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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エクストラエピソード
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伯爵令嬢の友達 前編 その3

 滞在三日目からシャルルの都市視察が始まる。そしてシャルルが外出している間、ステラはナスターシャと共にカロリーネが面倒を見る事になった。


 ナスターシャの午前中はお勉強の時間。今日からはステラも一緒にカロリーネから学ぶ。


「では、次は掛け算です。この問題を上から順に解いていってください」


 紙に書かれた乗算の問題を見て、ナスターシャは指を折りつつ考える。


「えっと、3×4は3が4つだから……」


「お嬢様。指を使ってはいけません」


「だってー」


 そんなやり取りをしている二人をよそに、ステラは手を挙げ言う。


「できたっ!」


「どれどれ――全部できてる……」


 カロリーネの呟きを聞き、ナスターシャもステラの紙を見た。


「ほんとだ! すごい! さすが魔女ね」


 その発言にシルフィは胸を張り、ステラは照れ笑い。


「ごしゅじんさまの家族だもん。とうぜんよ」


「えへへ……」


 そんなステラを見てカロリーネは思う。


 幼少から――今も幼少だけど、もっと幼い頃から高等教育を受けてきた子なのかしら?


 その後も読み書きや歴史の勉強をして、知識に大きな偏り(歴史はさっぱりで、漢字はだいたい読めるがまったく書けないなど)はあるものの、見た目に反してステラは意外と頭が良い事をカロリーネは知る。


 お嬢様よりも年下に見えるけど――もしかしたら年上なのかも? そう思いカロリーネはステラに聞く。


「ステラちゃんはおいくつですか?」


 するとステラはカロリーネ、ナスターシャ、シルフィ、そして自分を指差してから首をかしげる。


「よんこ?」


 ……なんの数よ? と思いつつ、カロリーネはもう一度聞く。


「えっと、ステラちゃんは何歳ですか?」


 すると――


「じゅっさい!」


 嬉しそうに両手のひらを開いて言う。


「えー! ステラって10さいなの!?」


 驚きの声を上げるナスターシャ。だが――


「わかんない」


 ステラは聞き返されるとそう言って笑った。





 滞在四日目の視察は貴族居住区の商業施設。今回は視察といっても客として施設を回るだけなので、シャルルとルドルフだけでなくその家族、ステラとシルフィ、令嬢ナスターシャと夫人ユリアーネも同行する事になった。


 午前中に観劇し、そのあと劇場に併設されているレストランで昼食。そのあとは店などを回ってショッピングをする予定だ。


 お出かけという事でカロリーネにおめかしをしてもらっていたナスターシャのもとに、ユリアーネが迎えに来る。


「どうです? 準備はできましたか?」


「ええ、ばっちりよ」


 ナスターシャが笑顔で頷くと、カロリーネとユリアーネも微笑む。


「じゃあ、リーナ。行ってくるわね」


「はい。奥様、お嬢様、いってらっしゃいませ」


 そしてナスターシャたちは、屋敷の玄関で待っていたルドルフやステラたちと合流した。


「たーしゃのふくかわいい」


「ふふ。ありがとう。ステラの服もかわいいわよ。いつもと同じだけど」


 そんな感じではしゃぎながら子供たちは馬車に乗る。


「午前中は観劇でしたね」


「ああ。そのあとは食事で、それから商店などを回るつもりだ」


 シャルルとルドルフは今日のスケジュールを確認し、ユリアーネはそんな二人の邪魔をしないよう静かにしていた。


 だが――


 お出かけという事で興奮していたナスターシャとステラは、これから見る劇の話で盛り上がる。


「今日は星の魔女の劇を見るのよ」


「おおー! すてら、げきみるのはじめて! たのしみ!」


「私は初めてじゃないけど、でもたのしみ!」


「うん!」


 そんな感じではしゃぎすぎ、ナスターシャとステラはユリアーネとシャルルに少し叱られた。




 劇場に着くとオーナーに出迎えられ、ナスターシャたちは一般客の席ではなく貴賓席に案内される。


 それに対しナスターシャやルドルフ、ユリアーネは当然の事なので何も思わず、シャルルはさすがに領主ともなると貴族居住区の劇場であっても一般席とはならないんだなと思う。


 そしてステラとシルフィは、やはり何も思わない。


 いつか一般席で観劇する事があれば違いに気づくのだろうが、今日が初めてなのでこういうものなのだと思うのは当然だろう。


 演目は馬車でナスターシャが話していた通り星の魔女の劇。題名は『星の魔女とお姫様』だ。


 内容は、旅をしていた星の魔女がとある王国に立ち寄り、そこで城を抜け出したお姫様と友達になるという話。ナスターシャが大好きな話で、何度も読み返している話だ。


 当然内容は全部知っているのだが、何度も読み返すくらい好きな話なので知っているからといってつまらないという事はない。



 何度も城を抜け出し星の魔女に会いに行くお姫様。星の魔女はお姫様に、彼女の知らない外の世界の話をたくさんする。


 そんな感じの日々が続いていたある日の事。国がドラゴンに襲われる。


 星の魔女を心配したお姫様は一緒にお城に隠れましょうと誘う。


 だが星の魔女は――


 大丈夫、私がやっつけてあげる。そう言ってドラゴンを退治に行く。


 星の魔女がドラゴンを倒すと、王様は喜び彼女を王宮に招いた。


 そして、そこでお姫様は星の魔女にずっとこの国にいて欲しいと言う。


 だが、星の魔女は言った。


 今までに出会った人、これから出会う人、みんなが私の事を待ってる。だから私は行かなくちゃ。


 でも、いつかきっと、またこの国にも来る。だから、そのときまで――ううん、そのあともずっと、ずーっと私と友達でいてね。


 お姫様は頷き星の魔女を抱きしめ……そして星の魔女は旅立って行く。



 劇が終わり、役者の紹介などが終わると舞台の幕が閉じる。


 するとオーナーがやってきてルドルフに言った。


「お楽しみいただけましたでしょうか? 伯爵閣下」


「ああ。役者も劇場もなかなかのものだな」


「そう言っていただけると光栄です」


 そんな大人たちの定型文のような挨拶をよそに、興奮冷めやらぬナスターシャはステラに言う。


「ねえ、ステラ。今日のお話ってステラと私みたいだったわね」


 どのへんが? と聞かれれば、高貴な女性と魔女が友人関係にあるという辺りくらいしか『みたい』ではないのだが、ナスターシャにとってはそこが一番重要であるためそう感じたのだろう。


 それに対しステラは特に突っ込みを入れるような事もなく――


「じゃー、どらごんがでたら、すてらがやっつけてあげる」


 と言って笑った。


 そのあとはレストランで食事をし、食事が終わると商店などを見て回る。


 そして、そこでナスターシャは劇で女優がかぶっていたのと同じ、星の魔女の帽子を見つけ思った。


 この帽子をかぶればステラの格好は完全に星の魔女ね。

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