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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エクストラエピソード
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辺境の町とユニコーン その2

 駐車場の奥、警備員が指していた辺りに近づいたネリーは、思ってもいない人物(?)を見つけて駆け寄る。


「え!? シルフィ?」


 もちろんシルフィではないのだが、彼女が思わずそう言ってしまうのも無理はない。なぜならネリーが見た事のある風のエレメンタルは、プリムを除けばシルフィだけなのだから。


 一方、ユニコーンのブランと共に駐車場で留守番していた風のエレメンタル、レティは、聞き覚えのある呼び方に反射的に反応した。


「んもう。わたしはシルフィじゃないって――あれ?」


 だがそこにいたのは知らない女の子。ネリーとレティは互いに首をかしげ、そして互いに思った相手ではない事に気づく。


「あ、ごめんなさい」


「べつにいいけど――」


 すぐさま謝罪を口にするネリーにレティは特に気にしてないといったふうにそう言うと、続けて疑問を口にする。


「もしかして風のエレメンタルをシルフィって呼ぶのはやってる?」


 レティの質問に対しネリーは首を振りつつ言う。


「ううん。まちがえただけ。ひとちがい」


 そこに少し遅れてプリムとハンネがやってくる。


「んもう。気配からして師匠じゃないでしょ。ネリーはおっちょこちょいなんだから」


 プリムはそう言うが、当然ネリーにエレメンタルを気配で見分ける能力は無い。


「あらら。シルフィちゃんがいるならステラちゃんもいるかと思ったんだけど……残念ね」


 ハンネの言葉に知り合いの名前が出てきたのを聞きレティは尋ねる。


「あなたたち、ステラを知ってるの?」


「うん。ステラはともだちよ」


 それを聞いて、だからこの子も風のエレメンタルをシルフィと呼ぶのか……とレティは納得しかけるが――


 あれ? シルフィはぬいぐるみのなまえだって言ってなかった? でもこの子たちの言いかただと、まるでシルフィがぬいぐるみじゃなくて風のエレメンタルみたいなかんじ。


「シルフィって、ステラが持ってたっていうぬいぐるみのなまえよね?」


 確認のためレティは尋ねる。すると女の子は意外な返事をし、一緒にいた風のエレメンタルも言う。


「え? 風のエレメンタルのなまえだけど……」


「そうそう。シルフィ師匠は風のエレメンタル。とってもつよいんだから」


 あれ? もしかしてわたしの言ってるステラとこの子たちが言ってるステラって……別人?


 世の中には同じ名前の人だっていなくはない。だからそうかもしれないと思い、レティはもう一度確認する事にした。


「えっと……ステラってまぞくで長い黒髪で、黒っぽいまじょみたいなワンピースを着てる子?」


 すると三人は、それぞれそれを肯定する。


「ええ、そうよ」


「うん、ネリーと同じくらいのとしの子」


「似た格好のお父さん? といつも一緒にいた子ね」


 確かにステラはこの女の子と同じくらいの年齢に見えた。


 メイドが言う似た格好のお父さんというのはシャルーの事じゃないだろうか?


 ここまで合致しているのだからさすがに別人だとは思えない。シルフィについては謎だけど、たぶんこの子は自分の知ってるステラと友達なのだろうとレティは思った。


 そして、なんとなく三人の話から今はここにいない雰囲気だが、気になったので一応聞く。


「ステラたちはこの町に住んでるの?」


 すると三人はその質問に首を振る。


「ううん。秋ごろにきてしばらくいたけど、すぐにベルドガルトに行っちゃったわ」


「師匠たちは旅してるって言ってた」


「しばらくこの町で街灯を灯す仕事をしてましたけど、後任の方が来たら旅立たれましたよ」


「へー、そうなんだ」


「ブルル」


 ステラの名前を聞いたからなのか、荷車の陰からブランが顔をのぞかせた。


 それを見てネリーは当初の目的を思い出す。


「あ! つのの……ユニコーン」


「そういえばユニコーンを見に来たんでしたね」


「あら、そうなの? じゃあブランもこっち来て」


 レティの言葉に反応し、ブランがゆっくり近づいてくる。


「ブシシ」


 ブランの発言(?)に頷くと、レティは三人に向かって言う。


「ブランがステラは元気か? だって」


「え? ええ、ステラは元気だったわ。ところでブランってなに?」


 返事をしつつネリーは首をかしげる。


 するとレティはブランの頭に乗っかって言った。


「ブランはこの子のなまえよ」


「へー、あっ」


 ネリーは感心しつつ、自己紹介がまだだった事に気づく。


「わたしはネリー、よろしくね」


 ネリーの自己紹介を見てプリムとハンネも続く。


「わたしはプリム」


「私は町長さんちのメイドでハンネです」


「わたしはレティ、でこの子はさっきも言ったとおりブラン」


「ブルル」


 三人の自己紹介を受けレティも名乗りブランもうなる。


 そしてプリムはブランのうなり声に頷くと言った。


「うん、うん。ブランがよろしくだって」


「レティってブランの言葉がわかるの?」


 ネリーの質問にレティは頷く。


「ええ。言葉っていうか……気持ち? そういうのがなんとなくわかるわ」


「へー」


 感心したように頷くと、ネリーはプリムを見て聞く。


「プリムもブランが何言ってるかわかる?」


「わたしにはただ『ブルル』って言ってるようにしか聞こえないんだけど……」


「これが相性っていうものなのかもしれませんねぇ」


 その後、ネリーたちはレティたちともう少しだけ話しをし、また明日も来ると約束してもうすぐおやつの時間だからと帰っていった。




 夕刻。仕事を終え駐車場に戻ってきたニーナは、レティにネリーたちの事や彼女たちが話していたステラたちの事を聞く。


 そしてあのあと、どうやらシャルルたちが無事に旅を続けているであろう事を知り安堵した。


「へー。じゃあ、あのあとシャルーたちは無事ゾフに着いたって事ね」


「みたいね」


「でも、風のエレメンタルかぁ」


「そこが謎なのよ」


 レティは腕を組み首をかしげる。


 ネリーたちが言うには、シャルーたちは風のエレメンタルを連れていたらしい。ニーナたちが会ったときにはいなかったから、旅に加わったのはそのあとだろう。


 道中で出会ったのか、それとも元々しってる子と合流したのか。その子の名前はシャルーがぬいぐるみの名前だと言っていた『シルフィ』という名前らしい。


 まあ、そもそもは見知らぬ人だったわけで、なんでもかんでも包み隠さず話してくれていたわけでもないだろう。


 ただ――それって隠す必要ある?


 そこがどうにも引っかかるが……まあたいした事でもない。


 確認するには本人たちに聞くしか方法がないのでニーナは気にしない事にした。


「その子たち、明日も来るって言ってたのよね?」


「ええ、おなじくらいの時間にくるって言ってたわ」


 ニーナの質問にレティは答え、それを受けニーナはあごに指を当て考える。


 レティに聞いてあのあとシャルーたちがこの町まで来たらしい事はなんとなくわかった。


 しかし、彼女を通してだといまいち良くわからない部分もある。


 もちろん聞いたからといって何が変わるわけでもないんだけど……でも、やっぱり気にはなるなぁ。


 そう思ったニーナは、明日は自分もここで待ってステラの友達だと言う女の子に会ってみる事にした。

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