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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード11 環状街道の行商人
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適当な誕生日 その4

 ステラは小食というわけでもないが、やはり小さいので大人のようにはいっぱい食べられない。


 このままだとケーキが食べられなくなりそうだな……とシャルルは思う。


「ステラ、あとでケーキもあるからあまり食べ過ぎるなよ」


「おおー! でもだいじょーぶ」


「そうなのか?」


「うん。だってあまいものはべつばらだから」


「へー、良く知ってるね」


「ふふん」


 ケイトにほめられステラは『えっへん』といった感じで鼻息荒く胸を張った。


 そんな彼女を見てシャルルは思う。


 そういえば……甘い物は別腹って実際に、好物を目にすると満腹でも胃が少し広がるかなんかして許容量が増えると何かで見た事がある気がする。


 とはいえ限界はあるだろうし、やはり満腹まで食べさせないようにした方が良いだろう。


 だが、食べ過ぎるなと言ったところでうまく行くとは思えない。そこでシャルルは一計を案じる事にした。


「なあ、ステラ。私にも唐揚げを分けてくれないか?」


「いーよー」


 そう言うと、ステラはグーで持ったフォークに刺した唐揚げをシャルルに向かって差し出す。


 シャルルはそれを頬張るとまた口をあける。


「あーん」


「はい、あーん」


「もっとくれ。あーん」


「えへへ。はい、あーん」


 普段はステラが残した人参を食べるときくらいしかしないこの行為。それを何度もしてくれるのが嬉しくて、ステラは唐揚げを自分では食べずシャルルにどんどん食べさせる。


 そんな二人の姿に微笑みつつケイトは言った。


「シャルルさんとステラちゃんはとっても仲良しなのね」


「うんっ」


 その後もシャルルはあの手この手でステラが食べ過ぎないよう注意し、つつがなく夕食は終了する。


 そして空いた皿を片付けに来た店員に、セシルはケーキを持ってくるよう頼んだ。




 運ばれてきたのは苺の乗ったやや小さめなホールケーキ。


 小さめと言っても4人で食べる事を考えれば、四分割しても普通のショートケーキの1.5倍くらいはあるので十分だろう。


 ちなみにステラの年齢がわからないのでロウソクは一本しか立っていない。


 その一本は、シャルルとステラが出会って1年という意味の一本だ。


 ケーキがテーブルの中央に置かれると、ステラは嬉しそうに体を左右に揺らしながら歌いだす。


「けーき♪ けーき♪ あまくてふわふわ♪ くりーむもふわふわ♪ のってるいちごは、あかくてつやつや♪ かがやいてきらきら♪」


 みんな歌が終わるまで静かにしていたが、ステラ自作の歌は短くすぐに終わる。


「じゃあステラ。ロウソクの火を吹き消してくれ」


「はーい」


 元気良く返事すると、ステラは座っていた子供用のイスに膝立ちするような感じでテーブルに身を乗り出した。


 そして大きく息を吸い込むと――


「ふー!」


 一息でろうそくを吹き消す。


 それを見届けたみんなは拍手と共に再び祝いの言葉をかける。


「お誕生日おめでとう」


「おめでとう、ステラちゃん」


「ステラ、おめでとう」


「おめでとう」


 すると今度は――


「ありがとー!」


 そう言ってステラは笑った。




 ケーキも食べ終わりパーティもたけなわといった頃。このメンバーの中で唯一プレゼントを買いに行く時間があったセシルは、包装紙に包まれリボンのついた細い棒状のものをステラに渡す。


「俺からの誕生日プレゼントだ」


「わぁ、ありがとー」


「すまんな」


 シャルルが軽く頭を下げるとセシルは笑う。


「なあに、良いって事よ」


 そんな大人の社交辞令をよそに、ステラはローブの袖を引っ張りながらシャルルに聞く。


「ねーねー、あけていーい?」


 すると、シャルルが答える前にセシルは言った。


「はい、どうぞ」


 ステラはセシルを見てからシャルルを見る。そしてシャルルが笑顔で頷くのを見ると包装紙を破った。


 中から出てきたのはタクト型の黒い杖。長さは30cm程度と短いが、持ち手の部分には赤い宝石のようなものがついている。


「小さいけど天然魔宝石つきだぞ」


「おおー!」


 魔宝石がなんなのかわかっているかは微妙だが、ステラは声を上げ喜んだ。



 魔宝石、それは魔法の効果を高める宝石。これを通して魔法(魔術や秘術)を使うと発現される効果が高まる。


 魔宝石は大別すると天然魔宝石と人工魔宝石の二種類あり、天然魔宝石はその名の通り天然物、人工魔宝石は小さすぎて使い物にならない魔宝石を精製して使えるようにしたものだ。


 天然魔宝石は装飾品や杖などの魔術師や秘術師の装備品や高級な魔法道具に使用され、人工魔宝石は安物の装備品や普及型の魔法道具に使用される事が多い。



「プレゼントかぁ……」


 パーティの事を知らされていなかったケイトは当然用意してない。


「気にしなくて良いよ。誕生日をお祝いしてくれただけで十分だ」


「うん」


 シャルルの言葉にステラも頷く。だが、やはり何かあげたいとケイトは思う。


 確かに今日がはっきりとした誕生日というわけでもないし、プレゼントは後日でも良いと言えば良い。


 だが可能なら今日渡すのがベストだろう。


 何かあげられるもので、ステラちゃんがよろこびそうなものはないかな……腕を組み考えるケイト。その目に自分の服につけた輝く星のバッジが映った。

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