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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード11 環状街道の行商人
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家族になるという事 その4

 日も暮れて行き、辺りは徐々に闇に包まれて行く。


「御者台と荷車にランプがあるから魔術で灯してもらえないか?」


「わかった」


 セシルの指示に従い、シャルルは御者台に置いてあったランプと荷車に吊るされているランプにライトの魔術を付与する。


 そんな作業をしていると、ケイトと共に馬の世話をしていたステラがシルフィと共に戻ってきた。


「ただいまもどりました」


「ただいまー。ごはんまでここでまっててって」


「おかえり。そうか、わかった」


 そう答えつつシャルルがその場であぐらをかくと、ステラはその上に座り本を読み始める。


 そんな状態でしばらくすると、シャルルは少しもよおしてきた。


 集中しているところ邪魔して悪いな……とは思うが、放置はできないためシャルルはステラをどかしつつ言う。


「ちょっと用を足してくる」


「はーい」


「いってらっしゃーい」


 そしてシャルルが荷車から降り少しすると、閉じていた幌がめくられる。


 シャルルが戻ってきたのかと思いステラたちはそっちを見るが、そこにいたのはケイトだった。


 彼女は荷車の中を覗き込みながら言う。


「あれ? ステラちゃんのお父さんは?」


「おとーさん?」


 首をかしげるすてらにケイトも首をかしげ聞く。


「あれ? シャルルさんってステラちゃんのお父さんよね?」


 するとステラは首を振って言った。


「ちがうよー」


「え? 家族だって言ってなかった?」


「そうだよー」


「あれ? もしかしてお兄さんなの?」


 ケイトがそう聞くと、再び首を振ってステラは言う。


「んとねー。しゃるーはねー、すてらのだんなさんなの。すてらとしゃるーはふーふなんだよ」


「えー! ステラちゃんはシャルルさんと結婚してるの!?」


「うんっ」


 驚くケイトにステラは嬉しそうに頷いたあと、高説をたれるように語りだす。


「んとねー。かぞくじゃなかったおとこのひととー、おんなのひとがー、かぞくになるのをけっこんってゆーんだよ」


「う、うん……知ってる」


「しゃるーはねー、すてらに『かぞくになろう』ってゆったの。んでね、すてらが『うん』ってゆったから、すてらとしゃるーはけっこんしてふーふになったんだよ」


「そ、そうなんだ……」


 え? それって何か違うような……とケイトは思う。だが、間違ってないようにも思え混乱する。


 家族になるって……なんだろう?


 一方、どうだとばかりに鼻息荒く胸を張っていたステラだったが――何かを思い出したように慌てて両手で口を押さえるとおろおろし始める。


「どうしたの?」


 ケイトの問いにステラは少し怯えたような感じで節目がちに言う。


「これってひとにゆっちゃだめだった……おこる?」


「え? シャルルさんに怒られちゃうの?」


「え? だいじょうぶじゃない? この前ステラがそれ言ったとき、ごしゅじんさまはおこらなかったよ?」


 シルフィの発言にステラは首を振りながら――


「んと、しゃるーはおこらないけど……けいとはおこる?」


「え? 私? 別に怒らないけど……」


「はー、よかった」


 意味がわからずケイトは困惑するが、彼女の発言を聞いてステラは胸をなでおろす。


 そして、人差し指を口の前で立てるとケイトに言う。


「でも、ひとにはなすとおこられるかもしれないってしゃるーがゆってたから、ないしょね」


「え? あ、うん」


 やはり意味がわからずケイトは首をかしげるが、ステラが自分とシャルルは夫婦だと言った事を秘密にして欲しいという事だけはなんとなく理解し頷く。


「なんだか楽しそうだな」


 ケイトが声に振り向くと、そこにはシャルルがいた。


「あはは……ちょっとお話ししてました」


「どんな話を?」


 シャルルがそう尋ねると、ステラはそっぽを向きながら、ふしゅー、ふしゅーと鳴らない口笛を吹き始める。


 それを見てケイトはシャルルにも言わない方が良いのだろうと思う。


「えっと……女の子同士の秘密の話です」


 ケイトがそう言うと、ステラは何度も首を縦に振った。


「……そうか」


 ステラの態度から何かしら怒られるような事を話していたのだろうとシャルルは推察する。


 とはいえ聞いたところで正直に答えるとも思えない。


 まあ、ステラの事だから聞けばうっかり言うかもしれないが――あとでシルフィに聞いた方が確実だろうな。


 シャルルがそんな事を考えていると、当初の目的を思い出したケイトが言う。


「あ、そうそう、シャルルさん。セシルが水を出して欲しいって言ってました」


「そうか。では、すぐ行こう」


「すてらも!」


「じゃあ、わたしも」


 こうしてみんなでセシルのもとに向かう事になった。

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