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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第一章 エピソード3 それぞれの立場と譲れないもの
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依頼制限の緩和試験 その1

 マリオン邸、マリオンの執務室。


 左肘を机につき手の甲にあごを乗せながら、マリオンは目の前に立つルーカスに言う。


「つまりその娘がエトワールであるという事か?」


「確証は得られていませんが、その可能性は濃厚であると考えます」



 その娘――それはシャルルが連れている幼女、ステラの事である。


 マリオンがマギナベルクに来て約三ヶ月。


 この間、遺跡からはアーティファクトや、アーティファクトと思われるが使い道が不明なものなどいくつかのものが発見されてはいる。


 しかし、マリオンが欲する生体兵器『エトワール』を始め、今のところ実績となりそうなものは発見されてはいなかった。


 いまだ開く事ができない扉も多数あり、これから発見される可能性もないわけではない。


 だが閉じられた扉を開くのは非常に困難で、かなりの時間を要すると考えられる。


 それこそ扉を開けるだけで年単位という場合や、現代の技術ではあける事が不可能という場合もあるため、これに期待するのは無駄だろう。


 しかしエトワールは発見されていないが、関連性の高いと思われる部屋は発見されている。


 それは部屋自体がアーティファクトであると考えられるような部屋で、そこには『エトワール・トロワジエム』と書かれた人の子供くらいの大きさの何かが安置されていたと思われる入れ物のようなものがあった。


 だが肝心のエトワール自体は見つからず、恐らくそこに安置されていたのであろうが今はもう無いという状態。


 その事にマリオンは落胆するが、とある噂を聞いていたルーカスはひそかに疑念を抱き独自に調査を進めていた。


 その噂とは紅蓮の竜騎士が幼い娘を連れているという噂である。


 安置されていたと思われる場所が空であった事を知ったルーカスは盗み出された可能性も考えていた。


 もしエトワールが盗み出されたのだとしたら盗んだのは誰か?


 盗むにはまず遺跡の場所を知っている必要があり、これに該当する人物はマリオンが派遣した調査隊とゴーレム討伐の依頼を受けたハンター以外にはいない。


 だが、調査隊は単独で行動していないため疑惑から外れ、最初に請け負ったヨシュアたちのパーティもゴーレムの排除ができずに依頼を降りたくらいなので遺跡に近づくとは考えにくい。


 彼らはハンターレベルが高くハンターとしての地位もあるため、遺跡の場所を他人にもらすという事も無いだろう。


 となると、残るは紅蓮の竜騎士ことレベル2ハンターのシャルルだ。


 調査隊の報告ではゴーレムが排除された事を確認したときには遺跡の入り口の扉も確認できたという事だったので、シャルルも遺跡の扉を見ている可能性が高い。


 そしてその場合、シャルルは調査隊よりも先に遺跡に入る事が可能だったという事になる。


 噂の娘はシャルルが盗み出したエトワールかもしれない。


 そう疑念を抱いたルーカスは、調べて行くうちに疑念を確信に近づけて行った。


 調査を始めると、まずわかったのはシャルルがその娘を連れるようになったのはゴーレム討伐よりもあとで、それ以前にはいなかったという事。


 更に調査を進めると、討伐当日シャルルは西門から出たにもかかわらず西門には戻っていなかった事が判明。


 同日の夜、南門から幼子を連れたハンターが通用門を通った事がわかった。


 ギルド職員の証言からシャルルが終了報告をしたときに幼子を連れていた事が確認されているので、通用門を通ったハンターはこの男で間違いないだろう。


 つまり一人で西門から出たシャルルが、ゴーレムを倒し遺跡に入れる状態になったあと、近い西門ではなく南門から、行きにはいなかった幼子を連れて戻ったという事になる。


 そして遺跡にはちょうど幼子くらいの大きさの生体兵器『エトワール』が安置されていたと思われる空になった場所が発見されているのだ。


 これはもう偶然とは言えないだろう。


 だが――証拠は無い。


 シャルルはその子供を周囲には家族だと言っていて、周りの人たちはシャルルが家族を都市に呼び寄せたのだと考えている。


 それを無理やりあてはめれば、都市を出る仕事をしたついでに家族を迎えに行き都市に戻っただけと考えられなくもなく、そう言われてしまえばそれ以上の追求は難しいだろう。


 家族であるというのが嘘であると判明すればそこから崩せる可能性もあるが、いわゆるハンターの不文律のせいで突っ込んだ事を聞く者がおらず情報が足りない。


 もはやシャルルか娘を尋問するくらいしか方法は無いのだが――



「ならばその娘をここに連れてきて尋問すれば良いではないか。なぜしない?」


「例の娘は四六時中、紅蓮の竜騎士と共にいて単独で連行するのが難しい状況です。奴と共に連行して尋問しても口を閉ざす可能性が高く、そもそもこちらが疑っている事を知ればその娘を連れて逃走する事も考えられます」


「ふむ。都市外に逃げられては捕まえるのは難しい……か」


「はい」


 ルーカスは頷き、マリオンは背中を座っていたイスの背もたれに預けるとニヤリと笑って言う。


「だが、策はあるのだろう?」


「もちろんでございます」


 そう言うとルーカスもニヤリと笑った。

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