」


「ステラの事をよろしく頼む」


「は、はい」


「ええ、わかったわ」


 その様子を不思議そうに見ていたステラは言う。


「あしたなにかあるの?」


「ああ、明日私はアルたちと害獣討伐に行ってくるから、お前はここで留守番な」


 きょとんとした顔でステラは聞き返す。


「るすばんってなーに?」


「えっと、ステラちゃんは明日、ここで私やパメラさんと一緒にシャルルさんたちの帰りを待ちましょうって事」


 それを聞いてステラは不機嫌そうな顔をして言った。


「えー、やだー。すてらもいくー。しゃるーといっしょがいー」


「良い子で待ってたら、夕飯は好きなもの食べさせてやるぞ。もちろんデザートも」


 シャルルがそう言ってもステラは泣きそうな顔で見上げながら言う。


「しゃるー……おいてっちゃや……」


 シャルルはそっとステラをなでる。


「今日は一緒に寝てやるから、明日ちょっとだけ留守番しててくれないか?」


 するとステラはシャルルに抱きつきながら言う。


「……あしたは?」


「良い子でお留守番できたら、明日も一緒に寝ような」


「うん……じゃあおるすばんがんばる」


 こうして話はまとまり、シャルルは明日、アルフレッドたちの試験に帯同する事になった。

いつもお読みくださっている方、特にブックマークしてくださっている方と評価ポイントを入れてくださっている方、ありがとうございます。


初めての方、ここまでお読みくださりありがとうございました。


ブックマークや評価、そして感想などをいただけますと非常にやる気が向上しますので、よろしければお願いします。

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